竜骨の谷 二十四話 合コンからのお持ち帰り…そして宿へ…
―― no side ――
「魚が焼き揚がったぞ。 魚の切り身は一人一つだ。 塩スープの皿とスプーンは12枚しかないから、使いまわしてくれ。 あと食い終わった鉄串はここにおいてくれ。」
結局アーズが全員分の食事を作る事になっていた。
「おぉありがたい、腹が減って倒れるとこじゃった。」
「カメの血で一部は元気じゃがな!」
「モルッタに早く会いたいもんじゃ!」「「「「「ガハハハハッ」」」」」
その笑い声のせいか、料理の臭いのせいかマース族のチュウがむっくりと起き上がった。
「私達の分まで用意してくれて感謝する。」
「ついでだ、気にするな。 これだけ塩を塗してないから、ビリィー族のだ。」
「アタイの分かい? 気を使ってもらって悪いね。」
「チュウの分もあるかな?」
「あぁ、全員分あるぞ。」
「お兄さん、ありがとうー」
「チュウ大丈夫なのか?」
「うん、いつもより調子は良い感じかな~。」
そう言うと、小さな手で鉄串を持ってムシャムシャと食べだした。
「それにしても、お主ら大穴をどうやって潜ったんじゃ?」
ドワーフの誰かが獣人族に問うた。
「大穴とは『時元洞』のことです?」 クーリクが首と耳を曲げて聞き返した。
「あぁ、そのはずだ。 妖精種は『大穴』と呼んでると聞いたことがある。」 ピエスがクーリクに返答した。
「お主らは『ジゲンドウ』と呼んどるのか……」
「あぁ、そうだが。で、どうとはどういう意味だ?」
「大穴を通る時に魔素を吸われんのか?」
「あぁ、そういうことか。」
というと、ピエスが手の平に乗るくらいの袋を取り出した。
「これだ。 この中のお守りが守ってくれるんだ。」
「見せて貰ってもええかの?」
「う~ん」
ピエスはちょっと悩むと拒否した。
「大切な物だから、ここでは無理だな。」
「そうか、残念じゃ。」
「とりあえず、コイツを持ってるだけで、『時元洞』を難なく通れるんだよ。」
「如何ほどの値段なんじゃ?」
「買えば結構な値段なんじゃねぇのか?」 コットが親指と人差し指で○を作る。
「大金貨の中央に魔素珠が埋まっていて、その周りにミスリル銀で魔方陣を描いてるのです。」 クーリクが自慢げに言った。
「ふむ……そんな魔導具をどこかで見たような気がするのぅ。」
「スイットかモルッタなら知っとろぅ。」
「じゃのぅ。」
ドワーフの誰かと誰かと誰かが納得したようだ。
「しかし、ミスリルのぅ……」
「確かに少量でも高価じゃな。」
「そういえば、通路を塞ぐとか言っていたが……今後どうするつもりだ? 完全に塞ぐ前には戻りたいんだが?」
少し心配そうにピエスが聞いた。
「今は、一番奥の大部屋に続く通路を塞いどる。 戻るならまた開けるがの?」
「そ、そうか。それは助かる。 流石に陸路で戻るには距離がありすぎるからな。」
「じゃが、お主らは何の為にこんな場所まで来たんじゃ?」
「何の為って……魔物を狩る為だが?」
「わざわざこんな地まで?」
「まぁ時元洞が何処に出るかは分からなかったからな。」
「それに魔物はアタイらの敵だからな。 魔物を狩る事に他に理由はいらん。 つっても弱い魔物に限るがな!」
「しかし、女子ばかりで、種族もバラバラか……」
「当然だ。 アタイ達は同族のオスに近寄る事が叶わないからな……発情期は特に大変なのさ。」
「同族のメスでも、他種族から見て判断しにくいですし! 誤解を招かないようにバラバラの種族になるのです。」
「なるほどのぅ」
「そういえば、ドワーフの作る武具は優秀だと聞くが、商人ってことは今購入できるか?」 スアル族のシュフィが聞いてきた。
「今は品物が無いのぅ。 まぁ精々、ゴブリンを狩る為に持って来た、『槍斧』と坑道内で使う『小斧』と『大斧』くらいかのぅ。 まぁ売り物じゃのぅて、ワシ等の得物じゃがな。」
「見せて貰っても?」
「うむ、よかろうて」
そう言うと、ドサ袋から一通り取り出し、手渡した。
じっと大斧を見つめるシュフィ。
「確かに良い品だな。」
「じゃろうて。」
「アナタが作ったのか?」
「ぃんや、鍛冶は別の兄弟がやっちょる。」
「ふむ」
シュフィはそう言うと、他の武具に目を向けた。
「この鎧は……妙に新しいな。 それに鏡のように輝いている……。 これもドワーフ製なのか?」
