森の聖雫 一話 森の拒絶反応
森の聖雫
―― side you ――
結局、森に入ったのは、もう一度食事をした後だった。
まぁ、ドワーフ達が爆睡しだしたからなんだけど。 みんなそれなりに疲れてたみたいだしな。
夜が無いから夜営にはならないし、大きな魔物の反応もないらしいから心配はしてないけど、あんな危険そうなカメがいたんだし、魔物以外も気をつけないとな。
「空が曇ってきおったな。」
確かに、いつの間にか月が見えない。
「久しぶりに一雨きそうじゃな。 降る前に森に入るか?」
「その前に、崖上へ登るとするか。」
「確かにな、鉄砲水は怖いからな。」
ここは崖の下の川のそば。 川辺に枯れ木が落ちていたくらいだし、雨が降ったら増水もするんだろう。
その言葉のせいでオレ達は崖の上へ急いで登ることになった……が、鉄砲水は来なかった。
「さて、お主達は足はあるか?」 ドワーフの誰かが獣耳娘に聞いた。
「いや、私達は基本的に徒歩だ。」
「ふむ、いくら獣人族の足が速かろうが、森でリザドには敵うまい?」
「それもそうなんだが……」
「ワシらも五人じゃから、一人ずつなら乗れるぞぃ?」
「ふむ……」
獣耳娘達はお互いの顔を見合わせる。
「ドワーフが妖精種とは言え、オスだから抵抗があるんじゃないか?」 アーズの言葉は的を得ていたようだ。
「ワシらは誓ってお主らに変な事はせんがのぅ?」 ドワーフ達はちょっと困った顔で言った。
「安心しろ。 ドワーフのオスはドワーフのメスしか興味がない。」
アーズのその言葉に、再度、獣耳娘達はお互いの顔を見合わせる。
「分かった。 ただし、烙印には触れないでくれ。」
「分かっちょる。分かっちょる。」
そんなこんなで、獣耳娘達はドワーフ達のトカゲの後ろに乗っている。 チュウだけは前のようだけど。
マイとウイはマインとアイルと。 またマイをどちらが乗せるかで揉めたのは言うまでも無いな。
そしてオレは指定席と化したアーズの前だ。
森に入った途端、雨が降ってきた。 それはまるで、森が後戻りをさせないように降らせたようにさえ感じた。 ぃゃそれ程に強い雨ってことね。
でも森の中は、大きな樹の葉が傘になって、雨粒は直接身体には降り注がない。 むしろ葉を叩く雨の音が五月蠅い。
所々、葉から注ぐ水の筋が地面を叩いている。
たまにバケツをひっくり返したような音が聞こえてくるけど、多分葉っぱに溜まった水がいっぺんに落ちてきているのだろう。
つまり、雨水よりも音の方が気になる状態だった。
トカゲに乗って走っているとたまにアーズの短剣の柄がオレの腰をコツコツと叩くんだが、短剣を装備してるのは、まだ獣耳娘達を警戒してるのかな?
行く時は袋の中に入れていたはずだしな。 まだ百%信用できる訳じゃないって事か?
それにしても、トカゲの速度が来た時よりも遅い。 胃の中の物が、まだあるのがその証拠だ。
まぁ、雨も降って地面がぬかるんでるし、スピードを抑えているのかもしれないな。
そんな事を考えてたら、先を行くドワーフ達が片手を上げると、トカゲが少し拓けた場所で止まった。
「何かあったのか?」 止まったトカゲに近寄ったアーズが聞いた。
「いや、獣人の譲ちゃん達が全員グロッキーのようでな。」
獣耳娘達は全員真っ青な顔で大樹の根に凭れ掛かった。
まぁ、トカゲに乗りなれない獣耳娘が豪快な嘔吐をしたいのだろう。 それは仕方の無いことだよな。うんうん。
そうしていると、後ろからマインとアイルのトカゲがペタペタとやってきた。
「どうしたのじゃ?」
マインとアイルの服は、水分で服が肌にぴったりとくっついて、胸のぽっちがぽっちぽっちしていた。
しかもオレとお揃いのアイルの白い服は透けていて、黒い肌色が服の上からでも分かるくらいだ。 でも何故かぽっち部分は白い。
だけど、二人のそんな姿を見ても、オレの心は躍らなかった。
獣耳娘達の時もそうだったけど、他種族だとこんなものなのか?
それにしても、マイが二人の胸をチラチラ見てるのはなんでだ?
はは~ん。あの大きさを羨ましく思ってるな。マイの胸は悲しい程に残念だったからな。笑えるwww。
―― side my ――
かなり参ってそうね。
獣耳っ娘達の顔が今にも死にそうなほど青い顔をしてるわ。
「その獣人達はかなり体調が悪いのじゃ。」 アイルが心配そうに言ったけど、 まぁここまで顔色が悪いと誰でも分かるわよね。 チラッ。
「獣人達の魔素の流れが変になっているのじゃ。」 ちらっ。
マインがそういうと、ピエスの下腹部を指差した。
「その辺りから魔素の流れが変になってるのじゃ。」 チラッ。
「本当なのじゃ。ミンナその辺から変になってるのじゃ。」 ちらっ。
「……それ……って、もしかして……魔種……か?……」 苦しそうな表情でコットが尋ねた。
「「多分そうなのじゃ。」」 チラッちらっ。
「確かにここは魔物が近寄らない聖樹の森だが、 魔種に反応するとは聞いたことがないな……。」 アーズが首を傾げる。
「雨のせいかもしれんのぅ。」
「あ…め?」
「推測じゃが、聖樹に当たった雨が体内に入って、魔種と反応しているのかもしれん。」
「では、どうする? 周りは全部聖樹じゃぞぃ。」
「なるべく 水に当たらんようにして、さっさと森を抜けてしまうしかあるまい。」
「しかし、水飛沫は避けれんぞぃ」
「なにか水避けになる物があったかのぅ……」 そういうと、ドワーフ達が、袋の中からマントをだした。
ぅゎ……お城の武器屋で見た色彩感覚が最悪のマントだ。
「これなら水避けの魔法もかかっとるし、フードも付いとるからだいぶマシになるはずじゃが。 ワシらのお古じゃが我慢できるかのぅ」
お前らのかいっ!!
「……助かる……」 獣耳っ娘達はそういうとマントを身に着けた。
一瞬顔色がもっと悪くなったように見えたけど、アタシの主観のせいだと思いたい。
「どうするんじゃ? 引き返すか?」
「いや、流石に此処まで来たら城の方が近かろぅて。」
「そうだ、折角の客をここで帰してしまってゎ……」
囁くように同意したアーズの言葉は、聞かなかった事にしよう。
「水の筋」という表現があるかぐぐってみると、「水の背景」に「筋肉の男性」の写真がいっぱい出るんだけど……。
それで良いのか?検索エンジン。




