草原の宿 九話 今を生きる者と、昔を生きる者。
-- side you --
モルッタが来た。それはもう凄い格好で。
滑した革で出来たブラジャー。同じ革で出来た短いスカート。
そして、何か毛が付いたままの皮で出来た上着。上着は天然なのか着色なのか、白・緑・赤の3色の毛並みで、現代日本人の感性からするとそれほど派手というわけでは無いが、この中では異質な存在なのは間違いない。
そして一言
「お♡ま♡た♡せ」
「「「「おぉぉぉぉぉーー待っておったぞー!!」」」」
凄い盛り上がるドワーフ達。
そして酒瓶を取ると、ドワーフ達にお酌をするモルッタ。
立場は完全に、『お店の人』と『お客の人』状態だ。
でも、モルッタは他の男ドワーフと見分けが付かないくらい似てるんだけど・・・。服と三つ編み髭を除いて。
俺は一番まともそうなフェリーフさんに疑問を投げる。
「ブードンさん達と、モルッタさんは、兄妹なんじゃないんですか?」
「そうよ。」
疑問は正しい疑問として受けて貰えなかったみたいだ。
「それにしては、なにか、別の物を感じるんですが。」
「あぁ、ドワーフはそう言うの気にしない種族だからねぇ。他種族の異性には関心ないけどドワーフの異性ならなんでもいいみたい。」
と、呆れた顔をする。
「その分、血が濃くなって、あそこまで見分けが付かなくなるのかもね。」
と、軽く笑う。フェリーフさんにも見分けが出来ないんだ。
「寿命の長いエルフには解らないことね。」
今度は寂しそうに笑う。
「その点、アーズ坊やは相手が居なくて寂しそう。」
「アーズさんって、半分エルフで、半分猿耳族なんですよね。」
「誰から聞いたの?」
「本人です。」
「そう・・・本来ね、妖精種のエルフ族と、獣人種の猿耳族の間には子供は出来ないのよ。」
エルフって妖精種なんだ。じゃぁ魚類と爬虫類の間に両生類が生まれた感じかな?
「でもね、昔、ワタシ達の村に変わったエルフが二人生まれたの。」
あぁ、なんか聞いたらダメな話じゃないのか・・・重そう。ていうかそんな話聞いてないけど、フェリーフさん酔ってるのかな?酔っ払いは語りだすって言うしね。
「その二人は双子でね。真っ白なエルフと、真っ黒なエルフだったのよ。」
コップを少し仰ぐ。
「元来、黒いエルフは忌み嫌われるわ。今のワタシのようなダークエルフ見たいにね。でもその子はワタシのような褐色じゃなくて、真っ黒だったの。何より父親がわからなかった。母親が言わなかったのよ。それは村中で大騒ぎになって、母親と3人、村を追放されたわ。」
コップの水面を眺める。そこに昔を思い浮かべるように。
「少し大きくなった、白と黒の双子のエルフは、仕返しに来たわ。当然よね。勿論ワタシ達も応戦したけど、何故か双子は凄い戦い慣れしてて、村人はたった二人の子供を相手に手も足もでなかったわ。」
コップを少し仰ぐ。
「双子は言ったわ。『これは神を二度も裏切った罰だ』ってね。その次の日、生き残った村のエルフは全員ダークエルフになってたわ。」
自嘲気味に笑う。
「ワタシ達村人は嘆いたわ、だって何が悪いのか。何の罰なのか解らないんですもの。いいえ、1つは解ってたのよ。でも許されたと思ってた。だってエルフじゃどうにも出来ない事だったし。」
視線を俺の後ろに向けるフェリーフさん。
「で、白い方のエルフがアーズ坊やの祖母ってわけ。」
なるほど、わからん。話が飛びすぎ。なんで白いエルフが祖母だと、他種族と子供ができるんだ?
アーズが追加の酒とつまみを持ってきた。ドワーフ達が盛り上がる。
「アーズ坊やが来たから、この話は終わりにしましょう。」
「?む?なんの話ですか?」
「ぅふふ、アーズ坊やの好みのタイプを聞かれてたの。」
「「え?」」
言ってねぇよ。
-- side my --
モルッタ恰好いい。見た目じゃなくて、なんというか・・・存在が!
同じ『心は乙女、身体は男』な者同士、共感できるものがあるわ。
勿論、兄弟に対してそういう感情を持つのはどうかと思うけど、それは種族的な物だしね。
でも、なんであの服はあんなに破れてたのかな?皮製品って、そう簡単には破れそうにないのに、3つとも破れるなんて。何かと戦って?ていう服じゃないしなぁ。
まぁ、あの程度で銅貨7枚なら、いくらでも協力できそう。でも、そうそうあんなの破けないよね。
もしかしたら、他の人もあんな破れた服を持ってるかも。そうだったら、結構儲けれる?
でも、ちょっとまって。
最初から綺麗に直してしまうと、次のリピーターが中々来なくなるわね。半分だけ綺麗にするとか、半分だけ直すとかできないかな。
いやでも、それがバレたら、リピーターどころじゃないわね。
ふむ、悩ましいわ。
まさか、クリーニングで悩むことになるなんて。
でも、狩りとか、薬草採取とか、難しそうだしなぁ。薬草とか見分ける自信がないしね。もっと楽して稼げる方法探さないと。
とりあえず、明日にでもウイ兄とユウと相談しよう。今日は疲れたわ。部屋に行って寝よう。
「アタシ疲れたから寝るわ。」
「じゃぁ、ボクも寝ようかな。」
ユウがなんか変な色の薬飲んでる・・・すごい不味そう。
「あぁこれ見た目と違って、美味しいかも。甘いし。」
え!?甘いの?
「甘味ならワタシにもちょうだいよ。」
「お菓子じゃないよ。増血剤だよ。血を増やす薬だよ。」
「でも、甘いんでしょ?」
「まぁ、その為に甘いキノコが入ってるしね。」
「甘いキノコ!?」
「そうそう、チョコレート色の傘で、ビスケット色の柄のキノコだよ。」
あぁ見た記憶が・・・あるような、ないような。説明を受けたような、そうでもないような。
「『ルバイラノ茸』じゃな。買取表にもあるから、取れたら買い取るぞい」
「アレは生で食うのが一番じゃな」
「アタイも大好物だね」
ドワーフも話に乗ってきた。
でも、ちょっと薬草採取の目標ができたかも。
今は味見くらいしたいかな。
「ユウ、ちょっとだけ飲ま・・・」
「もう無いよ」
「明日は薬草採取頑張るわよ」
「「・・・ハイ」」