「まぁ、そうなんじゃが……」 そう言うと、マイの方に視線を向けた……が
「マイしゃま~。あ~んなのじゃ」
「ワッチのも。あ~んなのじゃ!」
「そんなに食べれないからー!」
「ユウも『あ~ん』してあげようか?」
「怒るぞウイ……」
エルフ二人と妹と姉とイチャコラしてるので、流すことにした。
「他にはどんな武器があるんだ?」
「色々あるぞぃ」
「アーズの持ってる剣、エルフの譲ちゃんがもっとる弓矢、ユウがもっとるダガーもそうじゃな。 ウイの着とる皮鎧もじゃ。」
「装飾品も少しはあるぞぃ」
「あと農具もあつかっちょる。 ここには無いがの!」
「あと日持ちがする丸薬もあるぞぃ」
「それは、どこに行けば買えるんだ?」
「ルルーコ商店じゃ。」
「……いや、それはどこにあるんだ?」
「ルルーコ城じゃ」
「ちがう! 俺の居城だ! 勝手に自分達の物にするな!」
「ガハハハハ。 冗談じゃて。 アーズの居城『世界樹の宿』の中にあるんじゃ。」
「城って事は、アーズは貴族なのか?」
「いや、ちがう」
「エルフに貴族も平民もなかろうて?」
「城なのに宿屋なのです?」
「そうだ。」
「ここ数年で、宿泊客は三人じゃがの!」
「ぅぐ…………」
「よくそんな場所で商売をしているな……」
「「「「「………………」」」」」
スアル族のシュフィが仲間に向かって提案する。
「私はドワーフ製の武具に興味があるんだが……その、ルルーコ城?とやらに行ってみないか?」
「ルルーコ城じゃない!」
「じゃぁ何城なんだ?」
「只の俺の居城……世界樹の宿だ。」
「まぁ妖精種の店なら、アタイらにとっちゃ逆に好都合だね。」
「獣人の店は問題でもあるのか?」
「あぁ、武具を選ぶのも大変なんだよ……ほんと色んな意味でな……」
「わたしも興味があるのです。」
「チュウもいいよ?」
「で、その宿は、どの辺にあるんだい?」
「この川の上流に行くと森がある。 そこからリザドで1日くらいじゃな。」
「カメの頭が無駄になる前に着きたいしのぅ」
「そういや、このカメは買いとってくれるのかい?」
「ワシが買い取る事になった。 銅貨ニ十枚でどうじゃ? もちろん交易通貨じゃて。」
「交易通貨ってことは。 価値は二倍ってとこか……悪くないな。」
「お主ら、王国の者か?」
「あぁ、今は『連合王国』だがな。」
「『連合王国』?」
「あぁ、各獣人族が集まった国だ。」
「では、帝国は無くなったのか?」
「いや、帝国に対抗するために、獣人の国が一つになったのが連合王国だ。」
「その帝国は連合王国さえ飲み込みたいようだがな。」
「ふんっ、獣人どもは何時の時代も潰しあいが好きじゃのぅ。」
「まぁ、一部の強欲な者がやってるだけなんだがな……」
「強欲な者って、お前が王族批判か?」
「何を今更。 修道女になった時点で私には関係ない。」
「確かにそうだな。」
「なんじゃ? クッタ族の娘は王族か?」
「元だ。 あと私の名はピエスだ。」
そこから獣人娘達とドワーフ達の自己紹介がはじまった。
「そう言えば、ドワーフ達は聖女様の情報を知らないか?」
「なんじゃ?聖女様?」
「数日前に法皇様が神託を授かってな、聖女様が何処かに顕現なされたそうなんだが。」
「聖女とは、不治の病さえ治すとかいう、アレか?」
ピエスはその不敬な言葉にちょっとイヤな顔をして答える。
「そうだ。聖女様は私達の希望だ。」 5人は空を仰いで拝みだした。
「なるほどのぅ。 その聖女様とやらなら、魔種を治せると?」
「そういうことだ。」
「だからアタイらはどうしても聖女様にお会いしたいんだよ。」
「ふむ、そんな神託なんぞ情報自体が初耳じゃのぅ。 アーズは何か知らんか?」
「俺は知らん……が、フェリーフなら何か知ってるかもしれないな。」
「ふむ、確かにあの婆様なら何かしら知っとるかもな。」
「それは誰だ?!」
「俺の宿の従業員だ。」
「従業員?」
「あぁ、女性のエルフなんだが……凄い高齢だ……だから色んな事を知ってる……但し、本人には年齢の事は言わないように。」
「……それは是非お会いしたいものだな。」
「まぁ宿に来るなら会うことになるさ。」
「では、武器の購入と、聖女様の情報を求めてルルーコ城とやらに行くことにするか?」
ピエスは仲間達を見渡した。
「賛成~」
「異議なし」
「あいあい」
「了解なのです」
「ルルーコ城じゃないがな!」




