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森の聖雫 九話 守りたいモノ

―― side my ――


「あぁっと。そうだった、マイとマインとアイルには、別の話があるんだった。付いて来てくれ。」


「うごっ、うごっ、るーぶはっ! ちょっと止めなさい! アーズが呼んでるわよ!」

「「ぁぅぅぅ」」 恨みがましくアーズを睨むマインとアイル。


「いや、部屋に案内しようと思ってね。」

「部屋?」


「三人部屋に五人寝るわけには、いかないだろ?」

「それはそうだけど。」



 やっとユウが水筒を持って、獣人達の部屋の方へトボトボと歩いていったわ。

 まぁ実質的にユウしか出来ない仕事だし仕方ないわよね。

 それに人助けになるんだし、良いことよね?



「だから、新しい部屋を用意したんだ。」

「なるほどね。マインとアイルの部屋ね。」


「まぁ……そんな感じだ。」

「で、その部屋をアタシにも知っておけ……と?」


「まぁ……そんな感じだ。」

 確かに、この城は人数の割りに、かなり広いしね。二人の部屋くらい把握しといた方がいいのかも。



「ボクは部屋に戻って、休憩しておくよ。」

 そう言って、ウイ兄は部屋に戻っていったわ。



 アタシ達はアーズに案内されて、階段で二階に上がって……む? 三階まで?


 廊下の装飾とかが、下に比べて異様に豪華になってるんですが……。


「ここだ。」


 白く大きな両開きのドア。 所々金縁で装飾されている。


 ガチャリ。

 部屋の中はかなり広かった。 というか豪奢だったわ。


「ここって……」

「普通なら王妃が使う部屋らしい。 まぁ今は誰も使ってないから、家具とかは自由に使ってくれ。」


 す、すごい! 金ぴかの成金趣味だけど! 実際に見るとやっぱり凄い!


 タンスやら、テーブルやら、椅子やら、何から何まで金ぴかだわ。何臣何吉ですか?!


「家具に金箔を貼っておくと、家具が長持ちするとかで、金ぴかなんだが……なんだかセコいだろ?」

 発想はセコいけど、やってる事は豪快よね……。


「隣にも部屋があるの?」

「あぁ隣は寝室になっている。」


「見てもいい?」

「勿論構わない」


 ガチャリ。


「ぅわ!」


 (たたみ)二十(じょう)くらいあるベッドがあった!

 何の為にあるのか知らないけど、背の高い天蓋(てんがい)まで付いているわ!

 ふわっふわそうな布団は、アタシ達の部屋の雑草布団とは訳が違うわね。


「ここは元々、格闘王ガチー四世が王妃や愛妾達と日夜、格闘技の練習や、多人数による乱闘戦の訓練、関節技の研究などを勤しんでいた由緒正しいベッドだそうだ。」


 格闘王ガチー四世って誰?っていうか、なにか引っかかるんだけど、何だろう?


「そ、そうなんだ。 ま、まぁこんだけ広いと格闘技の練習くらい出来るよね。」

「流石は格闘王と言ったところだな。」


「でも、いいなぁ~、こんなトコに寝れるなんて、羨ましいなぁ。」

「そうか?」


「それはそうだよ。こんな場所で寝起きできるなんて、一生に一度あれば良いほうじゃない。」

「それは良かった。 じゃぁここで三人で泊まってくれ。」


 あれ? 三人?


「三人って? アタシと、ウイ兄と、ユウ?」

「いや、マイとマインとアイルだ。」


「え?なんで?」

「なんでも、何も、ここが気にいったんだろ?」


「まぁ……そうだけど……」

「なら、問題ないじゃないか」


「いや、問題あるわよね?」

「どんな?」


「いや、若い男女が一つの部屋に泊まるとか……マズい事になるかも?」

「マズい事とは?」

 え……そう言われると判らないけど……。よく言われるのが


「例えば……子供が出来るような事になったり?」

「良い事じゃないか。」

「「良い事なのじゃー」」


 あれ? アタシの感覚が変なのかな?


「まだ、結婚とかしてないし」

「結婚式なら婆様の所でしてたじゃないか。」

「「結婚式はしたのじゃー」」


「結婚式はあんなんじゃないわよ! アタシは白いウェディングドレスを着て、ブーケを持って――」

「アチキも白いドレスを着るのじゃ!」

「ワッチは黒いドレスを着るのじゃ!」

「三人でドレスを着るのか? 男がドレスを着るのは、あまり聞いたことが無いが、猿耳族の風習か?興味深いな――」


「と・に・か・く! 結婚式はあんなんじゃないの!」

「「ぁぅぅぅ、マイ様が怖いのじゃ。」」


 こんな所で三人で寝たら、アタシの乙女魂が擦り切れるじゃない。

 覚醒魂(かはんしん)に乗っ取られたらどうするのよ。


「とりあえず、場所は分かったから、アタシは元の部屋に戻るわ。」

 どうも、この人(エルフ)達とは感覚が違うみたいね。

 乙女魂の為にも、ペースを狂わされないようにしないといけないわね。






―― side you ――


 獣人達の部屋の前まで戻って来たけど、気が重い。


「はぁ____」 溜め息さえ沈んでいく気がする。


 でも、オレがしないと獣耳娘達がヤバいんだよなぁ。


 オレはドアを開ける。


 ガチャリ。

 部屋の中はかなり暑かった。 というか、ヤバいんじゃないか?


