竜骨の谷 十話 戦闘準備
―― side you ――
次の日。いや、太陽が無いから『次の日』なのかよく判らないんだけどね。
「良い白よな」
レヴィお婆ちゃんは、ご満悦のようだ。
オレの服の白と自分の服の白を見比べて満足したようだ。勿論、お婆ちゃんの服は部族の長らしい服装ではあるけれど。
でもなぁ。オレは岩だらけの場所、半分砂漠をトカゲに乗ってきたんだ。それなりに汚れてはいる。
それに比べてお婆ちゃんの服は洗いたて、綺麗で当然……マイの言う高貴な白には見えないな。ていうか、高貴な白ってどんなんだよ。
まぁ、本人が喜んでるならそれでいいんだけどね。
マインとアイルはもう仲が良くなったみたいだ。
部族は違うけど、従姉妹になるんだしな。
あの後『装備解除』の実演を5・6回交え、鎧の説明をして誤解を解いたわけだが、見世物の気分だったぜ。
まぁ説明行為自体が二人のトーンダウンにはなったが、なんでマイの為にオレが犠牲にならないといけないんだ。
今は二人で変わった体操をしている。他のエルフ達はそんな事はして無いようだが、なんでこの二人はそんな事をしてるんだろうか?
この二人は戦闘能力が高いということだし、もしかして魔力の潤滑が上がるとか、何か能力が向上するとかの効果があるんじゃないのか?
今の無力なオレを変えれるかもしれねぇ。教えて貰うか?
「おはよう、変わった体操だな。」
「あら、おはよう。ユウも一緒にどうなのじゃ?」
「まぁ、退屈だしやってみるかな。」
「ふふ、でわ教えてあげるのじゃ。」
とまぁ、オレは二人と一緒に『エルフ秘伝の戦闘能力向上体操』を始めたぜ。
なんだかオレの魔力とかいろんな能力がガンガン向上してる気分だ。
心臓の辺りに何か変化を感じるぜ。いや具体的に言えば、胸の辺りに魔力の流れを感じる気がする。これは毎日やるべきかもな。
―― side my ――
失敗だわ。
洗濯魔法を大魔法という設定にしたから、枚数を稼げないわ。
最初の一回で時間を掛けすぎたから、早く終わらせることも出来ないし。
部屋に誰も入れないから一人で退屈だし。時間は余るし。
でも、まぁ十着こなせたから、銀貨10枚と銅貨500枚分は貰えたわ。ぼろ儲けすぎだわ。
気分的には100着くらいやりたいけど、そんなにやると魔法の価値が下がるし、この位でいいのかもね。
そう考えると、失敗という訳でもないのかな?
あれ?ユウがあの二人と仲良くなってる。
体操なんかしてるわ。まぁ暇だし…………って、あの体操って……
もしかして……でも、そんな……エルフ達がそんな事を知ってるとは思えないし。
じゃぁユウが二人に教えてる? ユウはあんな体操どこで覚えたのかしら。アタシがしてるのを見られてた?
でもあの体操はアタシには全然効果が無かったし。あの二人にそんな体操は不要だと思うけど。でも、まぁ今のアタシには関係ないか。あんな眉唾な『ふわふわバストアップ体操』なんて。
ユウもやっぱりそういう事を気になりだしたのね。
無駄な努力なのは知ってるけれど、絶望は教えないほうがいいよね。未来は希望が満ちている方が良いもの。
だから陰ながら応援してあげるわ。
―― side we ――
「メシを食ったら出発するぞ。」
「ようやく出発か。」
「作戦はどうするんじゃ?」
「まずは、洞窟入り口周辺の調査だな。挟撃に遭わないように外の魔物から駆除する。」
「ふむ。探査系魔法を使えるものはアーズだけか?」
「外の探知だけなら俺だけで十分だろう。」
「先に入り口の見張りをやったほうがいいんじゃないか?」
「いや、見張りを片付けたあと、隠蔽スキルを使って内部を調査してみる。中の魔物に気づかれたくないから、見張りはギリギリにやろう。」
「ま、その辺は任せるぞい。」
「確認しておくが、マインとアイルはどう戦うんだ?」
「ワッチは、風と火の魔法なのじゃ。」
「アチキは、風と水の魔法なのじゃ。」
「ふむ、洞窟内部では火魔法は厳禁じゃぞ。」
「分かっておる。その辺は状況で判断するのじゃ。」
「という事は、土魔法はドワーフ頼みだな。」
「うむ、任せておけ。」
「それとじゃ、外にいる少数はワシらだけでやらせて貰えんじゃろか?」
「何故なのじゃ?」
「魔物とはいえ、ドワーフの成れの果て、ワシらも覚悟をせんとのう。」
「ワシらは戦士じゃねえ。商人じゃからな。」
「わかったのじゃ。小数なら手はださないのじゃ。」
「ところでマイの剣はどうしたんだ?パラチョコ剣」
「宿に置いてきたわよ?」
「…………どうして?」
「でっかいし、邪魔だし、どうせ使えないし、トカゲも乗れないじゃない。」
「…………確かにそうかもな」
「どうせ戦う時は魔法だしね。」
「マイ様は何属性の魔法を使うのじゃ?」
「ふふふ、全属性かな?」
「そうなのか…………」
「どうかしたのか?」
「使える属性の数が多いと、その分、威力や魔力効率が悪いと言われとるんじゃ。」
「ま、個人差があるしのう、気にしても仕方あるまい。」
「そんな弊害があるのか。残念だったなマイ。」
「魔法が使えないあんたに言われたく無いわよ!」
「ふふん、オレももうすぐ魔法が使えるようになると思うぜ。」




