森の聖雫 十六話 森エルフの服
―― side you ――
「流石に、ずっと見られてたら、恥ずかしいんだけど……」
ショックのあまり彼女……いや彼の放物線を見続けてしまっていた。
初恋の娘に似てる子が、立ションとか……ショックを受けないほうがおかしいよな?
「ご、ごめん!」
でも、大丈夫! 肝心なモノは手で隠れて見えてないから! って言える訳が無い。
「君はしないの?」
「あ、え、あぁ……」
オレは半分放心状態で、建物の裏に周る。
建物のドアを開けて、ズボンを壁に掛けて、
ピンクのを下ろして、穴をまたぐ。 ちょろ じー
フェリーフさんも、アーズさんも、マインもアイルも、 ちょろちょろ じーー
エルフはみんな美形だけど、性別は顔で判別出来るのに…… ちょろちょろ じーーー
ま、まさかアノ顔で、男だとか……エルフ族恐るべし。 ちょろちょろ じーーーー
まぁドワーフも顔じゃ判別出来ないから、そんな物なのか? ちょろちょろ じーーーーー
「女の子だったんだね。」 じーーーーーー
え!
建物のドアの外から、エルフがこっちを観てた!
「な! なに覗いてんだよ!」
あれ? 何でオレ怒ってるんだ? 男に見られても大した事ないはずなのに。
「いや、さっき覗かれてたから、お返しで。 これでお相子ってことで。」
す、すげぇやりづれぇ!
個室にドアの取り付けを要請する!!
オレは急いで終わらせズボンを穿いて外にでた。
「ぃゃぁ~そんなに怒らないでよ。猿耳族とか初めて見るし、オスなのかメスなのかなんて、ぱっと見じゃ分からないしね。」
「た、確かにな……」
確かにオレも分からなかったしな……。 そういうのはお互い様か……。
ていうか、オレの顔は怒ってたのか?
「僕の名前はペタール。 君は?」
「ォ、オレはユウ」
「よろしく」
右手を出して握手を求めてくる、ペタール。
その手、洗ってねぇよな? でもまぁ、仕方ないか――。
「ょ、よろしくな……」
ということで、井戸まで歩くことにした。
「ユウは、下着を二枚着てるんだね。 それって猿耳族はみんな?」
ん? 下着を二枚? どういうことだ?
「いや、一枚だけど?」
「さっき桃色のも着てなかった?」
桃色って、マイのピンクのか? 確かにあれは下着だな。 ていうかバッチリ見てやがるな。
「あぁ、穿いてたけど?」
オレは苦笑いで答えた。
「それも、下着だよね?」
と、ズボンを指差すペタール。
「いや、これはズボンだぞ。」
「いや、どうみてもドロワーズだよね?」
「なんだそれ?」
「下着だよ。」
「え?」
あれ……そう言えば、みんなオレを見てソレっぽい事言ってたような気がするぞ……。
「で、でも白黒エルフは、これを普通に着てたぞ?」
「アイツ等は、女しかいないからなぁ~」
確かに、全員女だったな……。 しかも全員同じ顔で……家族ばっかりで、服なんか気にしないか……。
「アーズさんも、ドワーフ達も何も言わなかったけど?」
「アーズさんは慣れてるだろうし、ドワーフ達は他種族の……まして獣人種の服装なんか気にもしないよ。」
な、なんだってー。
「じゃ、じゃぁこの恰好は変なのか?」
「変だね……白い色は羨ましいけど。」
オ、オレはワ○メちゃんしてたのか! ワ○メちゃんの大胆ファッションをオレ様がしていたとは! 笑えねぇ!
だが、この服はモルッタが善意でくれた服だ。 その点は忘れちゃいけない。
しかしこれは忌々しき事態だ! 他の服を見つけねば……。
他にあるのは、元々着ていたマイのセーラー服か……。いや、流石にあれはもう着たくない。
今のこの恰好と天秤に掛けても、今の方がマシだ。 いや……あっちの方がマシか……。
と、なるとモルッタに他の服を売ってもらうか?
しかし、モルッタの恰好はかなりキワドイんだよな……。 ドワーフのあんな服を持って来られてもなぁ……。
ペタールの服を見る。
ペタールはどう見ても、巫女服だ……。 いや、男だから巫女服じゃおかしいのか?
