草原の宿 二十二話 ドワーフの武器屋
―― side you ――
魔種ってなんだ?
なんでオレは女になっちまったんだ?
魔物とそうでない者ってどうやって見分けるんだ?
そもそもオレが子供を産むのか? そこまでの実感がないな。
魔物と会う前に怖くなるぜ! もう頭が混乱だぜ!
いや弱音は吐いてられねぇ。とりあえず全部忘れて準備だ準備。
「準備って他に何がいるんだ?」
旅の準備って、遠足とかしかないよなぁ。
「うーん、バックパック・食料・水筒・松明・後は武器になりそうなもの?」
ウイが指を折りながら口ずさむ。
「ユウのその恰好だと、マントがあったほうが良いさね。」
モルッタが変な物を提案してきた。マントって恰好つけのアイテムだろ?恰好いいと思えないけどな。
「マントって必要なのか?」
「勿論さね。寝るときの寝袋。雨が降った時の雨具。休憩するときの敷物。旅じゃあるとないとじゃ大違いさね。」
そういう使い方なのか……。実用アイテムだとは。
肩こりが酷い人が、肩を冷やさないために着けるとか聞いたことがあるけど。
「武器とマントか……オレに合いそうなのあるかな?」
「ユウだと、普通の革のマントだと重いかもねぇ。軽いのを探してみるよ。武器は何が使えるんだ?」
「分かんねぇ。」
「弓は使えねぇのかい?」
「触ったこともねぇな。」
「うーん、その腕の細さだと、精々ダガーくらいか。」
自分の細い腕を見る。オレの筋肉どこ行った……。
「一回持たせてくれないか?」
「勿論さね」
「ついでにボクのもヨロシクお願いします。」
「アタシもマントにちょっと興味あるかな。」
「あいよ。二階に来な。」
城の二階に武器屋があった。
ただ、そこはこの城で一番広いであろう部屋。
勇者が王様に最初に会いに来る部屋。『謁見の間』だった。
広い謁見の間には、所狭しと武器やら防具やら並べられてる。
「あそこって王様が座る場所だよね。」
王様が座るであろう椅子には、見事な鎧が飾られており、兜の上には王冠が乗せられている。
「隣の王妃様の椅子にも……」
王妃様の椅子の鎧兜の上には、ティアラが乗せられていた。
「あと大臣ぽいのもいるね……鎖帷子ってやつかな……」
流石にメイド服はないようだ。武器屋だしな。いや謁見の間だからか?
「モルッタここは?」
「鍛冶が得意な兄貴が作った、武器と鎧を売ってる場所さね。まぁ客は殆ど来ないから倉庫みたいなもんさね。」
「倉庫ね……」
「マントは、カラフルでおしゃれな物より、革製の頑丈なのをオススメするよ。合いそうなのを選びな。」
「あぁ……アタシは地味な革のマントでいいかな……(おしゃれって……)」
「ボクも同じのを使うよ。あとカバンを見ようかな。」
「ダガーは、そこの棚に纏めてあるよ。それ以上軽い武器はクセの強い物になるさね。」
「これは恰好いいけど……重いな。こっちの短いので……まだ重いな。1番小さいので……これくらいならいけるかな。」
「それは、作業用の片刃のナイフさね。」
「え……作業用って?」
「木を削ったり、料理したりするナイフさね。武器として使うとすぐに壊れるかもね。」
「そ、そうなんだ。」
「せめてコレくらいさね。」
「…これなら、ギリギリいけるかな…」
刃渡り20㎝くらいかな。余計な装飾は全然無い。すごいシンプルな物だな。それでも振り回すというより、振り回される感じだ。
「まぁユウは使わないようにする方がいいね。」
「そ、そうかもな……」
「これは、銀の武器なのか?」
魔物は銀の武器に弱いって話だからな。
「いんや。鉄製さね。でもゴブリン相手なら脆い銀武器より、硬い鉄武器の方がいいんさね。」
ふむ。魔物によるのか……。