 オレはドアを開けたままに、外の木窓も開けた。

 どうやら外の雨は止んだ様で、雲の隙間から幾本もの美しい光の筋が地上へと射していた。


 涼しい風と明るい光が室内に入ってくる。


 獣耳娘達の顔を見……さっきよりヤバいんじゃないか?

 顔色が悪くなってる気がする。 いや、確実に悪くなっている。


 マイの回復魔法で元気になってたはずの、クーリクとチュウも、なんだかまた顔色が怪しくなっている。


「これは、本当に急がないと……」


 オレは決心した。


 でも、順番をどうしよう。


 やっぱり、一番身体が小さいマース族(ねずみ)のチュウからか?

 それとも、一番もふもふなカルゴーシュ族(うさぎ)のクーリクか?

 でも、一番顔色が悪そうなビリィー族(ねこ)のコットか?




 いや、悩んでる時間さえ危ないかも知れない。


 もう、一番顔色が悪そうなコットにしよう。

 でも、一応意識がないか確認してみようか。 意識があれば、水差しで飲ませれるからな。


「コット!コット!!」 コットの身体を軽く揺る。


 だめだ……。起きない。


 オレは覚悟を完了させた。


 革袋の水を口に含む。

 あぁ……確かに、ちょっと生臭いけど、これならオレでも平気そうだ。


 コットの口に、自分の口を押し当てた……、去らばオレのファースト(・・・・・)キス!

 あれ? こ…これはコットの口が開きそうに無いんですが?

 凄い歯軋りをするぐらい口を閉めている。


 オレは手で、コットの上唇と下唇を持って、広げてみる。

 あぁ……尖った牙が痛そう。


  どうやって開ければいい?   口に水を含んだままなので喋れなかった……。


 こういう時って……両方の頬っぺたを指で刺したら開くんじゃなかったっけ……。


 早速やってみた。

 うん、ちょっとカッコ悪い顔になったけど、口が開いた。

 オレは自分の口を、コットの口に押し当てる……。 水を少しだけ流し込む。


  ゴっクん。


 あ、飲んだ。

 また、少しだけ流し込む。


  ゴっクん。


「ひぃずぅ!!」


 !! コットが舌をオレの口の中に入れてきやがった!


 ザラザラした猫舌がオレの口内の水を吸い取っていく! イタイイタイ!

 いや、もうこれ自分で飲めるよね? 水差しから飲めるよね?!

 離れようとするオレをコットが抱き止めて離さない。 オレの力じゃ剥がせない。

 いやいや、メッチャ元気やん。 何?この水のせい? やっぱりヤバいぞカメの水。



 一分くらいオレの口内の水分を吸い尽くしたコットはやっと離れた。

 くっそ、意識がある内に水をたらふく飲ませておこう。


「コット! 水だ!」


 オレはコットの口に水差しを傾け、水を飲ませる。


「ユ……ユウか……あり…が…とう……助かっ…たよ。」

「ぉぅ」


 あぁ、こんなのが後四人も続くのか?


 オレは濡れた自分の口を手で拭う。

 ……あ……猫舌のザラザラで切れた口内から血が出てら……。






―― ワンポイント メモ 格闘王ガチー ――


 格闘王ガチー・デ・ローリンスキー四世の愛妾達は十八歳の誕生日を迎えると、謎の変死体として発見された。

 王宮内はその度に大変な騒動となったが、その悲報を聞いたガチー王は悲しそうに、こう言ったとされている。

「……十八歳が限界だったのだ……」

 この言葉からガチー王と愛妾達の変死の関係が取り沙汰されたが、格闘王を追及することも出来ず、愛妾はより若い者が選ばれ、十六歳でお役を終える事となる。

 ただ、猟奇的な変死体と、ガチー王の限界との繋がりは、悠久の歴史の謎とされている。


 また余談ではあるが、この王政時には婚姻可能年齢が六歳だったとされる。



解説しよう! ガチー・デ・ローリンスキーの発音は、

 ①グーグル翻訳でフランス語にセットし

 ②『Gati De Lorinsky』と入力して

 ③『音声を聞く』をクリックする

と良い感じのフランス語で確認できるぞ! これで中世感がググっとアップだ!


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