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第278話「信長の機動戦」
尾張国、小牧山城。
織田信長、二十六歳は、馬上で長い槍を構えていた。
楽市によって膨れ上がった富は、今や濃尾平野を疾走する膨大な機動戦力へと姿を変えていた。
破壊と再編を中心とする織田の構造は、立ち止まれば内の圧力が崩壊する宿命を背負っている。
そのためには、常に新たな戦場を必要としていた。
「駿河の国境、武田の動きが激しくなっております」
丹羽長秀、二十五歳が、馬を並べて報告した。
信長は不敵に笑った。
「信玄の老いぼれも、内の渇きに耐えかねて動き出したか。統治など維持するものではない、奪うものだ」
信長の瞳には、既存の構造すべてを焼き尽くすような烈火が宿っていた。
圧力の段階化など必要ない、一気に相手の構造を崩壊へ持ち込む。
それが信長の生き方であり、国家運用そのものであった。
「北の十四歳は、まだ木札を削っているか」
信長は鞭を鳴らした。
破壊の嵐がどこへ向かうか、その変数値は世界の状態を激しく揺さぶっていた。
信長が放つ強烈な軍事圧力は、均衡前夜の闇を裂き、次の混沌を引き寄せようとしていた。




