外伝 ミオ視点 46
ミオ視点です。
「だったら、ミオに休暇を与えるっていうのはどうですか?」
部屋に入ってくるなり、そう言ったカナ。
私に休暇とか言ってるけど……
「カナ、何が言いたい?」
「そんなに怖い顔しないで、ギン? 私はただ、ミオを休ませようって提案してるだけ」
「ミオを休ませるって? それは賛成だけど、それと今回の問題に関係ある?」
「はい、関係大ありです。休暇って大切なんですよ、お姉様方」
カナが何を言いたいのか、私にも分からない。
ただカナの事だから、皆が納得出来る折衷案を持ってきてくれたんだろうけど……?
「ですがその前に、ちょっと失礼?」
「あ?」
ドガッ!
「くっ、いきなり何しやがる!」
「いい物持ってるみたいだから、没収」
「……ったく」
「そ、れは……」
カナが急にギンに近づいて、ギンに回し蹴りをお見舞いした。
当然ギンは防いで後ろに跳ねたけど、カナの狙いはギンが持っていたものを奪う事だったようで、目的をしっかりと果たしている。
"深淵の眼差し"を奪うという目的を……
「なんでそんなの持ってたの?」
「……」
「答えて。どうするつもりだったの?」
「……ずりぃよな。俺から散々逃げてたくせに、逃してくれる気ねぇのな」
「当たり前でしょ! それの危険性が分かって……」
「あぁ、分かってるよ」
「……っ」
それはそうだ。
分からずに持っている訳がない。
深淵の眼差し……
とある世界から回収した寄物で、簡単に言えば未来を覗けるアイテムだ。
ただし、その眼を利用したものは、物理的にも精神的にも深淵へと落とされる。
空間移動の出来るギンなら、深淵へと落とされたところで帰って来られる。
でも心は? ギンなら深淵の恐怖くらい乗り越えられるだろうけど、確実に消耗するはずだ。
「それで未来を見ながら、最善を探すつもりだったの?」
「……」
「そんな事しなくたって、私や他の未来が見える人に頼れば……」
「ミオ、違うよ。ギンはね、ミオを深淵に落としたかったの」
「……は?」
私を深淵に落とす……?
カナは何を言って……?
「もう1個、持ってるよね? 流石に2個は奪えなかった」
「本当にお前は嫌な奴だな」
「寄物を管理してるの、私なんだから。バレないと思うな」
「……はぁ、ほらよ」
ギンが見せてきたのは、"レテの雫"。
これは少しでも浴びれば、全ての記憶が忘却される水だ。
私には絶対完全記憶があるから、仮にこれを浴びても記憶は帰ってくる。
ただ、帰ってくるまでには少し時間がかかってしまう。
「レテの雫で記憶を消したミオを、深淵に落とす。記憶のない状態で精神が深淵へと誘われるとなれば、流石のミオでも帰ってくるのに時間がかかる」
「……そ、だね」
「ギンはそれだけしてでも、ミオを止めたかった。それは分かるでしょ?」
「……」
「ミオに、この可能性は予測出来てた?」
「……出来てないよ。そんな可能性、考えもしないし」
何より、私はずっとギンを見ていなかったから。
ギンが自分の意見を変えない確率が99.999%だと分かっていた。
それでも私が思っていた以上に、ギンは絶対に認めないつもりだったんだ。
「でもこんな強引な休息は良くないから、ちゃんとした休暇の約束をする。ギン、お願いだからここは引いて?」
「……ミオに何もさせない時間を作るってか?」
「そう、それは私が保証する。だから、寄物は返して」
「……ほらよ」
もうバレた以上、その手は私に通じない。
だから素直に返したんだ。
実行されなかったとはいえ、多少なりとは私を足止めする方法を用意しているというのが、この男の恐ろしさだと思う。
本当に、どこまでもミオを休ませる為に……
「とまぁ、ギンの策略も暴いたところで、ミオ? ちゃんと教えてくれる? これから先にどうなるのか、ミオはどうするつもりだったのか。それが分からないと、私達も何も出来ないから」
「……」
「これだけ予測外の事が起きる可能性があった以上、ミオの作戦は無謀だったって分かったでしょ? ちゃんと無謀じゃない方法を探しましょ?」
「……分かった」
私は、私が知っている限りの現状を伝えた。
こんな事、伝えるつもりなんてなかった。
いつもの私だったら、皆に見つからないように終わらせていた。
それなのに今回は、それが出来なかった。
ここまでのギンの覚悟を知ってしまったから……
「なるほどね。結構詰みの状態なのね」
「ハルの家族問題は、私達のせいでもある。あの時、誰もハルの決断を止めなかったからな」
「そうだね……」
「あの決断自体は間違っていません。その証拠の未来をお伝えしましょうか?」
「それは、遠慮しておく」
「……はい」
普段の私なら、絶対にこんな事言わないのに……
もうダメだ、ずっと素直にならされている。
素直なんて……私じゃない……
ぽんっ……
「何?」
「なんとなく」
急にギンが私の頭に手を置いてきた。
私は手を置く台じゃないのに……
「お前は、何でもかんでも道具としてしか見ていない。周りの俺達はもちろん、自分の事も」
「……」
「限界まで利用して捨てる、人を道具としてみてるクズとは違う。だが、回復する程度の限界まで使用する事は厭わない」
「……何が言いたいの?」
「アレだ。"俺等の限界を勝手に決めるな"」
「……」
別に勝手に決めてなんていない。
私はちゃんと計算に基づいて……いや、そういうとこだろうな。
私の計算は常に変数を計算できない。
だから100%はあり得ない。
誰かに何かを頼る時も、その人の限界を計算した上で、その人に負担のない範囲でしか頼まない。
それに対して自分で何かをする時は、自分の限界を超えてもいいと思ってる。
だって私は……死んでも、またすぐに生成されるから。
「俺達はお前が思っているよりもっと動けるし、お前は簡単に消えていい存在じゃない。それを踏まえた上で、再計算してみろ」
「……そのような機能は、搭載されておりません」
「おいっ!」
「素直じゃないな」
「それがミオだもんねー」
「さぁ、皆で作戦を考え直しましょうか。ハルもミオも、誰も犠牲になんてならない作戦をね!」
はぁ、本当に……いたたまれないな、この空気……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




