竜骨の谷 十六話 首を数える
―― side my ――
瘴核の摘出って結構めんどくさいわ。
肋骨がすごく邪魔だし、血でナイフが滑るし。
死体と目が合うとなんだか怖いから、頭を集めて部屋の隅にあっちを向けて並べてみたんだけど…………。
数えてみたら、この部屋だけで23個もあったわ。 かなり摘出は大変そう。
成体が4人
子供が13人
赤ん坊が6人
ドワーフ達が7つ子っぽいし、3セット?いたのかも。
でも、こんな赤ん坊まで容赦なしで首を落とすとか、よっぽどよね。
大人の瘴核はピンポン玉くらいで赤くてプニプニしてるけど、子供のはパチンコ玉くらい。見つけるのが大変だわ。
これに安定剤を塗って……収納に入れておけばいいのかな。
それにしても、こんな解剖をしてもなんとも思わない自分自身にもビックリだわ。これも覚醒効果かしら?
でも、ウサギの解体の時は見てるだけでダメだったのになぁ。慣れってやつかな?
それにしても、マインとアイルは、やたらサクサク摘出してるわね。
「ねぇ、マイン、アイル。瘴核の摘出って何かコツでもあるの?」
顔を見合わせるマインとアイル。
「魔法で瘴核を見つけるのじゃ。」
「千里眼か探索じゃな。」
アイルが瘴核を摘まんで
「瘴核を意識して『サーチ』か『クレアボヤンス』と唱えてみるのじゃ。」
「透視みたいな感じかな?」
「「???」」
あれ?透視ではない?と、とりあえずやってみようか…………。
瘴核を摘まんで、
「『くれやぼあんす』」
あれ?なんとも…………あぁ、マインとアイルの服が透けてしまった…………。失敗か。透視のイメージだったしなぁ。
透視というより、位置なのかな?
気を取り直して、サーチでやってみよっか。
瘴核を意識して、
「『サーチ』 うゎ!」
部屋中のゴブリンの死体から、頭の中に瘴核の反応がビンビン入ってくる。 場所は分かるけど……多すぎるなぁ……隣の部屋のも入ってくる。
「流石マイ様なのじゃ、一回で成功したようなのじゃ。」
褒めてくれるのは嬉しいけれど、これって成功してるのかな……?
「普通は成功しないの?」
「適正があれば成功はするのじゃ。」
「適正がなかったら?」
「術式を組むのじゃ。」
「あとは魔方陣じゃ。」
「そうじゃな、魔方陣の方が楽なのじゃ。」
「まぁ、よく分からないけど、やり方はあるんだ?」
「アチキもよくは知らんのじゃ。」
「ワッチも知らんのじゃ。」
なんか二人でケラケラ笑い出した。
あれ?ユウが知らない女の人と一緒に来た……。
みんな頭の上に二つの耳が…………ウサギとかネコ? ピコピコ動いて本物っぽい。
えぇ……ていうか、この人達は動物のハーフ? ていうか、なんで『ソレ』がそんなにいっぱいあるの?
ふむ、ユウのビキニは透視できないみたい。金属は透視できないのかな?
「ユウ、その人達は?」
「穴の奥から来た。水を汲みたいって言うから川まで案内するとこだ。」
「穴の奥に人がいたんだ?」
「別の場所に繋がってるんだってさ。」
「別の場所って?」
「さぁ?」
「『魔物の巣』よ。」
「え~と、あなたは?」
「修道戦士のピエスよ」
「修道戦士?」
「まぁ、魔物の駆除を生業にしてる者よ」
「ふ~ん」
ピエスと名乗った女の人の頭にはイヌの耳が付いてるわ。ちなみに小さい『ソレ』が『8つ』もあるわ。
ユウが顔をしかめて
「マイ……よく平気だな。血だらけだぞ。 それに頭を並べて……何してるんだ?」
「なんかゴブリンの解体って、魚とか虫の解剖みたいにしか感じないわ。ウサギより全然平気よ。 でも目が合うと怖いのよね。」
今度は女の人の一人が顔をしかめたわ…………。うん、頭にウサ耳が着いてる。地雷を踏んだかも。ちなみに小さい『ソレ』が『10個』もあるわ。
「ゴブリンの瘴核か…………これは…………結構な数だな。」
こ、この人はブタ耳?かしら? 大きめの『ソレ』が『14個』!?もう、所狭しね。
「先に行って魔物が居ないか見てくる。」
ネコ耳の人の姿が消えたわ………ちなみに『ソレ』は『9つ』だったわ。
「チュウも行ってくる。」
ネズ耳の子も姿が消えた………あんなに身体が小さいのに『ソレ』は『10個』もあったわね。
ちなみにマインもアイルも『2つ』ね。そうよね。それが普通だわ。
「なぁマイ、ウイを見てないか?」
「そう言えば見てないわね。ドワーフ達のとこじゃないの?」
「いや、いなかったな。怪我でもしてるんじゃねぇだろうな。」
「まぁ、ウイ兄だし大丈夫じゃない? で、ドワーフ達は?」
「とりあえず、テストも兼ねて土壁で大穴を塞いでみるんだってさ。なるべく向こうから新しい魔物が来ないように。」
「ふ~ん」
―― side you ――
「外にも魔物の反応は無いわね。」
ネコとネズミの人が帰ってきた。 ネコとネズミって相性悪そうなのにな。
「坑道を出てすぐに川があったわ、水を飲みましょう。」
「チュウは水浴びがしたい。」
「あぁ、私もしたいな。」
あぁ、オレも水浴びしたいぜ。埃とか匂いとか凄いしな。 バンダナでマスクはしてたけど、鼻の穴の中まで洗いたい気分だぜ。
「オレも一旦外にいくぜ。ウイが外にいるかもしれないしな。」
「分かったわ。アタシはもうちょっと瘴核をとっとく。 どうせ全部摘出しないといけないんだろうし。」
マイはこの臭いは平気なのか? まぁ気にしても仕方ないか。
え~と出口はっと。ってもうネコの人が先頭行ってるし、もう案内はいらないな。
「久しぶりの外の光ね。」
手で光を遮るピエスとブタの人。
「待て!何かいる!…………さっきまでは何も居なかったはずなのに。」
ゴブリンの生き残りか?
「あ、ユウおかえり。」
「ウイ…………お前いつ外にでたんだ?探してたのに。」
「いや、ボクは中に入ってないよ。」
「…………なんで?」
「外で見張りをしてたんだ。」
こ、こいつ……洞窟が臭いから中に入らなかったな……。
「し、知り合いなら問題なさそうだな。猿耳だし。」
「あぁ、オレの兄弟のウイだ。」
「ふむ、姉妹か。」
あれ?なんか違うけど別にいいか。もうめんどくさい。
「さっきは誰も居なかったんだがな??」
「ま、そんなことより、水だ水。」
ネコの人は納得できないようだな。
「水はかなり綺麗だぞ!そのまま飲めそうだ。」
あぁ、オレもそのまま飲んだしな。
ていうか、みんな顔を川に付けて舌で水を舐めてる…………水筒から飲むときはどうやってるんだ?
「魔物の反応は?」
「…………ないな」
ゴブリンは洞窟に入る前に全部やっつけたって言ってたしな。
「では!」
「え!?」
全員、鎧やら服やら脱ぎだしやがった!




