竜骨の谷 七話 大穴の正しい閉じ方
―― side you ――
黒エルフ族の村から、白エルフ族の村へは、大きな谷を4つ越えた先だった。
岩場の移動はトカゲでもそれなりの時間が掛かった。
遠くからでも見える『龍の骨』が目印とはいえ、その巨大さが遠近感を狂わせたようだ。
とりあえず、目指すはその『頭の骨』らしい。
そして見慣れた光景が展開される。黄金色に波打つ田園風景。しかし、そこに居たのは真っ黒なエルフ。
黒い髪、黒い肌、金色に光る瞳。黒い肌が瞳を一際目立たせる。
長い黒い髪は、日本人の黒髪よりも深い漆黒に見える。
長い耳にはやっぱりピアスをしているな。赤・黄・青・緑・紫・桃・白と、色んな色の宝石がついてはいるが、黒はないようだな。
服はやっぱりオレの着ている物と一緒だ。ただ、白というより黄土色、枯れた草色と言った感じか。ただ清潔感はあり汚れていないようだ。
「黒エルフ族のアーズだ! レヴィ様にお会いしたい!」
ここでのアーズは黒エルフ族になるようだな。親戚なはずなのに他人行儀なことだ。
黒いエルフは『コクっ』と頷いただけで、農作業の続きに戻った。
結局のところ、色が白いか黒いかの違いがあるだけで、黒エルフ族も白エルフ族も違いはないように見える。
そして、長い龍骨の横を頭の方へ向かって進むと、マイ達が待っていた。
―― side my ――
マインのトカゲ捌きは酷いものだったわ。
谷を渡る時は落ちはしないものの、壁をペタペタと歩くからずっとしがみ付かないといけないし。
だからずっとマインの細いお腹にしがみ付いてないといけなかったんだけど、そのせいかマインの様子が一層おかしくなった。なんか凄いモジモジしてる。
「そこはだめなのじゃ」とか「順番が」とか「でも夫婦じゃしの」とか…………勿論アタシにそんなつもりは一切ないわ。落ちない為に必死だったのよ。
でも、ドワーフのトカゲの時程しんどくないのよね。慣れたのかな?
まぁ悪い娘ではないし友達としてなら悪くないわね。特にトカゲが可愛いわ。
黒いエルフを見たときは、ちょっとビックリしたけど、白いエルフと敵対してるとかは無さそうね。
まぁ族長同士が仲良し姉妹なら、いがみ合う訳が無いか。
黄金色の波の中に黒い人影がいると目立つわ。服の色は稲穂の色と似てるけど、形は向こうと一緒ね。色的に見てユウの服はこっちの物かな。
それにしても、本当に見分けが付かないのよね。
黒いエルフ同士もそうだけど、色が違うだけでマインともそう違わない。双子の姉妹の一族だからってこんなにも似るものかしら?
少ししたらユウ達がやってきたわ。
合流して、族長の家に向かう事になったわ。
―― side you ――
オレはトカゲから降りる。……降ろして貰う。
「レヴィ様! 黒エルフ族のアーズです! ご相談があって参りました。」
コレでもかと言う大声でアーズが叫ぶ。
すると二階くらいの高さから飛び降りる黒い影があった。
「トォゥっ!」
スタっ。っと綺麗な着地を披露する。やっぱりお腹が大きいが、そんな所から飛び降りて大丈夫な物なのか?
黒い髪、黒い肌、金色に光る瞳。首の喉には、五角形の白い痣がある。白い痣って変じゃないか?
「アーグと言えば、ムーチョの孫だったかえ?」
「アーズです。ご無沙汰しております。」
『ムーチョ』ってもしかして、アーズのお婆ちゃんの名前か? 愛称か……流石に名前だと変だよな。
「で、相談事とは何か? 桃色の猿耳には興味は………いやお主、お主の服なぜ白い?」
は? お主ってオレか? 目がオレ………っていうかオレの服をガン見してるな。
「お主じゃ、桃猿。」
桃猿って………
「オレの服は魔法で白くなったんだ。」
「ほほう、魔法で……実に興味深い事よ。」
なんだ、この食いつき。白い服がそんなにいいか?
