竜骨の谷 二十三話 サインとマーク
―― side my ――
イヌ耳っ娘がドワーフ達に交渉し始めたわ。
「このカメを買い取ってくれると聞いたんだが?」
「なんじゃ? 食わんのか?」
「アタイ達には少々キツいようでな。」
ネコ耳っ娘が苦笑いしながら言った。
「まぁ、食うにしても血抜きをしてからじゃな。」
「頭は魚と交換したとして……甲羅と肉か……。まぁ、甲羅じゃな。」
「そうじゃな、甲羅以外は……それほど価値がないのう。」
ドワーフ達はそう言うとジャンケンをし始めた……。 でもよく見るとジャンケンじゃないわね。
両手の指を折り曲げて何かを競ってるみたい。
「アレは何をしてるの?」
「あぁ……アレは商人の取引で使われるサインだな。 俺も詳しくは知らないが、あぁやって値段を決めてるらしい。 まぁ会話より早く決まるのは確かだな。」
かなり早く、両手の指を曲げたり伸ばしたりしている。 あの指の形が金額を表してるのかな?
ちょっと真似してみる。
ていうか、指が攣りそう。 よくあんな形に指を動かせるわね。
あれ? なんか……指を止めたドワーフ達がアタシの方を見てる。
「マイ、それは本気か?」
「え?何が?」
「その金額じゃ。」
「え?これっていくら?」
「銀貨十枚じゃて…………」
「いやいや、まって。アタシそんなの知らないから!」
「そうじゃったか。 まぁ銀貨十枚は流石に無いからのう。」
「一応確認じゃが、マイは競売に参加するのか?」
「勿論しないわ!」
「分かった、ならば静かに見といてくれ。」
「分かったわ。 お邪魔をして悪かったわね。」
危うく全財産持っていかれるとこだったわ。
でもあのサイン、なんとなく面白そうだし、アタシも教えて貰うかな。
―― side you ――
「ぅうぅ…………夢……か?」
「あ、ユウ大丈夫かい?」
ウイがオレを見て心配そうな顔をしている。 マイは指を曲げながら変な顔をしている。
「あぁ、なんか変な夢をみてた。」
「そう、でも大丈夫そうだね。 よかった。 もうカメの血は飲まない方がいいね。」
そうか、オレはカメの血を舐めて倒れたのか……。 情けないぜ。
「アレは何をやってるんだ?」
「ドワーフ達がカメの買取の値段を決めてるみたいだね。 指の形で値段が決まるみたいだよ。」
「ふ~ん」
まっ、あんな毒ガメ、オレには不要だな。
「「マイしゃまー」」
白と黒のエルフがマイに抱きついてる。
「あれは?」
「カメの血を飲んで酔っ払ったみたいだね。」
「血を飲んで酔っ払う?」
「みたいだね」
ふむ……まぁどうでもいいか。
あれ? オレの横にマース族のチュウが寝ている。 もしかして彼女も毒にヤラレタのだろうか?
チュウはオレより小さい……むしろ幼女と言っていいんじゃないだろうか。 まぁネズミの種族だし、成人なのかも。
オレ一人じゃなかった事にちょっと安心を覚える。
額を見ると何やら文字のような図形のような物が書かれている。 これが烙印か……。
オレは何気なく、烙印に手を伸ばす。
「触るな!!」
ビクッっとするオレ。
その大声に全員の視線が声の主に向く。
声の方を向くとクッタ族のピエスが真剣な顔でオレを睨んでいた。
「烙印に触れてはだめだ!」
その大声に全員の視線が、ピエスの視線の先……すなわちオレに向く。
「ご、ごめん。」
その気迫にオレは焦って、素早く手を戻す。
「ユウ。 その烙印は魔術の印じゃ。 無闇に触るとそのマース族の命に関わるぞい。」
ドワーフの一人が教えてくれた。
「す、すまない。 知らなかった。」
「アタイ達は魔種持ちだから、他人との接触はご法度なんだよ。 特にオスはね。」
ビリィー族のコットが凄く残念そうに言う。
「まぁユウちゃんはメスっぽいから大丈夫なのだけど、他人がソレに触れるだけで余計な手間が増えるのです。」
カルゴーシュ族のクーリクが申し訳なさそうに言った。
「前に教えたじゃろう。 魔種持ちのメスが身篭ると、その子は魔物になるんじゃ。 じゃから過ちを犯さんように烙印が押される。」
「ドワーフの魔物はゴブリン。 獣人はコボルトやオーク。 そしてエルフは……」
ドワーフ達が押し黙る。
アーズが苦々しい顔で、真剣な声で呟いた。
「ヴァンパイアだ。」
「「マイしゃまー」」
「アタシの首にキスしないでーーーー!!」
なるほど。 あれが吸われた痕か。




