246/288
第246話「島津の胎動」
薩摩国、鹿児島城。
九州の南端では、中央の均衡とは無関係に、独自の圧縮構造が形成されつつあった。
島津貴久、四十六歳は、息子たちを前にして、一通の書状を読み上げていた。
中央の織田の動き、そして北の越後の構造。
遠い地の出来事でありながら、その圧力の変化は、確実にこの地にも伝わっていた。
「戦国は、天下を取る物語ではないそうだ」
貴久が呟くと、長男の島津義久、二十六歳が鋭い目を向けた。
「では、何でございますか」
「統治を維持する構造記録、だという。越後の若者がそう動いている」
島津は終盤圧縮装置である。
一気に均衡を崩すトリガーとしての強度を、内に秘めていた。
局地戦における圧倒的な戦闘力は、他国を震撼させるに十分であったが、彼らはまだ動かない。
「我らは、最後に動く」
貴久は書状を破り捨てた。
「中央がどれほど精緻な構造を作ろうとも、一撃でそれを圧縮する力が、この薩摩にはある」
義久は黙って頷いた。
外周の変数は、まだ牙を剥く段階ではない。
しかし、その存在自体が、将来の全面戦争における最大級の不確定要素として、世界の状態を緊迫させていた。




