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第250話「監査の眼」
第250話に到達し、越後の統治構造は一つの「監査単位」を迎えていた。
兼継の元には、この50話分の記録がすべて集約されていた。
数字の齟齬はないか。
信頼の連鎖に淀みはないか。
冷徹な監査の眼が、木札のすべてを走査していく。
「一箇所の歪みが、全体の連鎖を壊す」
兼継は呟いた。
かつて叱責された橋の管理担当者も、いまや完璧な数字を上げてくる。
罰による恐怖ではなく、役割の精度を高めることが、自らの存在意義であると理解している。
国家構造の強度は、これらの総合で決まる。
軍事圧力、経済循環、情報支配、民意安定、統治持続力。
すべてが基準値を満たしていた。
「織田が動いているな」
兼継は尾張の報告書に目をやった。
あちらの急速な圧力生成に対し、こちらは維持の強度で対抗する。
どちらが正しいのではない。
これが、現在の世界状態、すなわち「均衡前夜」の現実であった。
監査は完了した。
構造に破綻なし。
兼継は静かに木札を箱に収め、次の構造確認へと向かうための息を、深く吸い込んだ。