「ペタールの服は、エルフの服なのか?」
「これは浄衣といって、エルフの神官の服だよ。 僕はまだ見習いだけどね。」
やっぱり神官なのか……。 と言うことはオレが着るのは変だな。
「他の普通のエルフは何を着てるんだ?」
「動物の革で作った服とかだねぇ。 でも、ゴワゴワしてるし、濡れたら肌に擦れたりするから嫌いかなぁ。 あと臭いし。」
確かに、革製品はメンテナンスが大変だって誰かが言ってたっけ。 あれ?でも
「じゃぁ、その服は誰が作ってるんだ?」
「この浄衣はドワーフから布を買ってるんだよ。」
やっぱりドワーフ製の布なのか。 通りでこの服の元の色と一緒なわけだ。
う~ん、モルッタに聞いてみるかなぁ。
なんて、オレが悩んでいたら、
「ふふふ」
今まで淡々と喋ってたペタールが、笑いだした。
「な、何?」
「いや、獣人族は野蛮だって聞いてたけど、意外と服とか気にするオシャレさんだと、思ってね。」
「な!」
オレ様がオシャレさんだと?!
あと意外とって……! 訳も分からず下着を二枚着てたからか?!
何かオレが誤解されてないか?
硬派で漢気溢れるオレ様がファッショナブルなどと!
「オレは別にオシャレとか気にしてねぇよ!」
「そうなんだ。ふふふ。」
くっそ、絶対コイツ、オレの事をなんか誤解してやがる。
こんな奴はほって置いて、モルッタにオレに合う服が無いか聞いてこよう。
って、井戸端でだべってたせいか、モルッタがやってきた。 この奥に、解体場やら作業場があるしな。
手には小さなビンを持っている。
「モルッタ!」
「なんだい? お、エルフのお客さんと一緒かい?」
手の平を合わせて会釈するペタール。
「オレに合いそうな服はないか?!」
「服?」
オレの服を見るモルッタ。 まぁモルッタがくれた物だけど。
「これって下着なんだろ?」
「まぁ、そうさね。」 平然と言うモルッタ。
やっぱりか!
「もうちょっとこぅ、下着が見えない服とかねぇか?」
「そうさねぇ……そっちさんくらいのエルフの服ならあるさね。」
ペタールは、まぁオレと同じくらいの身長だ。
「それを見せてくれ!」
「今回はお代を頂くよ?」
親指と人差し指で丸を描くモルッタ。
オレは金貨の入った袋を見せ付けた!
勿論、中に幾ら入ってるかはモルッタは知っている。
「じゃぁ、ちょっと待ってるさね。」
モルッタは井戸の横にある建物に入って行った。
◆ ◆ ◆
「これさね」
オレは服を確認したあとペタールを見る。
こくっと頷くペタール。
「エルフが着る子供用の服だね。」
「こ、これのどこが服なんだ?」
「一回着せて貰ったら?」
「着たいなら、小屋ん中入りな。 アタイが着せてやるさね。」
物は試しか……
オレはモルッタと小屋に入っていった。
◆ ◆ ◆
それは次の四点だった。
・包帯のような長い布。
・丈の短い前開きのベスト 多分胸部しか隠れない。
・布を二枚合わせただけのスカート。よって膝上からお尻までスリットが入った状態。
・風呂敷みたいな布
まず、包帯のような長い布を胸に巻かれた。 要は布の晒だ。
その上に、革のベストを着る。 でも丈が短すぎて、お腹が冷えそうだ。
で、布を二枚合わせただけのスカートを穿いて、腰に風呂敷をベルト代わりに巻いた。
しかも、ズボンは脱がされた。
「猿耳族って尻尾がないんだね。それとも千切れた?」
ペタールの第一声はこれだ。
「元からねぇよ」
「サイズはあってるさね。」
「そうだね。」
モルッタもペタールも反応は普通っぽい。
「なんで、スカートがここまで割れてんだ?」
オレは頼りないスカートのスリットのお尻の左右部分を持つ。
「木の上でも動きやすいさね。」
な、なるほど……木登りするのか。
「ヘソが見えてるんだが?」
「涼しいさね?」
「ていうか、なんでこんなに布面積が少ないんだ?」
「子供用だからねぇ……成長に合わせて、サイズが変えれるさね。」
「合理的だよね。」
二人でうんうん頷いてる。
た、確かに身体が大きくなっても、サイズの調整は簡単そうだけど……。
「どうするさね?」
「……値段は?」
「そうさね……ユウだし、大負けに負けて、金貨二枚でどうさね?」
「えぇ?! 金貨二枚ですか? それはお安いですね!」
なんか、ペタールが芝居臭いんだが……。
正直なとこ、金貨二枚の価値が分かんねぇ。でも十枚あるし買えるのは買えるな。
「その白い服と交換でもいいさね」
む? これはモルッタから貰った服なんだが? 忘れてるのか?
