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草原の宿 二十話 大穴会議

-- side us --


「大穴があったのはココじゃ。」


 コジーウが炭で地図に「×」をつける。(そんな地図を壁に打ち付ける許可は出してないが、言っても聞かないしな。)


 それは『世界樹の宿』から、ちょうど南下した森と『竜骨の谷』との境界だった。


 竜骨の谷には俺の婆様ばぁさまがいる、いや支配してる地域と言っていい。動物も植物も少ない荒れた土地だが、婆様達はずっとそこに住んでいるらしい。

 俺の母もそこで生まれたわけだ。


 遥か昔、二千年以上前に二匹の巨大なドラゴンが死んだ場所。

 巨大なドラゴンの死体は腐敗し、動物も植物も全滅させ、後には荒れた大地と、骨だけが残ったという。

 そして今もその骨は風化せずに残っている。


 荒れた大地に育つ植物は少ない。小川が何本か流れてはいるが、水が枯れる事もあり住むにはここ以上に厳しいはずだ。

 環境が厳しいのは魔物も同じなのか、魔物の数は少ないようではある。


 だが、婆様達はその地に適した植物を育て生活をしている。

 その植物は麦ほど旨い物ではないのだが、は食料と酒の材料になり、葉や茎が衣服の繊維になるので、織った布と酒を貿易品としているというわけだ。

 食べてまぁまぁ、織ってまぁまぁの植物だ。

 ちなみに俺の着ている服や、ユウの着ている衣服はそれだが、ユウの服は元が薄い茶色のはずだが今は白くなってるな。ちょっと羨ましい。

 あと貿易と言っても、ルルーコ商会と物々交換しているだけだがな。



 婆様は白いエルフだ。

 白い肌、白い髪、金色の瞳。

 フェリーフの髪も真っ白だが、比べてしまうと白髪しらがなのが分かる。婆様の髪は純白と言って良い。勿論フェリーフには口が裂けても言えない。


 だが白いエルフの婆様は『黒エルフ族』を名乗ってる。なんでだよ!と思いもするが、自称だしどうしようもない。

 しかもわざわざ服を黒く染めてまで。服を染めても黒いエルフじゃないだろって・・・。



 婆様には双子の姉妹がいる。俺にとっては『大叔母おおおば』だ。

 黒い肌、黒い髪、金色の瞳。要は黒いエルフだ。ダークエルフのような褐色ではなく、真っ黒と言って良い。


 だがやっぱり『白エルフ族』を名乗っている。


 たぶん、姉妹揃って冗談のつもりなのだろう。深くは聞いたことが無い。



 婆様姉妹は大きな谷を堺に、領地を二分している。俺達が『竜骨の()』と呼んでる由縁ゆえんだ。

 別に姉妹仲が悪いわけじゃないと思うのだが、『どっちの()が発展するか』を競っているそうだ。

 長寿のエルフならではの競技かもしれない。




「ゴブリンは見たのか?」


「いや、姿は見えんかった。じゃが縄張りを示す『積石つみいし』があったんじゃ。間違いないわい。」



 ゴブリンは魔物だ。基本的に俺達の敵であることには違わないのだが、ドワーフ族にとっては宿敵と言っていい。

 ただ、その理由は種族間のイザコザになるので深く関わりあいたくない。


「あいつら所構わず大穴をあけよって。」


 ゴブリンは所構わず採掘する。鉱石があろうがなかろうが関係ない。むしろ新しい穴の場合は、純度の高い鉱石が放置されている場合も多い。


 そしてそれをドワーフ族は気に入らない。

 ドワーフ達も採掘はする。だがそれは鍛冶や宝石細工をするためだ。

 放置されている鉱石がドワーフ族の琴線に触れる物があるのかもしれない。


「しかし、ワシ達だけじゃ、流石に手に負えんぞ。」

「やはり白と黒のエルフ族にも協力してもらうしかあるまい?」

「そんな場所エルフ族も無関係ではいられまいしな。」


「勿論、婆様には俺から言おう。だが正確な場所は見ておきたいな。」

「当然じゃ。まぁ大穴の場所も白エルフ族の()に行く途中に見つけた物じゃ。いやでも目に付くわい。」

 ちなみに今、コジーウが言った『白エルフ族』は『自称黒エルフ族』の事だ。めんどくさい。


「どうせなら獣人族の土地に作れば良いものを。」

「まったくじゃな」


 獣人族の中には魔物を退治する専門家が多いらしい。そういう専門家からしたら飯の種というわけだ。


「大穴だった場合どうする?」

「そりゃ、ゴブリンを退治して、なるべく穴の奥で封鎖するのがよかろう。」


 ゴブリンは穴の奥からくる。だから穴の奥のほうを封鎖してこれ以上こっちに来ないようにする。という手を打つしかない。だがこの対処法が意外と効果があってゴブリンが来なくなる可能性が高い。1度掘った場所はもう掘らないという説らしい。

 正確には世界の裏側から来るらしいが、ただ誰も世界の裏側を見た者がいないので眉唾なんだが。


「じゃぁマトック(つるはし)を持っていかんとの。何本あった?」

「確か10本はあったはずじゃが。確認せんとな。」


「穴の中の戦闘じゃ。大斧(バトルアックス)より小斧(トマホーク)が良かろうて。」

「まぁ、両方持っていくわい。」


「松明はどうする?」

「念の為、1人1本持っていくか。」

 ドワーフは夜目が利く。ある程度の暗闇でも視力はそう落ちない。だが完全な暗闇だとやはり見えなくなるそうだ。


明月あすにでも出発するか?」

「そうじゃな、ワシも流石に休憩したいしの。急いで戻ってきたからのう。」


「では明月あした出発して、大穴の場所を確認後、婆様の協力を仰ぐということで良いか?」


「「「「うむ。」」」」




「野うさぎと狼の香草焼きができたぜー。」

 どうやらモルッタが料理したようだ。安心して食えるな。

 よし、明月あしたからの為に腹いっぱい食わせて貰うか。



 あれ?いつのまにフェリーフは来てたんだ?


備考:明月は明日の意味。1日は月が転時計回りに1回転した時間。


アーズの一人称を『オレ』から『俺』に変えました。


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