草原の宿 十九話 ご休憩中
-- side you --
トカゲの乗り心地は最高だったぜ。
草原の風を身体全体に受けて、爽快に走っていくトカゲ。
途中にいた小動物が一瞬で消えた気がしたが、些細な問題だな。
俺は心の中の欲しいものリストに『トカゲ』と書き込んだ。
城につくとコジーウはさっと飛び降りて、トカゲについてる紐を『棒』に軽く括ると、とっとと城の中に入っていった。
これどうやって降りればいいんだ?飛び降りるには結構高い。せめて俺を下ろしてから行ってくれよ。
そうだ!尻尾を滑り台みたいにして降りれるはずだな!
天啓を受けた俺は尻尾に向き直り、一気に滑り・・・途中で落ちた。
めちゃくちゃお尻を打ったわ!痣が出来ないか心配だぜ。
まぁ後ろ足で蹴られたり、尻尾で掃われたりしなくてよかったけどな。
勝手口からホールに入ると、コジーウがベルを思いっきり鳴らしてた。
酒を置いてるカウンターに据え置いてるハンドベルだ。
30秒ほどしてアーズがやってきた。
「どうした?何かあったのか?あれ?ユウおかえり。1人か?」
俺は軽く手をあげる。とりあえず休憩したいし、適当な丸太椅子に座る。痛いお尻にヒンヤリ気持ちいい。でも尾てい骨が痛いから差し引き0だな。
「ワシの話が先じゃ。ワシゃコジーウじゃ。」
毎回自己紹介してるんだ・・・。顔は兎も角、服装とかで判断できないものなのかな?赤とか青とか緑とか。せめて名札を付けるとか。
「あれ?おかえりコジーウ。早かったな。婆様には納品出来たか?」
「そんなこたぁどうでもいい。大穴じゃ。大穴が出来てたんじゃ!」
「え!どこに?!」
「森と谷の境界じゃ、まぁ谷側じゃが森にかなり近い。」
「そんな場所に・・・」
「とりあえず、他の者達にも伝えないかん。」
「わかった、ベルを持って探してくれ。俺は遠征の準備をする。」
「了解じゃ。まったくあんな場所に大穴なんぞ開けよって。」
コジーウはハンドベルをガィンガィン鳴らしながら2階に上っていった。
「ユウすまないね。ちょっと当分忙しくなりそうだ。食事の準備とか出来そうに無いから。自分達でなんとかして貰えるかな?」
俺に選択権はなさそうだし、コクっと頷く。
ウイとマイにも伝えておけって事だろう。
まぁやる事もなさそうだし、忘れる前に例の物を取りに行くか。ズボンだけどね。
ズボンを取るついでに1人で完遂できた俺は、またホールに戻ってきた。なんせやる事がないしな。
ホールには集まったドワーフ達が6人いた。
「ちょうどココに地図があるんじゃが。」
「用意がいいな。壁に貼ってしまうぞい。」
金貨800枚なんじゃなかったのか?
4メートル四方のでっかい地図が壁に貼られる。勿論、4つ折にして、この地方が見えるように。
そこにちょうどアーズがくる。少し渋い顔をしたのを俺は見逃さない。
ちょっと面白そうなので、離れたテーブルに着く。
しかしアーズよりもドワーフ達の方が焦ってるな。
「大穴があったのはココじゃ。」
と、コジーウが炭みたいなので「×」をつける。
それはさっき地図の説明を受けた、『草原の城』から、ちょうど南下した『竜骨の谷』との境界だった。
でも、地図が大雑把過ぎて、口頭でも十分な気がしないでもない。
あ、ウイ達が帰ってきた。
「さっきの地図が貼られてるね。」
「なんでだろう?」
「おかえり。」
「ただいま。ズボンあったんだね。」
最初にそれかよ。
「なんか大変な事になってるみたいだ。」
「そうみたいだけど、何があったんだろう?」
「あの地図の×の所に大穴ができたとか言ってた・・・あと、メシは自分達で何とかしてくれだってさ。」
「わかった、ウサギでも焼いて食べようか。」
「ふふ、アタシに任せておきなさい。」
「「・・・」」
「何よ?」
「炭にはしないでね。」
「分かってるわよ!」
-- side my --
「アーズさん、厨房借りるわよ!」
「あ、あぁ、綺麗に使ってくれ。」
「わかってるわ。獲りたてのウサギ料理をご馳走するわ。」
「・・・モルッタ、付いていってあげてくれ・・・」
うぐ、そういえばアーズ達は、イノシシクッキングを見てたんだった・・・。
「わかった。解体は任せな。」
「お願いするわ。」
「モルッタは会議に参加しなくていいの?」
「どっちみちアタイは大穴には行けないさね。」
「ふーん」
厨房のテーブルの上にウサギをドンドンドンドンドンと置くと、モルッタの目が輝いたわ。
流石だわ。内臓を取って、足を切り落として、綺麗に皮を剥いで・・・血抜きをしてなかったから凄い事に。
あぁもう見てられない・・・どうにかしてここから逃げないと・・・。
「新鮮な野ウサギも悪くないね。」
目がギラついてるモルッタ。慣れるとこうなるのね。
「モルッタ、熊も獲ったんだけど、解体場に置いといていい?」
「あいよ、そのまま納品ってことで良いのかい?」
「いいわ。」
「じゃぁ、お代は状態を見て後で払うよ。熊は肉も毛皮も内臓も高く売れるし、ちょっとくらい痛んでても良い値が付くぜ。」
「そうなんだ、期待してるわ。」
「この野ウサギは今、全部喰うのか?しかし、えらい状態が良いな。」
「そうね。アーズ達も、なんだか忙しそうだし。コジーウもお腹すいてるだろうし。そうした方が良さそうね。」
「あぁ、大穴が開いたんじゃ仕方ない。まぁアタイが料理もしといてやるよ。」
「お願いするわ。じゃ熊は解体場の床でいい?」
「あぁ、そうだね。そうしといておくれ。」
ということで脱出成功。解体場に向かうわ。
ぅぐ。
全然脱出成功じゃなかった。
血抜き仕掛けの獲物とか、解体前の獲物とか、首から上だけとか、いるわいるわ。
床の開いてる場所に熊を置いて、とっとと退散しよう。
あ、今のうちに、大きい方のキノコをモイでおこうかな。
いくら4人用とはいえ、1人でゆっくりしたいもんね。今なら誰も来ないだろうし。
首から上で『こんにちはー』とかしたくないもの。
この後、アタシはもうちょっとでスライムを焼き殺すところだったわ。




