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森の聖雫 十五話 ニアミス

―― side you ――


 何故か、エルフの子供がずっとオレの顔を見ている。

 凄く食事をしにくい……。


 しかしビックリしたぜ。

 何がって、この娘は初恋の人に似ているんだ。

 丁度、小6の夏休み明けのアノ娘は、こんな感じにコンガリしてたな。

 って……名前が思い出せない。 初恋の人の名前が思い出せないって、どうなんだ?

 ただアノ娘は、中学に入った途端、不良グループに入って、二年の時に妊娠したとか……。 あぁもう思い出すのはやめよう。


 この娘は、巫女服みたいなのを着ている。 でも色は茶色い。

 髪の色は緑が入った金髪……黄緑よりは黄色に近い。 その髪をポニーテールにしている。

 肌の色はフェリーフさんと一緒だ。


 隣の男エルフも似たような服を着ているし、神職なのかもしれない。

 確かフェリーフさんが、そんな仕事をしてたって言ってたし、同業者なのかも。


 オレが食事を終えると、子供エルフがモジモジしながら寄ってきた。


「ねぇ、君……」

 赤い顔をして、オドオドしている。

「何?」

「トイレどこかな?」

 なるほど。 これが聞きたくて、食事を終えるのを待っていたのか。

 まぁ、オレも限界が来る前に行くつもりだったし、案内するか。


「あぁ、オレも行くから案内するぜ」

「あ、うん、ありがとぅ。」


「食器はボクが片付けておくよ。」

「ぉぅ、さんきゅ。」

 流石は長兄。気が利きすぎる。


 オレの隣に付いて来るエルフ。

 今のオレは平気だが、もしかしたらこの娘はヤバイかもしれないから、早足で案内しよう。 オレも気が利くぜ。

 しかしホールから便所まで遠いんだよな。


 でも、待てよ……あの便所って、女子用(・・・)はドアとかねぇんだよな……。

 穴と穴の間に、背の低い壁が、申し訳程度にあるくらいで……しゃがんでも顔を見ながら会話できるくらいだ。

 流石にそれは、気まずくないか? いや、超気まずいよな。


 ど・ど・ど・どうしよう!


 だが、待てよオレ。

 今のオレは女だ。 初恋の娘に似ているからと言って、この娘はオレが男だとは思ってないはずだ。 

 そうだ、自然体だ。 自然体でやれば良いだけだ。 それがこの世界の普通なはずだ。


 だが、待てよオレ……、音とか聞こえてきたらどうしよう?

 聞かれる分には問題ないが、聞こえてきたら気まずいな……。

 何か会話でもしたほうが良いのか? 分かんねぇ……。


 あぁ、待てよオレ!

 この娘が大の方だと、どうしよう?!

 オレは小だ、大じゃない。

 その場合は会話とかしてたら、長引いて余計に気まずくないか?


 ど・ど・ど・どうしよう!


 そんな事を考えてたら、便所まで来てしまった。

 一つの建物だが、こっち側にあるのは男子用の入り口。 その裏側に女子用のドアがある。


 彼女が男子用に入ろうとする。


「あ、そっちは男用の便所なんだ。」


 そう、壁に向かって放出するタイプの便所。 女子では使えない。


「建物の裏側に座ってする便所があるから――」

「あは、分かった。ありがとう」


 そう言うと、彼女は男子用にはいってく。

「だから、そっちは男用だって。」

「うん、分かってるよ。」

 いやいや、分かってないじゃないか。


 そして、この娘は(ハカマ)を下ろし。


 え?


 懐かしの放物線を描き出した。






―― side us ――


 流石にあのまま二人がホールで待っていると困るから、フェリーフを呼びに行くことにした。


 二階の廊下に上ると、モルッタとマインとアイルが話し合っていた。


「おはよう」

「おはよぅさん」

「「おはようなのじゃ」」


 アイルが小瓶を持っていた。 小瓶はしっかりと蓋がしてあり、中の物がこぼれない様になっている。

 なにやらモルッタと交渉しているようだ。


「どうしたんだ?」

「マイ様が大変なのじゃ!」

「マイ様がカメの呪いにあったのじゃ!」


「え?! カメって、あの川のカメか?」

「「そうなのじゃ」」


 確かに、(いか)ついカメだったが、人を呪うような……いや、魔力が高い生物は人を呪う事があると聞いたな。

 そしてあのカメは魔素濃度が異様に高かった。

 しかし、仕留めたのは、獣人娘達のはずだが……。


「ぉぃぉぃ、昨日の夕飯にそのカメの肉が出てなかったか?」

 不安そうな声のモルッタ。


「いや、俺も食ったがそこまでは……」

「兄者達が何時も以上に元気だったが……呪いじゃねぇよな?」


「元気なら呪いじゃないだろ?」

「そ、そぅだょな……」

 流石に心配しすぎだろう。


「で、そのビンは?」

 アイルが手に持ってる小瓶を見せてくる。

「これで薬を造って欲しいのじゃ!」

「錬金術で薬を造って欲しいらしいんだが……」


「これは、カメの祟りで出来たコブから出てきた膿なのじゃ。」

「膿? そんな物を何に……?」

「あぁ、膿から薬を造るさね。」 その問いにはモルッタが返答した。


「錬金術か?」

「そうさね。」


 なるほど。 『毒を以て毒を制す』とか……『毒の薬をその毒から造る』とか聞いたことがあるな。 多分、そんなとこだろう。


 マインが両手で握り拳を作って力説する。

「コレから薬を造れば、コブがポロっと取れるのじゃ。」


 今度はアイルが力説する。

「コブが取れたら、アチキみたいにツルツルになるのじゃ!」

「ワッチの方が綺麗なツルツルなのじゃ!」

 なぜか睨み合うアイルとマイン。 綺麗なツルツルとはなんだ?


 話しが進まないからモルッタが割って入った。

「まぁそのビンを貰おぅかね。とりあえず薬を造ってみるさね」

 ビンを受け取ると、フタをあけるモルッタ。 生臭い臭いが漂ってくる。

「なんか、嗅いだ事がある臭いさね。」

 中にはかなりの量の白い膿が入っている。

 そうしてフタを閉める。


「「よろしく頼むのじゃ!!」」


「あぃあぃ」

 背中を向けて手を振りながら去っていくモルッタ。


「あぁ、そうだマインとアイルも朝飯を食べるだろ?」

「「食べるのじゃ!」」


「なら、ホールで……いや。三階の部屋で待っててくれ。」

 森エルフに、この二人を合わせたら、どうなるか分からない。 そう考えると、ホールで待ってくれて良かったな。


「「わかったのじゃ!」」

 元気良く三階に登っていく二人を見送る。


 さて……フェリーフに客人が来た事を伝えに行くか。




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