竜骨の谷 十七話 ちっは◎いがいっは◎い
―― side you ――
「ユウとウイも入らないか?」
行き成り鎧やら服を脱ぎだしたピエス達は、川で水浴びを始めやがった。
オレは急いで手で目を隠す。 オレの漢気は健在だったようだ。
いや、確かにオレも水浴びをしたいけれど、流石に女性と一緒に入るのは気が引けるというものだ。
でもしかし、あれだ。うん、そうだ。ちょっと見てみたいよな? で、指の隙間から…………って、あれ?
あれだ。 日本猿が温泉に浸かってる感じ。 動物が水浴びしてる程度にしか思えない。
見た目は殆ど人間のソレなのに、感覚では動物の水浴びと感じる。変な感じだ。
ただ、耳以外に大きく違う物が隠されていた。
それは、おっぱいの数だ。いや膨らみが殆ど無い。でも胸からお腹にかけて乳首がいっぱいある。
なんかみんなこっち向いてコイコイと手を振ってる。
ここは日本人らしく、裸の付き合いといきますか。……まぁ鎧は脱げないけどな。
「ボクは見張りをしとくよ。」
ウイはどっかに行っちまった。まぁ、あいつも中身は男だしな。気が引けるんだろう。
そう言えば、身体を洗うのも井戸ぶりで、水が気持ち良いぜ。ゴシゴシ。
「ユウ達はなんでドワーフと一緒にいるんだ?」
ネコの人が話しかけてきた。 最初に大穴で目があった人だ。
え~と、なんでだっけ?
「おっと自己紹介がまだだったな。私はビリィー族のコットだ。よろしくな。」
ネコっぽいのに水浴びしながら挨拶された。
白と黒と赤の髪の毛が綺麗なお姉さんだ。 三毛猫だと茶色だと思うのだけど赤なんだな。
しっぽがクネクネしている。
乳首は9個だな。奇数……なんだな……。
「その小さいのがカルゴーシュ族のクーリク」
ウサギ耳の人だ。 エルフの様に耳が長いけど、こっちは頭から真上に耳が生えてる。
真っ白い毛がふっわふわだったけど、今は水でくっついてペッタンとなっている。
オレと同じくらいの身長だろうか。でも、耳が長い……が身長には入らないはずだ。
「それより小さいのがマース族のチュウ」
ネズミっぽい小さい人だ。頭のわりに耳が異様に大きい……いやでも、某ランドの主人ほどじゃない。
灰色がネズミ色と呼ばれる所以なわけだ。
この二人は身体が小さいのに10個もある……。
「一番でっかいのがスアル族のシュフィ」
ブタっぽい人だ。
全体的に一番人間に近い気がするのは肌色のせいか?耳と鼻以外は。鼻は……上向きのブタッ鼻だな。
それに一番注目すべきは、おっぱいが7対……14個もあるってどういうことだよ。思わず目がそっちに向いてしまう。
「フフフ。乳房が2つしかないからって気にしなくていいぞ。」
オレの視線に気が付いたのか指摘されてしまった、が……なんか……数を気にされてる?しかもオレが負けた感が……。不本意ながら胸を隠してるのも俺だけだしな。
「私がリーダーのクッタ族のピエスだ。」
イヌの人だ。鼻の頭が黒い。
白と茶色と毛並みは秋田犬っぽい。
乳首は8個……一番少ない?のか?
「ユウ達は猿耳族だよな?なんでこんな遠くまで来たんだ?」
また、ネコの……コットが聞いてきた。
「いや、それはオレ達も分かんねぇ。気が付いたら森の中にいたんだ。」
「三人で?」
「そうだ。」
言われて見れば、なんでオレ達は森の中にいたんだろうか?
「で、なんでドワーフ達と一緒にいるんだ?」
「オオカミに襲われてたとこを助けて貰ったんだ。」
「ふむ、まぁ悪い奴等じゃなさそうだな。」
「奴隷商って感じでもなかったよね。」
顔を見合す五人。
「コット達は何をしてたんだ?」
「私達は魔物狩りさね。」
「女なのにか?」
女は魔物に合うと大変そうなのに、わざわざ戦うのか?
