草原の宿 十二話 朝食
-- side you --
便所から戻って一眠りしたあと。
元気になって朝を迎えた。まぁ朝って言っても、夜が無いから気分だけどね。
マイが布団から出てこない。よっぽど仁王立ちの件が恥ずかしかったのだろう。
「マイ、健康な男性なら誰でもなることだから。」
ウイの説得にも応じないマイ。
「俺はアーズさんに、朝食お願いしてくる。」
「分かったよ。お願いね。」
「マイもいるか?」
布団の中で首が動いてる。縦なのか、横なのか。まぁ縦なんだろう。
「いってくる。」
『バタンっ』
一階に降りてホールを探す。誰も居ないな。
確か厨房はあっちのはず・・・あっちからアーズさんが料理持って来てたしなぁ。
ていうか、本当に従業員いないな。よくそんなんで宿なんてしようと思ったな・・・。
厨房らしい場所にアーズさんがいた。
やっぱり料理もアーズさんがやってるようだ。何か料理の仕込みをしてる。
「アーズさん、おはようございます。」
「やぁ、おはよう。よく眠れたかい?」
「はい、おかげ様で。」
俺の頭を見るアーズさん。何か付いてるのかな?
「それは、よかった。ドワーフ達が賑やかだったろう?」
「はい、まぁ」
「たまにあぁやって浮かれるんだ。見逃してやってくれ。」
と、ウィンクする。
「はい・・・あ、朝食を三人分お願いしたいんですが。」
「わかった。ホールに持っていくよ。」
「お願いします。」
部屋に戻るか。
『バタンっ』
「朝食3人分お願いしてきたぞ。」
『バッ』っと起きるマイ。服は着てたようだ。俺のタンクトップとトランクスを着てる。
まぁ仕方ない。俺もマイの下着を着てるしな。
何か吹っ切れた顔のマイ。
「おはよう。ゴハン行きましょ、う・・・何その頭、その頭でアーズに会って来たの?」
俺の頭を見て、爆笑するマイ。
そして目を閉じるマイ。笑いを堪えてるようだ。
俺は自分の頭を触ってみる。なんか・・・見えないし分からないけど・・・すごい事になってそう。
俺は手櫛で髪を整える。
20秒程して、マイが唱えた。
「ツーサイドアップにな~~れ~ぇ~ぇ~」
「うわぁ!」
またか!頭の中と上で何か動いてる。寄生虫が這ってる感じ。全身に鳥肌が走る。何回やってもマジでキモい。慣れる気がしねぇ。
「何回見ても、くねくねとキモいねぇ」
ゲラゲラ笑うマイと、ニコやかなウイ。
「やっぱりユウには、ツインテールがよく似合うね。」
「だから嬉しくねぇよ!」
とは言いつつ、まんざらでもない気分ではあった。慣れって怖いぜ。
「とりあえず、待たせても悪いし行こうぜ。ちゃんと服着ろよ、マイ。」
「分かってるわよ!」
そして、またホールに向かう事にした。
-- side my --
ホールについたら、アーズがいた。
「クリエイト・ウォーター」
アーズの指先から木製の4つのコップに水が注がれていた。
一眠りして、冷静になって、改めて見る他人の魔法。
やっぱり別の世界に来たんだ。そう実感する。
ていうか、水ってそうやって注ぐんだ。
「やぁ、おはよう。よく眠れたかい?」
「はい。おかげ様で、ぐっすり寝れました。ありがとうございます。」
「ふふ。それは良かった。」
「朝食の準備は出来てるよ。まぁ昨夜と代わり映えしないけどね。」
そこには、何かの肉のステーキと、何か山菜ぽいのを湯がいた物と、水[手作り・新鮮]があった。
朝からステーキか・・・ていうか、昨日から肉しか食べてないな。しかも大きい。流石にちょっときつい。
「ボクも一緒に食べていいかな?」
等とアーズが言ってきたけど、食事は4セットあるし、拒否できる状況じゃないよね。
「どうぞどうぞ。」
爽やかに返答するウイ兄。
丸太の椅子に座る4人。
実は、食事用のフォークも箸も無い。あるのはよく切れるナイフだけ。
アーズはナイフで切って、手で食べてる。
私達もマネして食べてるけど、正直気持ち悪い。あとで箸くらい作ろうかな。
アタシは心の中の欲しいものリストに「箸」と書き込んだ。ついでに、薬キノコ22個を消しておいた。
「今日は何をするんだい?」
「マイがキノコを食べたいって言ってたんで、薬草採取をしようかと思うんですが。」
水を飲むウイ。
「なるほど、あのキノコか、あれは美味しいよね。オレも大好きだよ。」
肉を手で食うアーズ。
「薬草の買取もしてくれるんですよね?」
「あぁ、ルルーコ商会なら買い取ってくれるよ。そこのリストに載ってる物なら、大体その値段で買ってくれるよ。」
掲示板の横の大きな板のリストを指差しながら、肉を食べた反対の手で水を飲むアーズ。
「ユウに薬草の判別ができるの?」
「うっ」
やっぱり判りそうにないユウ。
ウイ兄は薬草とかキノコとか、得意そう。行き成りあんなキノコをモイできたし。
「アーズさんは、ルルーコ商会の商人じゃないんですか?」
「うーん。正確には違うかな。まぁ持ちつ持たれつの関係さ。俺はこの宿のオーナーかな・・・まぁ見た目は城だけどね。」
茹でた山菜っぽいのを食べるアーズ。やっぱり城なんだ。
「薬草の種類が分からないなら、一応図鑑があるけど。使うかい?」
「あ、お願いできますか?」
「じゃぁ、あとで持ってくるよ。沢山稼いでもらって、宿代を貰わないとね。ハハハ」
「ありがとうございます。」
食事も終わってまったりしていると、柱の影から大きな頭が覗いてるのに気が付いた。あの三つ編み髭はモルッタだわ。
アタシと目が合うとまた手招きしている。
「なんかモルッタが用事があるみたいだから、行って来るね。」
「じゃぁ、僕達は食器を厨房まで持っていこうか。」
「あ、助かるよ。」
テクテクとモルッタに近づく。
「どうしたの?」
照れくさそうなモルッタ。
「昨日の今日で悪いんだけどさぁ。」
手に持ってた服を見せてくる。
「あれ?昨日と同じ服?」
「そうなんだけどねぇ・・・」
む、何があったのやら。




