草原の宿 十三話 それぞれのジョブ
-- side you --
ウイと一緒に食器を厨房に持ってきた。
改めて見ると、大した道具もない厨房だな。
「ありがとう、助かったよ。」
食器を受け取ってくれるアーズ。
「じゃぁ後で薬草図鑑を持っていくから、ホールにでもいて。」
「わかりました。行こう、ユウ」
ホールに向かう俺とウイ。
ホールからマイの姿も、モルッタの姿も消えていた。
「うーん、やることないなぁ。」
「買取リストでも見てようか。」
「それも、そうだな。」
買取リストの上の方が見えないなぁ。
下の方には、薬草っぽい名前が書いてるけど・・・読めるけど、わからん。
それはそうか、現物観たことないしな。
「上の方には何が書いてるんだ?」
「上は、獣系かな、昨日のイノシシは、金貨1枚だね。 狼は白銅貨1枚。」
金貨とか銅貨とかイマイチ価値がピンとこないんだよな。
「イスを持ってきてあげるね。」
あれ?
ウイは、それなりに上の方読めてるな。
俺とウイもマイも、そんなに体格が違わなかったはず・・・そうだ、ウイの学ランはかなり大きかったよな。
という事は・・・女になって、そんなにも身体が小さくなったって事か!?
どうにも、足に力が入らないし。
ん?待てよ、頭を打つ前、少しだけ、ほんの少しだけ胸に軟らかい物があったような気がするけど。今はもう全然ないよな。気のせいだったか?うーん、思い出せねぇ。
なんてこった。力はでないし、背丈は小さくなるし、相棒は消えるし、ツインテールだし、ぺったんこだし、つんつるてんだし、良い事なしだな俺。
ウイが丸太椅子を持って来てくれた。
ふむ、ちょっとこの椅子を持ち上げてみるか・・・。
「ふんむっ」
持ち上がらねぇ。
ウイは軽々と持ってきたのに・・・。
「何してんの?」
「いや、この椅子が持ち上がるか、試してみたんだけど、ちょっとしか持ち上げられなくてな・・・」
「ユウは、女の子だから、力は弱いかもね。」
ウイよ、世の中には並みの男じゃ太刀打ちできない女がごまんといるんだぞ・・・まぁそんな事を言っても意味ないから言わないけどね。
「俺に出来ることあるのかねぇ。」
「とりあえず、銀の鎧を自由に装備できるようになるとか。」
「絶対着ねぇよ」
「まぁ部屋のユウの箱に入れてあるから、気が向いたらね。」
「向かねぇよ」
「ふふ、じゃぁ頑張って薬草の種類を覚えようか。」
「それしかないか。」
俺は買取表の薬草の名前を覚えることにした。
しばらくして、アーズさんが本を3冊持って来てくれた。
「おまたせ。薬草の図鑑はこれくらいかなぁ。この辺りに無いのも載ってるから、買取表の名前を見ながら探してみて。」
「ありがとうございます。」
「まぁ買取表に無い薬草も買ってくれる時があるから、全部に目を通しても損はないよ。」
「なるほど。そうします。」
「あと、本はどうせ使わないから、持っていて良いよ。使わなくなった時にでも返してくれ。じゃぁがんばって。」
アーズさんは、それだけ言って何処かに行ってしまった。
俺とウイは本を丸太テーブルの上に置いて薬草を調べ始めた。
-- side my --
「あれ?昨日と同じ服?」
「そうなんだけどねぇ・・・兄貴達が激しくてさ、また破いちまったんだ。」
「・・・そ、そうなんだ・・・」
何が激しかったのか何て聞けない!!
そんな革の服が簡単に破れるのはおかしいとは思ってたけど、裏にそんな情事・・・じゃない事情があったなんて。
「で、またお願いしてぇんだけど。勿論、銭はだすしさ。」
「わかったわ。」
「ありがてぇー。あと他の服もやってもらえねぇかな?」
「視てみないと判らないわね。」
「そりゃそうか。じゃ、アタイの部屋に来てくれよ。」
「わかったわ」
二階に上がって、アタシ達の部屋とは反対方向にいく。
「ここがアタイの部屋さ。ささ入った入った。」
『バタンっ』
「お邪魔します。」
綺麗にはしてるけど・・・何か獣臭い。まぁ獣の解体が仕事だし仕方ないか。
「これがそうなんだが、いけそうか?」
「うぐっ」
大きな箱の中には、いろんな意味でボロボロの服があった。
破けてる物。カビの生えた革製の物。色が黒くなった物。元は白かったであろう何か。なんだかカピカピしてる物。
まぁ一言で言うと『ゴミ箱』と言っていい。
「破けた物は、原型が分からないと厳しいかな・・・」
「わかった、床に広げるさね」
昨日の服に負けず劣らずの、きわどいやつだ。
うぐ、が・・・がんばろう。
10秒ほど目を瞑って。
「ビ★ズ ボ★ルド ファ★ファファファ★」えぃっってな感じで、右手で指差す。
詠唱はいらないんだけど、使った方がそれっぽいし、『凄い感』がでるからね。
うぅ、なんか凄い服だった・・・。次いってみよー。
「カビの生えたのはやったこと無いけど、頑張ってみるよ。」
「よろしく頼むよ。」
と、何事も無く・・・
「そのカピカピしてるのは、普通に洗えばいいのでは?」
「いや、兄貴達のがこうなったら洗ってもなかなか落ちなくてな。」
「そ、そうなんだ。」
そうやって、なんだかんだ言いながら、30着くらい洗濯補修が終わった。
「ありがとよー。お代は、銅貨2枚が30着だから、金貨6枚だね。」
「毎度ありー」
ふむ、銅貨だと10円って感じだけど、金貨だと一気に高価な感じだよね。
「ふふ、金貨6枚がいいかい?銅貨とか混ぜたほうがいいかい?」
ふむ、どうなんだろう?そんな事言われても、ココ以外で使う予定もないしなぁ。
「混ぜたほうが良いと思う?」
「うーん、どうかねぇ。細かいのを持ってないなら、銅貨を混ぜたほうがいいかもなぁ。」
「じゃぁ、それでお願いするわ。」
「おぅ。わかったよ。じゃ金貨2枚分を、銅貨と白銅貨に両替しとくさね。あとこれは気持ちだ」
と言って、銅貨5枚余計にくれた。
「ありがとうーーまた、破られたら言ってね。」
「あんがとよ、まぁこんだけありゃ1ヶ月はもつさね」
「・・・そ、そうなんだ・・・」
部屋から出ようと思ったその時、廊下からドワーフの1人が入ってきた。
『バタンっ』
そして目が合う。
「あ、おはようござい・・・」
「ワ、ワシの妹に手をだすなーーー!!!」
凄い形相のドワーフの・・・誰かが凄い勘違いしている!
「自分の妹だけではあきたらずーーー!!!」
そ、それも誤解だからーーー!
ドワーフの誤解を解くのに、10分くらいかかった。このシスコンドワーフめ!
うぅ。ドワーフにはアタシがどう見えてるのかな?
姉御言葉が以外と難しいです・・・




