竜骨の谷 十一話 ドワーフ達の覚悟
―― side my ――
どっちに乗るかなんてどうでも良いじゃない。
アイルもトカゲを持っててね。マインとアイル、どっちにアタシが乗るかで揉め出したんだけど、めんどくさいから、ドワーフの誰かに乗せてもらおうと思ったら断られちゃった。
でも、ドワーフ達の様子が今までと違って凄い緊迫していて、今回はウイ兄も乗せてもらえなかった。
まぁそれだけドワーフ達にとっては一大事なんだね。
結局、マインとアイルがジャンケンで決めてたんだけど、エルフにもジャンケンがあるんだね。
その結果、アイルの後ろにアタシが、マインの後ろにウイ兄が乗ることになったわ。
アタシとしては、揺れない方に乗りたいんだけどね。アイルのトカゲもマインと同じ種類だし、砂漠じゃこれがメジャーなのかも?
それにしても水浴びくらいしたいなぁ。凄い埃っぽいんだよね。でもそんな事言える雰囲気じゃないんだよねぇ。
―― side us ――
俺は探索の魔法を掛けた。この魔法は自分を中心に探したい物の反応を得る魔法だ。但し無機物には適応できない。
この魔法の前提条件として、探す術者(今回は俺)がターゲットをある程度理解している必要がある。
勿論ターゲットは『魔物』だ。では『魔物』の反応とは何か? それは『瘴核』だ。
生きた魔物には『瘴核』と言われる『器官』がある。
これはゴブリンだけではなく、その他の魔物にも存在する器官だ。
『瘴核』は心臓の近くだったり、脳の内部だったりと、魔物の種類によって場所は異なる。
『瘴核』をサーチした結果、魔物には気付かれずに、先に発見できるという事だ。
「いたぞ」
オレはドワーフ達にゴブリンの存在を指差す。
数は二匹。武器は持ってないようだ。
魔物は成長が早い。これは殆どの場合は『理性が無く』『知性が低い』事を示している。このゴブリン達も『武器を持つ有利』を知らない固体だ。
ただしそれが『個体として弱い』事になるわけではない。裏を返せば『野生的』で『直感的』であると言えるからだ。
ゴブリン達は所構わず採掘する。これはドワーフを元とする魔物だからと考えられるが、当然素手で採掘を行うわけではない。
よってゴブリンに関して言えば、高確率である道具を持っている。それは『マトック』だ。本来採掘をする道具であるマトックは、十分武器として成立する。そしてマトックを作る技術があるという事は、武器を持つ個体も居るということだ。
相手は二匹、普通なら俺が弓で一匹を仕留め、残りをドワーフ達が蹴散らして終了。となるのだが、今回は少し違う。
なるべくドワーフ達がゴブリンを仕留めたいからだ。
ゴブリンはドワーフの魔物だ。だから見た目はドワーフと一緒だ。『普通の生き物』なら同種を殺すのに躊躇いがあって当然だ。
そして彼らは戦士ではなく商人だ。魔物だからと言って同族を手に掛けるにはそれなりの覚悟が必要なはずだ。
ドワーフ達は武器を持ち、鎧を着ている。そして五人いる。
相手は二人、素手で防具も身につけていない。まず負ける事は無いだろう。
だから、ドワーフ達の覚悟が決まるまで、俺達は待つことにした。




