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第263話「外周の沈黙」
奥州、米沢城。
伊達輝宗、十六歳は、父の跡を継いだばかりの青い目で、南の地図を見つめていた。
伊達は外周変数である。
中央の構造とは独立して動き、時に全体に影響を与える存在。
「内紛は収まった。これより、南下の手を打つか」
宿老が問いかけると、輝宗は首を振った。
「焦るな。越後の若者が、こちらの動きを数字で追っている」
伊達の動き一つで、上杉は即座に軍事圧力の配置を変えてくる。
その情報の速さに、輝宗は脅威を感じていた。
戦を仕掛ければ、こちらの消耗が激しくなるだけである。
「今は維持だ」
輝宗は言った。
「内の安定を優先せよ。外周が勝手に崩れては、中央の奴らの思う壺よ」
敵を殺しすぎない。
その思想は、遠く奥州の地にも、目に見えない圧力として波及していた。
伊達の南下停止は、越後にとっての東側の安全を保証していた。
兼継はその報告を木札に刻み、箱に収める。
世界は説明されない。
ただ、各主体が己の維持のために動いた結果が、均衡という形で残るだけであった。




