竜骨の谷 九話 二人の共通点
―― side you ――
マイは一人で部屋に篭っちまった。性質の悪い鶴の恩返しかよ。
洗濯一着二十秒と掛からないはずだが。
「やっと来たかえ」
「母上様、何用なのじゃ?」
また似たようなのが来たな。デジャブーかと思ったぜ。
黒い肌。黒い髪。金の瞳。やっぱりピアスはしていない。
「この者達に同行し、魔物を駆除してまいれ。」
「分かったのじゃ」
「こちに来い。」
レヴィ婆ちゃんの隣に座ると、オレ達を見渡す黒エルフ。
レヴィ婆ちゃんは黒エルフに、ピアスを付け出した。でも先に穴をちゃんと針のようなもので開けてるな……。血も出てない。
やっぱり、右に三個、左に三個。
そして優しく囁いた。
「お主の名は『アイル』。今日からはそう名乗れ。」
「分かったのじゃ」
どうやら『ビシっっっっ!!』っと鳴りそうな決めポーズは不要なようだな。
「一着目が出来ましたわ。試着してくださいな。」
あぁ詐欺師マイが部屋から出てきた。変な予感しかしない。
―― side my ――
アタシと目が合う黒エルフ。この黒エルフは誰? お客様?
その時、またもや迂闊にもアタシの時間が止まってしまったわ。
これは、魂の共鳴? 魂の繋がり? 解らない。でも……この感情はまた?!
彼女の顔色は分からない。真っ黒だしね。でもきっとこの娘も一緒なんだ。目が潤んできてる。
勿論、一目惚れなんかじゃない。だって私には彼女も他の黒エルフも見分けが付かない。アタシはノンケなはずなのよ。
何なのよ、この感覚は? また魂がトラブルを起こしたんじゃないかしら?
―― side you ――
あぁまたマイがメンチ切ってるよ。せめて目つきを改善しろよな。
「やはり、そうなるのかえ……」
なんか一人納得しながらも顔を横に振るレヴィ婆ちゃん。この状況の何処に納得する要素があるんだ?
「何がですか?」アーズさん、その疑問は尤もだぜ。
「いや、こちらのことよ。」
「?」
レヴィ婆ちゃんは、哀れむような目でマインを見てる。見え隠れする三角関係に哀れんでるのかねぇ。
「マイ、あんまり睨むとアイルちゃんに悪いよ。それにマインちゃんもびっくりしてるよ。」
マインの背中を押してマイの傍に送るウイ。燃える炎に油を投入かよ。よくやるぜ。
「母上様。アチキはこのお方の元へ嫁ぎたく思うのじゃ。」
「…………相分かった。好きなようにせい。」
マイ、モテモテだな。
レヴィ婆ちゃんはなんか顔が諦めムードだな。
「ふむ、試着とな。どのような出来栄えかえ。」
レヴィ婆ちゃんは立ち上がると、ニコニコしながら部屋に入っていった。感情の起伏が激しい人なのか?
訳の分からん状況だが、オレには関係無さそうだし、高みの見物といきますか。
―― side my ――
「母上様。アチキはこのお方の元へ嫁ぎたく思うのじゃ。」
「…………相分かった。好きなようにせい。」
アタシの思いとは関係なしに状況が変化してるわ。
なんでドイツもコイツも目が合っただけで求婚してくるの? 頭おかしいんじゃない?
で、アタシが拒否しても付いてくるんでしょ? 分かってるわ。
女ばっかりの集落だから男ならなんでもいいのかしら?
ウイ兄は……あの顔で、女物のエルフの皮鎧とか……男には見えないわね。
この状況は由々しき事態よね。
でも、大口顧客の娘さんを無下にはできないわ。どうすればいいの?
「ワッチはマインなのじゃ。マイ様の妻なのじゃ。」アタシの腕に巻き付く白エルフ・マイン。
「アチキはアイルなのじゃ。マイ様の正妻なのじゃ。」反対の腕に巻き付く黒エルフ・アイル。
アタシはこの時、気がついてしまったわ。
この二人が他のエルフ達と違う事に…………。そう、そういう事だったのね。
この二人は胸がやたら大きいのよ。
他のエルフ達はスレンダーな体型なのに、この二人の胸は大きいのよ。
まぁ、それに気がついたから、どうした?ってことなんだけどね。
乙女魂の持ち主であるアタシには効果ないってことだけは確かね。
「ワッチは、もうマイ様に全部触られたのじゃ!」
「な!ならばマイ様は今宵、アチキと寝所を共にするのじゃ!」
「ワッチと寝所を共にするのじゃ!」
あれ、話が凄い飛躍してる気がする。それに全部は触ってないからね。腰にしがみついてただけだし。
「アタシは一人で寝るから!」
ユウの顔が笑ってる。あいつ高みの見物を決め込むつもりだわ。
「ユウ!笑ってないでなんとかしなさいよ!」
高みの見物などさせてなるもの……
しまった!今ユウが下衆な笑いを浮かべやがった!
モジモジしてスカートを捲りながら近寄ってくるユウ。
今、それはしたらだめ!!
「マイお兄様、装備解除をお願いいたします。」
「「!!」」
「ワッチも!」「アチキも!」「「装備解除をお願いするのじゃ!」」
「三人でスカートを捲って近寄らないで!」
ドワーフ達の視線が死ぬほど刺さったわ。