「他の服とかないか?」
「悪いけど今のユウに合いそうなのはないさね……。」
どうするか……
1.今のまま白いTシャツとズボンでいく。
デメリット……皆にパンツッ子扱いされる。 ワ○メちゃんポジション決定。
2.マイのセーラー服を着る。
デメリット……すーすーする。マイに笑われる。
3.エルフの服
デメリット……すごいすーすーする。 森エルフ族には普通の服。
「貰うよ」
「毎度あり!」
迷う要素があんまり無かった。
金貨二枚を支払う。
「この服と交換でもいいけどね?」
白い服か……。モルッタから貰った物なんだけど……。
元はボロボロで茶色だった服だけど今はマイの魔法で新品状態だし、白エルフ族のアイルも喜んでたくらいだから、価値があるのかも?
「一応、持っておくかな……服少ないし……」
「そうかい。 ま、要らなくなったら言っておくれ。」
「分かった。ありがとう」
こうしてオレは新アイテム『エルフの(子供)服』を手に入れた。
―― side us ――
フェリーフに声を掛けて半刻。
やっとフェリーフが酒場に降りて来た。
いつもの黒エルフ族と同じ気楽な服ではなく、森エルフ族の神官の服だ。
ブラーンやペタールも同じ服に見えるが、色が違う。
あと布の品質も違うそうなのだが、俺は詳しくは知らない。
あと心もち、耳の角度がいつもより上向きになっている。
まぁ、この神官の服を着て降りて着たってことは気合が入ってるってことか……。
「フェリーフ様におかれましては、ご機嫌も麗しいご様子と存知たてまつりまして、真に結構なことと承ります。」
ブラーンとペタールは、両膝を床について、両腕の肘を持つようにし、両腕で顔を隠すように礼をする。
「ふむ、ごきげんよう」
あぁ、多分あの顔、名前忘れてるな。 なにせ本来は只の酔っ払いだからな。
「フェリーフ様、初めまして、ブラーンの子、ペタールと申します。」
あぁ! このペタールの自己紹介は、ペタール自身というよりも、ブラーンの名前を思い出させるのが目的なのか!
「して、此度の用件は?」
フェリーフが偉そうにしている……まぁ偉いんだけど……。 違和感が半端ない。
「はっ!六日後に『竜滅祭』を執り行う事となりましたので、お迎えに上がった次第でございます。」
「ふむ」
何が『ふむ』だ!
そこで、フェリーフがユウを見つける。
「ユウも『竜滅祭』に行くのかえ?」
「え?」
突然話しを振られて困ってるユウ。 何故か森エルフの子供服に着替えている。
あぁ……森エルフの服に着替えてるから、一緒に行くのかと思ったのか?
「リュウメツサイってなんですか?」
「ふむ、ブラーン説明を」
「はっ!」
ブラーンは敬礼を解きユウに向き直り説明をする。
「『竜滅祭』とは、我等がご神木『世界樹』の復活を願う神事であると共に、悪竜共を滅したいという願いを神々に届ける祭りである。」
要は、自分達では何も出来ないから、神様にお願いするってことだな。
しかし、祭りの名前の由来が後半部分だけじゃねぇか……。 世界樹の復活が最優先じゃないのか? そんな事で良いのか?
「へぇ、お祭りなんだ。」
何故か嬉しそうな顔をしてるユウ。 何か勘違いしてないか?
「なんか面白そうだな。」
やっぱり勘違いしてるな。 止めるか。
「ふむ、ではユウはワラワについて参れ。」
「おい、森エルフの神事に獣人種を連れて行って良いのか?」
こう言えばブラーンは止めるだろう。
「ふむ、ユウには僅かながらも精霊の加護を感じるのでな。 遠からず森へ連れて行こうと思ってたとこじゃ」
「なんと!」「えっ?!ユウが?」
驚くブラーンとペタール。
このババァ! 何を企んでる? いや、先日ユウに『精霊の気配』を感じると言ってたやつか?
「オレに何か憑いてるのか?」
何故か嬉しそうなユウ。
「僅かじゃがな」
「なら、行こうかな……」
「うむ」
何が「うむ」だ!
流石にあんな場所に幼女を一人で行かす訳には……。
マイは体調が悪いと言ってたし、ウイについて行ってもらうか……。
「ウイ、ユウに――」
「あぁ、マイが調子悪いみたいだから、僕は残るよ。アーズがユウについて行ってあげて。」
「……そうか分かった」
何故か断れなかった。
「今回の開催地はサンジの村です。」
「ふむ」
サンジの村は、この宿から東に行った場所だな。
「出立の準備が出来次第、ご足労願いまする。」
「あい、分かった」
あぁ、なんだか面倒臭い事にならなければいいが……。
解説しよう!
『ワ○メちゃん』の○の中には『レ』は入れないように、お願いします。