「それに、銀武器は値段が跳ね上がって、とてもじゃないがこんな場所に放置できないさね。」
確かに銀は高価って言ってたな。 しらっと放置って言ってるし。
「あとコレは剣に着いた血を拭くロープさね。」
「剣を拭く?」
「剣に血や油がついたままだと、切れ味が落ちたり、さび付いたりするさね。まぁ簡易なメンテナンスの道具さね。」
モルッタがやり方を実演してくれる。時代劇で侍が刀を納刀する前に、紙で血を拭くやつかな。
「マントはコレがいいさね。薄くて丈夫な革を使ってるよ。お尻の部分だけは分厚く二重になって、破れないようになってるさね。防水魔法も掛かってるから雨に濡れても平気さね。」
「あぁありがとう(ちょっと重いな)」
とりあえず、装備はこんなもんで良いかな……。
あぁ難関の『銀のパンツ』があったんだった……『装備解除』頑張ろう……その前に便所だな。
「ボクはこの剣がいいかな。」
ブンブン振り回してるウイが羨ましいぜ。
―― side my ――
あのマントの趣味は無いわ。
あれがドワーフにはおしゃれに見えてるのかな。
アタシに茶色の革の物を選ばせるなんて。
白と黒の横ストライプとか、囚人か!
緑のマントに、赤いフードに黄色の水玉って、お花をイメージしてるのかな?
黒と赤と緑でスイカですか?夏限定品ですか?夏にマントってどうなの?
とりあえず、色彩センスは皆無ね。
武器はパラチョコがあるし、基本的に魔法で戦うからいらないわね。
あとは鎧よね。でも魔法少女って鎧を着ないよね。
でも、ローブとか意味が解らないし、マントと被るわよね。
あれ?魔法使いって杖持ってるんだっけ?なんの為に持ってるのかな?
あの少年は棒みたいなの持ってたな。探してみようか。
無いわね。聞いたら出てくるかもしれないけど、ちょっと考えたら邪魔よね、あんな棒。なくても魔法使えるし。
「ウイ兄は鎧とかどうするの?」
「重そうだし、革の胸当てを探してるんだけど、なさそうだね。」
「革の胸当ては女性用のだけさね。」
「そうなんだ。」
「弓を射るときに着けるやつさね。」
モルッタが鎧を指差す。
「男物はこんな革鎧タイプになるね。革鎧を着るなら、その服は脱いだほうが良さそうだね。」
モルッタが今度は学ランを指差す。
「アタシはこのままでいいかな。」
「じゃぁボクは試しに着てみるかな。」
ウイが学ランを脱いで、革の鎧を物色し始めたわ。
「まぁこれでいいかな。」
一発で着こなすなんて凄いわね。流石は長兄。
「それはエルフの女性用なんだがね……」
確かに胸があるように見えるわね。もしかして狙って?そんなわけ無いよね。
金属の鎧は重そうね……でも凄く磨かれててまるで鏡みたい。
鏡といえば、ヘアブラシが欲しかったんだ。
「あとヘアブラシは置いてない?」
武器屋には流石にないか……。
「あるよ、髭用のが」
「髭用なんだ……」
出てきたブラシは、針金でできた物だったわ。
流石に尖っては無いけれど、痛そうだしユウで試さないとね。
壁に姿見の鏡があるじゃない。
でも、知ってる鏡と違うわ。金属を磨いたような光沢。鎧と同じかな。
うぅ…この髪の色は…本当にユウと一緒なのね。
鏡も欲しいけど、優先度は低いかな。
アレは農具ね……畑なんて見てないけど、鍬とか鎌よね。
確かにコレも鍛冶製品ね……。
色々あって見てて飽きないわ。
「あ、お代の方は……」
ウイ兄が申し訳なさそうに言ってるわ。
「あいあい、分かってるよ。大穴を閉じに行ってくれるんだし、負けて付けておくよ。」
まぁこんなに買い物できるお金なんて持って無いわよね。
洗濯頑張らなきゃ。
やっぱり、姉御口調が難しいのです。




