竜骨の谷 八話 洗濯詐欺
―― side my ――
「ところでな、ワラワの服も白くして貰えんかえ?」
ユウの服が気になってたのは分かってたけど、話を強引に変えてまでする話題かな……。
でも、これはビジネスチャンスかも知れないわね。乗るしかない!この大規模商談に!
一族全員の服を白くするなんて一大事業よ。
白エルフ族を名乗ってるくせに、薄茶色の服を着ているというコンプレックスを旨く刺激して、どうにか全員の服を白くさせるように持って行きたいわね。
モルッタの時は一着銅貨二枚だったけど、一族の長なんですもの、きっと溜め込んでるに違いないわ。銅貨五枚……いいえ十枚はぼった……払って貰えるはずよ。
しまったわね。こんなビジネスチャンスが転がってくるならドワーフ達と口裏を合わせておくんだったわ。
それにもっと長ったらしくてそれっぽい詠唱を考えておくべきだったわ。その方が凄い感が増してもっとぼっ……増額が見込めるものね。
「レヴィ様、もう少し詳しくお話をお聞きしたいのですが。」
アーズが余計な事を言い出したわね。そんな事どうでもいいいじゃない。
でも、まって。ここで慌てて『アタシの魔法で白くしたんです』なんて言ったら足元を見られかねないわ。
「もう知っとる事は話したぞえ。」
そうよ、大体の事は解ったじゃない。
「結界石の大きさの目安などは?」
そんなの適当でいいじゃない。
「分からんの。結界術士の技量や、結界石の純度、『大穴の繋ぎ目』の大きさにもよろう。結界も周辺に被害が少なければ良いだけの物。完成度の高い物は必要あるまいて。まずは現地に行って調べることよな。大穴にいる魔物の殲滅も時間が掛かろう。」
「確かに……」
もうめんどくさいから、そのまま空間魔法とかで壊しちゃえばいいのに。人一人の犠牲で済むじゃない。
「それに空間の穴が広がれば出てくる魔物も強大になろう。早めにしたほうが良いぞえ。」
「こりゃあ一刻も早く行った方が良いようじゃな。」
ちょ、洗濯する時間くらい与えなさいよ。
「まぁそう急くでない。リザドも疲れておるじゃろう。一眠りしてからでも良かろうて。」
ふふ、急ぐドワーフ達を宥めてくれたわ。
「で、お主はどうやって服を白くしたんじゃ?見るにワラワ達と同じ布のようじゃが。」
ふふん、ユウに言っても無意味よ。アタシの魔法なんだから! それにしても、よっぽど気になるようね。
え~と、銅貨十枚っていくらくらいだっけ?百円かな?あれ安すぎる? クリーニングってワイシャツ一着三百円くらいだっけ? じゃ銅貨三十枚くらいか。
「オレの魔法じゃねぇよ。マイの魔法だぜ。」
ユウのバカ、もっと凄い事の様に言いなさいよ。『大賢者マイ様の大魔法』とか言えば、箔がついて料金もガッポガッポと――
「マイとはその黒エルフ族かえ?」
「ワッチはマインなのじゃ。マイ様はこのお方なのじゃ。」
偉いはマイン。よくぞ『様』を付けたわ。
「ワッチの旦那様なのじゃ」
それは違うわ。いいお友達でいましょう。
「只今ご紹介に預かりました。大賢者マイですわ。」
「賢者なのかえ?」
「大賢者ですわ」
「そ、そうかえ。してワラワの服を白くして貰えんかえ?」
「勿論できますわ。」
「ど、どうすればよい?」
「清らかな白色を生み出す大魔法には入念な準備と時間が必要ですわ。それに機密性の高い高度でハイランクな魔法なので、術式中はアタシ一人にして貰いたいですわ。」
「ふむふむ、了承した。」
ふふ、かなり信じてるわね。
「魔法には、一回、銀貨一枚使いますわ。」
「な!触媒に銀貨を使うのかえ?」
ふむ、ショクバイって言うんだ。
「そうですわ。ショクバイは必須ですわ。清らかな白色は魔を滅する銀が必要ですわ。それに白色にはそれだけの価値があるのですわ。」
「うむうむ、確かにそうよな。」
『白色には価値がある』って言えば押し切れそうね。
「あと代金は『得上』が銅貨五十枚、『上』が銅貨三十枚、『並』が銅貨十枚ですわ。」
「それは、どう違うのかえ?」
「使う魔力の量が全然違いますわ。『並』は少し茶色が残りますわ。『上』はユウの服くらいですわ。『得上』はもっと高貴で良い感じの白色になりますわ。」
ユウの服をジロジロ見てるわね。ユウの奴め、そこでクルリと一回転して可愛くポーズの一つでもしなさいよね。
「と『得上』で頼む。」
「分かりましたわ。では一着銅貨五十枚になりますわ。」
目の前に自分の求める物以上があるなら、それを望むわよね。
族長チョロすぎだわ。
「では、白くしたい服や布を持って来てくださいな。あと空き部屋をお借りしたいですわね。」
「そこの部屋を使ってくれて構わん。」
これで一着、銀貨一枚と銅貨五十枚の儲けになるわね。何着でも持ってきなさい!
「術式中は集中したいので、絶対中を覗かないでくださいな。失敗したら銀貨が無駄になりますわ。」
「うむ、了承した。」
―― side you ――
やっぱりマイの言葉には真実が一つも無いな。




