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第270話「島津の刃」
薩摩国、鹿児島城。
中央の混沌から隔絶された九州の南端で、島津は牙を研ぎ続けていた。
島津貴久、四十六歳は、庭で熱心に刀を振るう息子たちの姿をじっと見つめていた。
中央の織田の急速な火力増強、そして北の上杉による精緻な国家運用の報告は、この地にも届いている。
「戦国は、天下の奪い合いではない」
貴久の言葉に、長男の島津義久、二十六歳が動きを止めた。
「では、何のために我らは刃を研ぐのですか」
「統治を維持する構造記録、だそうだ。越後の十四歳はそう考えている」
島津は終盤圧縮装置である。
局地戦における圧倒的な戦闘力は、どのような精緻な構造をも一撃で粉砕するトリガーとしての強度を秘めていた。
しかし、彼らはまだその力を外へは解き放たない。
「我らの出番は、奴らが構造を完成させたと過信した瞬間よ」
貴久は冷たく言い放った。
義久は黙って頷き、再び刀を振り下ろした。
外周の変数は、まだ静かに眠っている。
しかし、その圧倒的な軍事圧力の存在自体が、将来の全面戦争における最大の不確定要素として、世界の状態を均衡前夜の緊迫感の中に留め置いていた。




