外伝 ミオ視点 51
ミオ視点です。
変数過ぎる圭さんが質問してきた事で、予定外の事まで説明しないといけなくなった。
とはいえ、この説明が増えた事によって、未来の可能性がいい方へと転んでいる事は間違いない。
「まず、今圭さんの言った昔に膨大な力を使ってしまったという事についてですが、それは過去形ではなくて、現在進行形です」
「ハルさんは今もなお、膨大な力を使い続けているという事ですか?」
「はい。ハル姉さんは、私達が全ての世界を管理している世界……えっと、ハル姉さんが働く会社のある世界と言えばいいですかね? そこのバランス維持というとても重要な役目を担っています」
「全ての世界の……」
「そうです。バランス維持は力を送るだけとはいえ、それだけ大きな世界のバランス維持となれば、そこには膨大な力を常に送り続けていないといけません」
昔はハル姉さんの92.864%の力を使って、なんとかギリギリでバランスを維持していた。
それが原因で、ハル姉さんは他に何の仕事も出来なくなって、力を使い切った無能だと揶揄される事にも繋がったんだ。
だけど今は、67.153%の力で維持できるくらいにはハル姉さんも強くなっていて、残りの力で自分の世界の管理をできるくらいにはなっている。
「そしてですね、もし仮にハル姉さんが闇堕ちなんてしようものなら、闇堕ちしたハル姉さんは当然世界のバランス維持なんて事をして下さいません!」
「それは、そうでしょうね……」
「となると、全世界の管理を行えなくなって、全世界の崩壊に繋がります!」
「それは……」
「だから早急に、ハル姉さんに変わってバランス維持を行う存在が必要となりますよね?」
「それが、お前なんだな?」
「そうです! いくら私がハル姉さんより強いとはいえ、急に膨大な力でのバランス調整も行わないといけなくなってしまえば、私に出来る事は精々闇堕ちしたハル姉さんが誰も傷付けてしまわないように戦う事だけですよ。闇堕ちから助けている余裕なんてありません!」
まぁ正確には違うけど、細かい担当をこの場で語ってもしょうがない。
どの道この人達を戦場へ連れて行く気はないし。
ただ、圭さんは連れて行かないとだから、出来る限りの状況を理解しておいてほしいけど……
『ミオさんがこれだけの事をすんなり説明できるというこの事実はもう、ミオさんがハルさんの家族が記憶を取り戻した場合のシュミレーションを何度もしていた事の証明だ』
いらん事まで理解してるな……
まぁ、いいんだけど……
「ありがとうございます、ミオさん。やっぱりミオさんは、今回もはじめから僕達に協力してくれるつもりだったんですね」
「はひ? どうしてそんな話になったのでしょうか?」
一応はとぼけておくけど、もう圭さんの中では確定してしまっているから、あまり意味はない。
こういういたたまれない空気、面倒なんだけど……
「さっきミオさんが僕達全員から記憶を消すって言った時、もし本当に消すつもりだったのなら、消すなんて事を宣言する事なく消していたはずですよね。わざわざ僕達に消す事を伝えたのは、本当は消すつもりなんてなかったからこそです」
「違いますよ〜。そんなのは、いきなり記憶を消されるのは嫌かな〜っていう、当然の配慮ですよ。ハル姉さんだって、先に消すと宣言してから消していましたよね? それと同じです」
「それだけじゃないですよ。今の闇堕ちとかの説明も、凄く丁寧に僕達の質問に答えてくれました。記憶を消す予定の相手に、そんな事をする必要はありません」
「それも、単に私がおしゃべりなだけです」
圭さんは意外にも理詰めでくるタイプだったんだな。
とはいえ、
『ミオさんにも色んな事情があるんだろうし、僕達に協力する気満々である事が知られるのは困るという事なんだったら認めてくれなくてもいいけど、そうじゃないなら認めて欲しい。ちゃんと感謝を伝えたいから』
と、こういう感情論で動いている節もある。
だから余計に強力な変数になるんだ。
「今頃気付いたのが情けなくも思うんですけど、あの時から既に、ですよね?」
「あの時?」
「はい、僕にその玉を下さった時の話です。ミオさんは僕がこういう行動を起こし、ミオさんに頼る事を予見していたんですよね? だから僕に自分は1人っ子だってわざと言って、ハルさんの家族に興味を持つようにした。そして、ハルさんに内緒で協力してくれる為に、その玉をくれたんです」
『そもそも世界の管理等の仕事をしている忙しい人が、自分を急に呼べるなんていう代物を僕に渡す事が不自然過ぎる。いつ使われるかどうかも分からないんだから、僕がその玉を持っている間は常に警戒をしていないといけない。となれば、ミオさんには近日中に僕が玉を使う確証があったという事になるんだ』
本当にいい思考をしている。
その独特な思考で召喚石を返そうなんてしてたから、色々と困ったんだという愚痴を是非とも聞いて欲しいけど、それは今じゃないな。
『それに今にして思えば、あの時に本当にハルさんに会いに来ていたのなら、もっと違う着地点があったはずだ。ハルさんが僕と離れている時で、僕に1番近い人目のないところを目的地としていたから、あんな急斜面になってしまったんだろう』
「それは圭さんの考え過ぎというものですよ」
「そうでしょうか? でもミオさん、今までずっと僕達の心を読んでいますよね?」
「おや、お気づきで?」
「僕達の意見も聞かずに記憶を消そうとしているのなら、僕達の心を読む必要はありません。それなのに心を読んでいたのは、あの時僕を見極めていたのと同様に、今回も見極めていたからなんじゃないですか? 皆さんが本当にハルさんの事を思い出しても大丈夫かどうかを」
「ふふっ、なかなか面白い発想力ですね。スカウトしたいくらいですよ」
瑞樹圭……第一印象からここまで評価が変わるのは、かなり珍しい。
今は本気でスカウトしたいと思う。
ハル姉さんの補佐官になって欲しい……
このハル姉さんの問題が片付いて、ちゃんと落ち着いたら、正式に推薦させてもらおう。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




