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草原の宿 十四話 世界樹と竜と龍

-- side we --


「おかえり、マイ、洗濯はうまくいった?」

「うん、そっちは問題なかったわ。」

「そっち?」

「ううん、なんでもない。」


「こっちは、薬草の勉強中だよ。マイも覚えるかい?」

「うーん、そうねぇ。」

 パラパラっと、薬草図鑑をめくるマイ。


「こんな絵じゃ分かりにくいわね。色も付いてないし、ふでで雑に書かれてるし。」

「まぁそうなんだけどね。それでも無いよりはましさ。生息地とか、効能とか、特徴とか書いてるし。」


「アタシは魔法で獣を刈る方がいいかな。」

「ふふ、マイにはそっちの方が合ってるかもね。」

「どういう意味よ。」


「あのさ、俺にも魔法使えないかな?」

「うーーん、どうかなぁ?」

「ユウって、魔法とか無理そう。」

「なんでさ?」

「なんとなくよ」


「頑張ったら使えるようになるかもね。」

「魔法の修行か、悪くないな。何を頑張ったらいいんだ?」

「とりあえず、銀の鎧を脱ぐ練習かな。」

「はぁ?意味が判らん。」

「基本は大事ってことさ。」

「なんの基本だよ!」

「まぁ『装備解除』も出来ないようじゃ魔法は無理なんじゃない?」

「あのパンツにどんな意味があるんだよ!」

「パンツはともかく、ブラには意味が無かったわね。プププ」

「両方意味ねぇよ!」


「喧嘩はやめて、仕事の話をしようよ。とりあえず宿代くらいは稼がないとね」

「ふふん」

 金貨や銅貨をテーブルにばら撒くマイ。


「すごいじゃないか。こんなに貰えたんだ。」

「30着以上やったしね。」

「そんなにいっぱい洗濯したんだ。」

「ウイ兄に預けるわ。支払いとか面倒だし。」

「わかったよ」

 貨幣を袋に入れウイに渡す。


「とりあえず。宿代は考えなくてよさそうだね。」


「アタシは、あのキノコが食べたいわ。」

 ユウを睨むマイ。


「な、なんだよ」

「一口でもくれればよかったのに。」

「『ルバイラノたけ』だね。」

「確かそんな名前だったかしら。甘い物が食べたいのよ。」


 パラパラっと薬草図鑑をめくるウイ。

「あった、これだね。えーと、森の中にしかないみたいだね。」

「また森まで行かないとダメなのね。」

 テーブルに両腕を伸ばすマイ。


 ユウが買取表をみる。

「1本銅貨1枚から金貨1枚で買取だってさ。大きさとか味で値段が変わるのかな?」

「どうだろうね。傘が閉じているとか、香りとかかも知れないね。」

「となると、かごか袋がほしいね。ドワーフが売ってくれないかな」

「キノコなら籠で決まりでしょう。」

「なんでだよ」

「なんとなくよ、アタシがモルッタに聞いてみるわ。」


「あとこの辺の地図が欲しいよね。森に入ったら戻ってこれる気がしないしね。」

「アーズ達はどうやって戻ってきてるのかしら?」

「何かコツでもあるのかも?」

「あとで聞いてみようか。」


 ダークエルフのフェリーフがフラフラやってきた。頭を抑えている。


「フェリーフさん、おはようございます。」

「ふふ、ごきげんよう」

「ちょっと質問なんですが。」

「あら、何かしら?」

 空いたイスに座るフェリーフ。息から酒精の匂いがする。


「森で迷ったら、ここまでどうやってたどり着けば良いのか知ってますか?」

「勿論、知ってるわ。」

「教えて貰えませんか?」

「いいわよ。この城の周りが全部森なのは知ってる?」

「いいえ、初耳です。」

「そう、まぁいいわ。この大草原は四方森で囲まれた中央にあるのよ。そして、この城はその草原の中央にあるの。」

「「へぇ」」

「でね。森の大きな樹は全部この中央を向いてるのよ。」

「そうなんですか?不思議ですね・・・」


「だからね、樹の向いてる方に行けばこの城へ、外に行くには反対に行けばいいのよ。」

「なるほど。」


「樹の向いてる方ってどうやったら分かるんですか?」

「それはね。大きな根っこが出てるほうが中央よ。」

「方角で根っこの大きさが変わるんですか?」

「そうよ。大きくて、太くて、硬い根っこが中央を向いているわ。」

「硬さも違うんですね・・・」

「そうよ」

「不思議ですね」


 フェリーフは目を閉じ語りだす。


「昔ね、この草原には『世界樹』という巨大な樹があったの。

 それは大きくて立派な樹でね、月にも届きそうな枝を沢山つけていたわ。

 そこに巨大なドラゴンが二匹やってきて、こともあろうに世界樹で争いを始めたのよ。

 一匹は翼を広げたら世界樹にも匹敵しそうな竜。

 一匹は長い身体で世界樹に巻き付いて折ってしまいそうな巨体の龍。

 世界樹は枝を落とし、葉を燃やし。最後には・・・消えて無くなってしまったわ。」


 フェリーフは目を開ける。


「消えて無くなったんですか?」

「そう、忽然と消えたわ。目の前からね。」


「世界樹があったから、内側の樹の根が太いんですね・・・」

「たぶんね」


「その後ドラゴン達はどうなったんですか?」

「森の外、南の果てに死体が今もあるはずよ。骨だけね。」

「二匹とも?」

「そう、相打ちだったんじゃないかしら?腐った死体は周辺の草木も動物達も全部絶やしたわ。今じゃ岩と竜骨の荒地よ。あんな場所に住むエルフの気が知れないわ。ふふ」

「エルフが住んでるんですか?」

「えぇ。アーズの祖母がね。」

「え、アーズさんのお婆さん・・・って白いエルフの?」

「そうよ。よく知ってるわね。アーズから聞いたの?」

「「「・・・」」」


「?まぁ全部、昔の話よ。今はどうなってるか知らないわ。」


 ふらっと立ち上がるフェリーフ。


「あと籠か袋はありませんか?」

「何に使うの?」

「キノコとか薬草とかを入れようかと。」

「それならルルーコ商会のドワーフに聞いたほうが良いわね。」

「分かりました。そうします。」


「森には魔物はいないとは思うけど、肉食獣は沢山いるから気をつけてね。」

「はい、わかりました。」


「あとね、山菜とウサギはワタシの好物なの。」

「・・・見かけたら確保します・・・」

「なんだか催促したみたいで悪いわね。ふふふ」


「じゃ、頑張ってね。ごきげんよう」

「ありがとうございました。」

 ふらふらと厨房の方へいくフェリーフ。


「催促してたわよね。」

「まぁねぇ」


「籠と地図をもらいにいこっか。」

「おーけー」


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