「そんな事より、レヴィ様、大穴が開いたのです。」
「……ほう。何処にか?」
レヴィの目が細くなる。が、視線はオレの服に釘付けだ。
「『黒エルフ族』の集落の近くです。なので『白エルフ族』から応援を出して貰いたいのです。」
なんか『白エルフ族』のボリュームが小さかったような。確かに、こっちの方が黒エルフ族っぽいしな。自信が無かったんだろう。
「ふむ……立ち話も疲れよう、中に入れ。」
やっぱりドラゴンの頭の骨の中に家があるんだ……。
―― side we ――
「そっちの白いエルフは、ムーチョの娘よの? ムーチョは元気か?」
「ワッチの名はマインなのじゃ。お母様は元気なのじゃ。」
「ほう、名持ちか」
「付けて頂いたばかりなのじゃ。」
「ふむふむ。では成人したてか?」
「そうなのじゃ。」
「そうかそうか」
「レヴィ様、大穴の件を先に。」
「そうよな。確かに大穴は大事じゃな。で敵はゴブリンかえ?」
「はい、そうです。」
「やはりそうか、ドワーフが雁首揃えるわけよの。で兵を貸せと?」
「はい、大穴を放置していると、この辺りにも害になるでしょう。」
「そうよな。ほんに面倒なことよな。しかし知っての通り我一族も黒と同様で戦闘が得意な者は限られてての。しばし待て。」
目を瞑るレヴィ。
「あと、『大穴の閉じ方』をご存知ないかと。」
「ふむ、『大穴の閉じ方』か。確か魔法使いのフーリューが知っていたような?」
「大賢者フーリューは千年以上前のお方です。」
「死んだのかえ?」
「恐らくは」
「ふむ、閉じ方か。 確か安全な手順は、土魔法で強固な壁を作った場所を、結界石と結界魔法で覆い、空間魔法で空間の断絶……たっだよな?」
「……それはレヴィ様は出来ますか?」
「出来るならフーリューの名など出さん。」
「確かに……」
「結界石は内と外で計4つは必要よな。」
「結界魔法と空間魔法、両方使うのですか?」
「そうよな。大穴とは『別の空間が繋がった状態』でな、『大穴を閉じる』とは、その『繋ぎ目』を空間魔法で断絶する事よ。まぁ切り離してしまうだけならそれで十分と言えるのぅ。」
「では、結界魔法は?」
「何も理解しとらんようよな。はぁ……」
レヴィは深いため息を一つ。
「空間を断絶する時には大なり小なりの衝撃があるのよ。結界はその衝撃を抑える為の物よ。結界が無ければ確実に術者は衝撃に巻き込まれよう。」
「な、なるほど。」
「土魔法で壁を作るのも同様よ。空間魔法の衝撃を押さえるための物でしかない。あらかじめ衝撃があることが分かっておるのなら、クッッションを置いておけばよい。別に壁を作る事自体が目的ではない。」
「全ては空間魔法の衝撃への対策ということですか。」
「そうよな。」
「では、結界石の作り方は………」
「錬金術で作る事意外は知らん………背信者共が得意だったのではないか?生き残りが居るなら知ってよう。」
「背信者?」
「ワラワ達と母上を森から追い出した森エルフ共よ。」
「………」
「ワラワをダークエルフと罵り村から追い出したその挙句に自らが闇に落ちるとは、救いようの無い哀れな奴等よ………。まぁ昔話よのぅ」深いため息を付く。
「話を戻そう。結界石は小さすぎると衝撃に耐えれんかもしれんし、穴が大きいとそれなりの大きさが必要になる。準備するなら大きい物を準備せい。」
「わかりました、出きるだけ大きい物を用意するようにします。」
「うむ。………………ところでな」――――




