外伝 ミオ視点 50
ミオ視点です。
「その……ミオさんが闇堕ちした時は、どうやって治ったんですか?」
「荒療治ですね!」
「荒療治……」
『実態のよく分からない恐ろしい病気だと思っていたけど、ちゃんと助かる可能性もあるんだ』
闇堕ちを警戒してほしいけど、だからといって記憶を諦めてほしくはない。
それにこれからハル姉さんが闇堕ちする可能性が高いからこそ、闇堕ちしても帰って来られる可能性を提示しておきたかった。
とはいえ、完全に安心されるのは困る。
ほんと、やりづらいな……
「一応言っておきますが、私が闇堕ちした際に使った手は、ハル姉さんが闇堕ちした場合には使えません」
「え?」
「だから私が闇堕ちから助かっているからと、ハル姉さんの闇堕ちも絶対に助けられるとは思わないで下さいね?」
そもそも私の闇堕ちは、仕組まれたものだった。
そしてそれを本体は分かっていた。
自分が闇堕ちさせられる可能性を。
だからこそ本体は、自分が闇堕ちする前に、自分が闇堕ちした際の対策を完璧に練り上げていた。
そんな事が出来たからこそ、闇堕ちから自力帰還したなんていう伝説がついたけど、実際はただの強引な荒療治……
ギンを巻き込んでの、ただの荒療治……
ハル姉さんと圭さんが、ミオとギンのように繋がってさえいれば、理論上は同じ方法で助ける事は可能だ。
でもそんな事をハル姉さんが許すはずがない。
だから絶対に、ミオの時と同じ方法で助ける事は出来ない。
「さっきは闇堕ちの心配をするなと言っておいて、今度は警戒しろってか?」
「私が言っているのは、ハル姉さんならよっぽど闇堕ちはしないから安心していいという事です。闇堕ちそのものの事を舐めていいとは言ってません」
「別に舐めてはいねぇけど……」
『闇堕ちを軽く考えるつもりはなかった。それでもミオさんが闇堕ちから助かっているという事実は、僕達を安心させてくれた。だけどそれは、闇堕ちを軽んじている事になるんだ』
本当に難しい。
ここらへんがこの人達の心理によって、未来が大きく変動するポイントだ。
闇の種の真実を話せば、全員が記憶を諦めるという決断になる事は間違いない。
かといって闇堕ちを軽んじた状態のままで、あの日の記憶が返ってきた上に、ハル姉さんの闇堕ちを目の当たりすれば、確実にハル姉さんは救えない。
闇堕ちには警戒してもらいつつ、記憶を諦めず、ハル姉さんが闇堕ちしても変わらず迎え入れてくれる空間になるように……
冗談も交えつつ、適度に恐怖を与え、適度な警戒を促して……
「しかもあのハル姉さんですからね。あんなに膨大な力の持ち主が闇堕ちなんてしたら、それはもう誰にも止められない大パニックですよ……確実に助けられないと思ってもらった方がいいですね」
「……くそっ、なんで安心させてから落とすんだよっ!」
「そうね、逆がよかったわ」
「だから君は、少しでも闇堕ちの可能性がある事に味方をしてはくれないんだね」
「ご理解頂けたようで何よりです」
ハル姉さんが闇堕ちしたら大パニック、確実に助けられない……だからこそ、大パニックを防ぎ、高確率で助けられる方法を準備してきたんだ。
私が今ここで、これまでの全てを台無しにする訳にはいかない。
そう意気込んでいたんだけど、
「あ、あの? 今ミオさん、ハルさんの事を膨大な力の持ち主って言いましたよね? ハルさんって、力が少ないんじゃなかったんですか?」
と、圭さんの全く違う事を気にするという、意外性に当てられてしまった。
「はい?」
「ハルさんは昔に膨大な力を使ってしまった結果、今は殆ど力が残っていないのだと聞きました。だからハルさんはあまり会社での仕事が出来なくて、ミオさん達に頼り切りになってしまっていると……」
「あぁ、そんな事まで聞いていたんですね」
「ミオさんは力がとても強くて、営業成績No.1で、いつもたくさんの事を頑張ってくれている凄い人だって……」
「営業成績はよく分かりませんが、確かに私は最強であり、No.1ですね」
「それなら、ハルの闇堕ちだって止められるんじゃないのか?」
なるほど? よく分かんないけど、ハル姉さんの説明と私の発言に矛盾を感じてしまったと……
疑問を持たれたままなのは厄介だし、解決しておくべきか。
「はあぁぁー、順を追って説明しますね」
私がため息をついた事で、
『どうやら僕はミオさんが説明するつもりのなかった事まで説明しなければいけない状況にしてしまったみたいだ。でも、これで僕の予想はほぼ間違いないのだという期待も出来る』
と、圭さんに殆ど見透かされてしまったのが分かった。
まぁ別にいいっちゃいいんだけど、なんかこうさっきから、私の予定が狂わされてばかりだ。
常に変数計算をしているし、悪い未来には向かっていないのは確認できているからいいけど、本当に圭さんは規格外の変数過ぎるな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




