竜骨の谷 二話 ドワーフとゴブリン
―― side you ――
「やっぱりいるな。」
オレ達は『大穴』の前についた。といってもまだ100メートル以上は先だ。
谷の底、川の近くに『大穴』の入り口があった。
『大穴』なんて名前だから、何十メートルもある大きな穴なのかと思ったが、精々幅2メートルくらいの洞窟だった。
洞窟の入り口の両横には、石が積んである。その石は周りの石より濡れてる感じがするな。なんで濡れてるかは考えないでおこう。ただ触りたいとは思わない。
しかし、そんな細かい事はどうでもいいんだ。
そこには三人の人影があった。察するにアレが『ゴブリン』なんだろう。
ただオレはその『ゴブリン』の姿に、沸き起こった疑問を聞かずにはいられなかった。
肌は薄汚れた緑色、髪も髭も生えてはいない。だがその頭の大きさや体格がソレに酷似していたんだ。
「も、もしかして『ゴブリン』って『ドワーフ』の魔物なのか?」
「……そうじゃ、アヤツらは『ドワーフ』の成れの果てじゃ。」
「じゃから、ワシらは彼奴らを生かしてはおけんのじゃ。」
「じゃが、知らんかった嬢ちゃんにそう見えるって事は、間違いなくゴブリンの巣じゃな。」
コクっと頷くドワーフ達。
通りでドワーフ達がピリピリしてたわけだ。
ドワーフの女性をゴブリンが襲えば、魔種なんて関係なく魔物…ゴブリンが生まれる事になる。ドワーフにとっては看過出来ない問題なわけだ。
「で、どうする? 見張りがいるって事は、それなりに頭の良い奴が居るってことじゃぞ。」
魔物は知性が低いんだっけ? それが見張りをしてるということは、司令塔がいるってことかな。
「俺が内部を調査してみるか? それとも白と黒のエルフに協力を仰ぐか?」
「あやつらに協力を仰ぐのも気が引けるが、あやつらも無関係とはいくまいしな。」
「内部がどのくらい広いかが気になるがのう……」
「不死者がいないか心配じゃのう」
「確かに不死者がいたら俺じゃ調査できないな。」
「武器は持っとらんようじゃな。」
「中のは持っとるかもしれん。」
「なんで、こんな場所に大穴なんぞ……」
なんか、ドワーフ達が浮き足立ってきたな。
見てるこっちが不安になるから、とりあえず回避策を提案してみる。
「とりあえず、仲間を増やすほうが良いんじゃないか?」
「ふむ、やはりそうじゃの。当初の作戦通り、エルフに協力を仰ぐか。」
え? 作戦なんて何時立ててたんだ? あの時の軽い話し合いか? ま、まぁいいか。
「まずは白エルフの方から行くかの。」
はぁ、また移動か。
それにしても、マイの奴、妙に静かだな。
―― side my ――
ドワーフ族にも色々あって大変なのね。
ていうか種族内の内輪揉めなら、アタシ達は関わらないほうがいいような?
しかしユウの奴、よくこんな遠くから、そんな者が見えるわね。視力5.0くらいあるんじゃない?
ぁあぁそんなことより、お腹の調子がまだ悪いのよね。お腹に優しい食べ物が食べたいわ。それに肉は飽きたわ。
ぁあぁまた移動なんだ。トカゲって普通に走ってる分にはいいんだけど、突然の上下の揺れがねぇ……もうちょっと平地を行けないものかしら。
自動車も自分で運転したら酔わないって言うし、自分のトカゲを……あぁペットとか面倒で無理だわ。
景色は岩ばっかりだしなぁ。
あ、山がかなり近くなってるわね。ふふ、なんだか面白い形の山ね。
あれ? 山の麓に田んぼがあるわ。
黄金色で遠くからは判りにくかったけど、風が穂を走ってる。岩しかなかったから動く物を目で追ってしまうわね。
別に田舎に住んでた訳じゃないけど、田んぼ独特の匂いって何故か懐かしいのよね。
あっと、第一村人発見。
ふむふむ、アレが噂の白いエルフね。
お米があるなら、お粥でも作ってくれないかしら。
まだ遠いのにエルフがこっちに気がついたわ。
横に伸びた長い耳は、伊達じゃないって訳ね。間違いなくエルフね。
すごい綺麗な人。透き通るような白い肌に、真珠のように白く長い髪。そして深い黄金色の瞳。
こんな田舎でもピアスをしてるなんて、おしゃれさんなのね。
そういえばフェリーフも耳飾をしてたっけ。
でも服が似合ってない!
真っ黒のワンピースにドロワって、ユウの服とまったく一緒。そのまま黒く染めただけじゃない。
逆か、ユウがこのエルフ達の服を着てるのか。
そして……まったくの無表情。
「アーズだ! 婆様に合いに来た!」
白いエルフは『コクっ』と頷いただけで、農作業の続きに戻っちゃった。
農作業するなら、髪くらい纏めればいいのに。
「行こう」
とりあえず、もう少しで到着なのね。
どうにかして、お粥にありつきたいわね。せめて炭水化物が食べたいわ。




