竜骨の谷 十四話 殲滅
―― side my ――
「おかえり。」
ユウが独り言を言ってるわ。
するとアーズが突然現れたわ。ユウには見えてたのかな?あ、足跡とか足音とか?
アーズは頭のバンダナを顔にしてるわね。 髪の色を交換してくれないかしら。
「ただいま。」
「内部はどうじゃった?」
アーズはしゃがんで地面に絵を書き出したわ。ていうか、アーズから凄い悪臭が漂ってくるわ。
「ここが入り口だ、坑道はやや下りの一本道だが、左右にいくつかの部屋がある。その部屋には赤子や子供のゴブリンが沢山いた。それと4~5匹の雌だ。」
ドワーフ達の顔が曇る。
「そして、最奥には二十匹くらいの雄がいた。」
「要するにゴブリンの巣じゃな。」
「そうなるな。」
「最奥に雄が二十匹……ということは、警戒しているのはこっちではないようじゃの。」
「警戒しないといけない物が大穴の方にいると?」
「そういう事じゃな」
「多分、こっちの穴は、たまたま巣の拡張をして掘り進んでたら開いただけじゃろうて。」
「あと『大穴』らしい物も見つけた。『大穴』は横三メートル、縦二メートル程度だった。」
「名前の割にはちっちゃいのう?」
「名付けた人の時のは大きかったんじゃない?」
「なるほどのう」
「作戦はどうする?」
「どうするも何も、全滅じゃ。」
ドワーフ達は全員頷く。
「それはそうだが。」
「部屋の入り口に『消音魔法』を掛ければ音は逃げないはずなのじゃ。」
マインが人差し指を立てて提案したわ。 音を消す魔法とか、それも悪用できそうよね。
「では、お主らは入り口の見張りを頼むぞい。内部の殲滅はワシらがやる。見回りが来たら必ず仕留めるんじゃ。」
「分かったのじゃ。」
「あと…………内部は凄まじい臭いだ。臭いで気を失わないようにしろ。」
「…………」
ドワーフが無言で、アーズと同じバンダナをアタシ達に渡してきたわ。このバンダナってドワーフ産なんだ。道理で色彩に難があると思ったわ。
「火魔法も松明も厳禁じゃぞい。爆発でもしたらかなわんからのう。」
ドワーフ達の手には小さめの斧が握られていたわ。
―― side you ――
これは虐殺だ。
魔物とはいえ、無抵抗の女、子供、赤子の首を次々に落としていく。
ドワーフ達にとっては死活問題なのだろう。だから仕方ないんだ。だが俺は目を逸らさずには居られない。
洞窟の中に入った時に感じた悪臭も、今では匂わないくらいだ。 ゴブリンの血のせいか、他の要因か。
そうしてドワーフ達が戻ってくる。
「次にいくぞい。」
「瘴核は?」
「殲滅してから回収するぞい。数が多すぎるしのう。」
「分かった。」
他の小部屋も一度コツを掴んだら、あとは同じ作業だ。
部屋と言っても、タンスがあったりちゃぶ台があるわけじゃない。草のベッドの上に赤子のゴブリンが寝てたりするだけの、岩がむき出しの空洞だ。隠れる場所がある訳じゃない。
全滅させたら大方分かるだろう。
時間の感覚は無いが、全ての部屋を殲滅するのに一時間と掛からなかったと思う。
多分、百匹は倒しただろう。その倍は居たのかもしれない。オレは見てられなかったしな。
「あれが雄か。確かにちと数が多いのう。どうする?」
「『睡眠』の魔法で眠らせるのじゃ」
「それは何匹くらいいける?」
「あの間隔だと一度に五匹ずつじゃの。 あの離れた壁の華は――」
「不要だ、俺が弓でやる。」
座った状態のゴブリンが、寝息を立てだした。
寝だしたからと言って、起こそうとはしない他のゴブリン。まぁそうだよね。
そうして、壁の一匹以外寝てしまった。
アーズが弓を撃つ。壁の華に――
それを合図に、また殲滅作業が始まった。