「私達は烙印者だしね。」
「烙印者?」
「これだ」と言って三色の髪の毛をかきあげ額の文字を見せてくる。
「それは?」
「昔、魔物に襲われたんだよ。で魔種を植えつけられちまった。」
「ほら、ちょっと肌が緑がかってるだろ?」
確かに全員の肌がちょっとカビが生えた様に緑っぽい感じになってる気がする。ただ言われないと分からないくらい、うっすらと。
「あと、数日前に法皇様が神託を授かってな」
「シンタク?」
「あぁ、聖女様が何処かに顕現なされたそうだ。」
「セイジョ様?」
「聖女様は私達の希望だ。だから無事にお連れせねばならない。とは言え、どちらに居られるのやら。」
5人は天を仰いで拝みだした。
「ふ~ん。まぁガンバッテ」
まぁ、よく分からんな。 怪しい宗教には近寄るなって言うし、これ以上は聞かない方がいい気がするぜ。
あっ! 鼻の穴の中を洗わなければ。 ほじほじ……ぅぉ! 反対も……ほじほじ……ぅおぉ!
―― side us ――
「こりゃだめじゃな。」
俺は粗方の瘴核を回収して、大穴の前に戻ってきたんだが、ドワーフ達は芳しくないようだ。
「大穴を塞ぐのは難しそうだな。」
「魔力が吸われたらお手上げじゃわい。」
忌々しく大穴を睨むドワーフ達。
大穴を塞ぐために新しく掘った穴から採掘した、質の良い土やら石で壁を作ろうとしたんだが、上手く行ってない。
石を近づけると弾かれるし、土壁の魔法で塞ごうとすると大穴に魔力を吸い取られるらしい。
ちなみに質の悪い土とは、ゴブリンの糞尿が混ざっている物だ。
「どうする?」
「この部屋自体を崩すか?」
「そうすると烙印の雌が帰れんようになるのぅ。」
「この部屋の入り口の通路だけ塞ぐか?」
「ふむ、そんな所かのぅ」
「それに最終的には大穴は破壊したいしのぅ。」
そこで俺は肝心な事を思いつく。
「そもそも大穴を破壊できる空間魔法の使い手に当てはあるのか?」
勿論俺にはない。
「それが一番の問題じゃて。」
「本国に帰ればいるかも知れんが、こんな遠方まで来てくれるかのぅ。」
「ゴブリンの巣の話をすれば来てくれるじゃろう?」
「どうかのぅ、魔物の巣など此処だけでは無かろうて。」
「確か大賢者フーリューなら出来るとか言ってたのぅ?」
「千年は前の魔法使いじゃろ?」
大賢者フーリューはお伽噺によく出てくる大昔の魔法使いだ。
とは言え実在していた人物なのだが、正体が不明で、種族も性別も不明だ。 獣人種だという事が有力ではある。 理由は簡単で、千年程度なら、エルフや妖精種なら知り合いがまだ生きているはずなのだ。
その名声は非常に大きく、多くの魔法学園や錬金術学園、魔導研究所などの創設者が大賢者フーリューとなっている。が、どうも嘘くさい。 なぜなら、二百年前に出来た学園の創設者が千年前の人物なわけがない。 しかし、そんなバカでも分かる嘘をつくか?という疑問も残る。 まぁそんなバカでも分かる嘘やら謎が、逆に大賢者フーリューを解らなくしているのだ。
しかし、レヴィ様は知り合いの様な感じだったな。
「その縁者や弟子はおらんのか?」
「魔導研究所か?」
「…………そうなるのかのぅ…………」
嫌な顔をするドワーフ達。
だめだな、そんな話こんな臭い場所ですることも無いだろう。俺だって一刻も早くこの場から立ち去りたいんだ。
「とりあえず、今この場をどうするか決めよう。」
「そ、そうじゃな」
「掘った穴にゴブリン共の死体を放り込んで、埋めちまうか。」
「あとは入ってきた坑道を埋めておくか…………何か入ってきても時間稼ぎ程度にはなるじゃろう。」
「すまんが俺は限界だ。外で休ませてくれ。」
「分かった。土仕事は任せておけ。」
俺は新鮮な空気を求めて外に向かう事にした。




