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愛を捨てし軍神の娘は、魔王に堕つ ―十一歳、上杉兼継 覚醒―  作者: 竜太郎


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249/288

第249話「減速の美学」

国境の砦。

上杉の守備隊長、三十五歳は、武田方の斥候と睨み合っていた。


しかし、戦は始まらない。

戦の即決は禁止されていた。

圧力の段階化、小競り合いの維持。

それらが、勢力の崩壊を遅延させるための減速ルールであった。


「手を出してはならん。ただ、そこにいろ」

隊長は部下たちに命じた。


相手を全滅させる必要はない。

均衡を維持し、こちらの防備が崩れないことを見せつけるだけで十分であった。

敵武将であっても、安易に殺害はしない。

生かしておくことで、相手の内の圧力をコントロールする。


武田の斥候もまた、深追いをしてこなかった。

お互いに、そこにある構造体を確認し合うかのような、静かな時間が流れる。


国境の緊張は、破壊のためではなく、現状維持のための調停現象として扱われていた。

生活描写の維持が優先され、砦の裏手では民が普通に畑を耕している。


戦国は完成しない。

しかし、この減速ルールによって、世界は崩壊を免れていた。

隊長は静かに刀の柄から手を離し、山に沈む夕日を見つめた。

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