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竜骨の谷 五話 黒エルフ族のご馳走

―― side you ――


 お膳に運ばれてきた『メシ』には四つの御碗と一皿の料理が載ってた。

 いや、期待はしていなかったが、はっきり言ってショボイ。


 一つは多分、普通の水。いや白湯さゆかな。これはままぁ仕方ない。アーズの宿でも銭貨1枚っていうくらいだしな。囲炉裏にヤカンがあるし御代わりは出来そう。

 一つはお粥っぽいもの。これはマイが注文してたしな。オレ的には固形がよかったぜ。

 一つは山菜っぽい何か。これもフェリーフさんが好きだって言ってたしな。エルフの好物なのかもしれない。この周辺には生えてなさそうだし、森から採って来てるのかもな。

 一皿は焼き魚一尾。多分、渓谷の川で獲れるものだろう。


 そして最後のこれはなんだ? 黒い塊は? ちょっと黒光りしていて、あんまり美味しそうに見えない。


「頂きます。」

 ウイが食べるようだ。

 あれ?いきなり手づかみで黒い塊を食べたけど、なんとも無さそう……か? しかし最初にソレに手をつけるとは勇者だな。


 よしオレも。

「頂きます。」

 黒い塊をそのまま手で食べる。うーん、特別まずいわけではないが。バリボリというか、パリパリというか、シャリシャリというか、歯ざわりが微妙だな。油で揚げているのかな?

 お婆ちゃんがコッチを見て、やたら喜んでやがる。

 歯に詰まるぜ。水で流し込むことにするか。もしかしてドワーフが逃げたのはコレか?

 なんか食べてはいけない物のような気がしてきたぞ。どうするべきか。残りは回避したい。


 仕方があるまい。とりあえずは山菜とお粥に逃げよう。


 ていうか、黒い塊にはアーズも手を付けてないじゃないか。やっぱりそういう物なのか?

 顔を見ると目を逸らされた。


 いや、ウイは完食かよ!流石は長兄……なのか?






―― side my ――


 お粥だわ。

 やっとお腹に優しい物が食べれるのね。


 アタシは密かに作っておいた『箸』を収納から取り出す。と言っても真っ直ぐな小さな木の枝を2本用意しただけなんだけどね。


「頂きます。」


 塩味が少しだけ効いてるわ。うん、優しい味。嫌いじゃないわね。

 でも、お米じゃない。多分あの稲穂の実なんだろうけど、麦か何かかな? 麦なんて粒で食べたこと無いから判らないわ。


 この黒い団子は……食べないほうが良さそうね。危険な香りがぷんぷんするわ。

 ユウが2つ目に手を伸ばさないのが証左よ。


「マイ様、どうぞなのじゃ」

 ずっと隣にいる白エルフがアタシに黒団子を喰わせようとしてきたわ。それはもう『あ~ん』と言わんばかりに。

 それは放置したいのに。どうやったら回避できるのかしら。


「アタシはお腹の調子が悪いので、お粥をもう一杯もらえるとありがたいのだけど。」


「あら、それは大変なのじゃ。御代わりをお持ちするのじゃ。」

 すると、持っていた黒団子をパクリと食べてしまった。

 あれ?危険な物じゃなかった?


 いや、ユウが目を見開いて白エルフを見ているわ。むしろトラップ? これがハニートラップってやつ?


 白エルフは立ち上がって、多分台所に向かったわ。

 今頃台所で吐き出しているのかもしれないわね。


 げ、お婆ちゃんがアタシを睨んでる。やっぱり黒団子を拒否したせいかしら。


 確かに出された料理を残すのも悪いしね。どうにか回避……


 ウイ兄が全部食べてる?ここは任せるしかない!


「ウイ兄、アタシはお腹の調子が悪いから、この団子をあげるわ。」

「え?いいの? なんか悪いね。」


「ウイ、オレの分も……」


 ユウ! お婆ちゃんの目が凄い見開いたわ! それ以上はだめだって! アタシがアイコンタクトで教えるしかないわね。



「この団子の材料はなんですか?」

 ウイ兄が何気なく聞いたわ。完食した者……勝者の余裕を感じるわ。


「稲を食う魔物を潰したものじゃな。旨かろう。」


「中々の美味ですね。」


「ちゃんと瘴核しょうかくは取り除いておるから安心せい。」


 え?美味しいの? でも、魔物を潰した団子よね? 魔物って食べれるんだ。郷土料理ってやつかしら。


 ユウが口を手で押さえてるわ。やっぱり不味いのよね? しかも凄い汗。


 ちょっと味に興味があるけれど、今それを口にすると後戻りできないかもしれない。


 とりあえず、焼き魚?いいえ山菜? 山菜にしよう。






―― side us ――


 この場所に来た理由、一つは援軍。爺様に来てもらえたら良かったのだが身重の時期では流石に無理だろう。

 そしてもう一つ、今回の最終目標の情報を聞かなければならない。むしろそれ以外はどうでもいいだろう。


「ところで、爺様は『大穴の閉じ方』をご存知ですか?」

「『大穴の閉じ方』とは、『境界の壁』に開いた穴の事かの?」


「『境界の壁』?」

「うむ、ドワーフ共は『魔物の巣』と呼んでおったか。その『巣の壁』に穴を開けると何処ぞかに繋がるそうじゃ。ただ、どこに繋がるかは判らんがの。」

「『魔物の巣』は『大穴』とは別の場所……別の空間にあるというわけですか?」

「そう考えられておるのう。『世界の裏側』に繋がっとると言う者もいるがの。ゴブリンがいるなら『魔物の巣』かのう。行ってみんと分からん。穴の閉じ方は、土魔法で硬い壁を作った後に、結界魔法か空間魔法で塞ぐと聞いたのう。」


「結界魔法か空間魔法ですか…………。」

「そうじゃ。どちらも特異な魔法よな。」

「土魔法はドワーフ達に任せるとして、結界魔法を使える者がいるかどうか……結界石ではダメなのですか?」


 結界石は、『世界樹の宿』の周りにある『黒い岩』の事だ。錬金術で作れるらしいが詳細は知らない。魔物が近寄らなくなる効果がある……らしい。というのも、そもそも森周辺には魔物が居ないから確かめようがないからだ。


「ダメじゃて。『魔物の巣』の壊れた『境界の壁』を修復するのが目的じゃしのう。結界石だけでは修復したことにはならん。やり方によっては一時凌ぎにはなるかもしれんが……。結界石は触媒にするかもしれんが、その辺はワラワも良く解らん…………レヴィにも結界魔法か空間魔法を使える者が居ないか聞いてみるがよい。まぁおらんじゃろうがな。」

 レヴィとは()様の双子の()()、黒いエルフだ。俺の大叔母に当たる。


「はい。そうしてみます。」


「倒した魔物の瘴核は、ちゃんと始末せいよ。」

「分かっております。」



 よし、これ以上の情報は聞けまい。よってこれ以上の長居は無用、早めに大叔母様に会いにいくか。

 一刻も急がねば!




「で、アーグ…………団子は食わんのかえ?」

「……アーズです。」


「食わんのかえ?」

「……」


「マイ様、お粥の御代わりをお持ちしたのじゃ。」

「もう少し、ゆるりとしていけば良いじゃろ。」

「はい……」


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