草原の宿 六話 井の中の蛙は関係ない
-- side you --
やっちまった。
俺様としたことが、こんな醜態を晒すとは・・・。
いや、しかし、あれは不可抗力だろ?
トイレの真っ黒な穴の中から、何かに触られたらビックリもするだろう。
しかも、解放するその瞬間を、それもお尻を狙ってくるとは・・・。
いや待てよ、人間の1番無防備な瞬間と言われてる解放時を狙ってくる、超頭のいい化物がいたんじゃないか?
くっそ、そうか、なら俺様が不覚を取るのも頷けるぜ。してやられたぜ。
俺も奴を倒すだけの能力を得なければ。今ほど自分の無力さを痛感したことはないな。天狗になってたぜ。井の中の蛙だったぜ。
「大丈夫かいユウ?」
ウイが俺の目の前で言う。でも今はその優しさが痛い。
「ぅぐ、大丈夫だ。問題無い。」
いや、本当は『問題だ。大丈夫無い』と言いたい。でも、言える訳が無い。
俺のお尻やら、下着やらはビチョビチョなのだ。
それを腰が抜けた俺をウイはおんぶしてくれてる。それなのに、俺が問題に出来るわけが無い。
「そのお譲ちゃんは、どうしたんだい?」
そこにドワーフの・・・話しかけてきた。
「ちょっとトイレで問題が起きまして。えっとあなたは?」
ウイにも判別できないドワーフがいたのか。
「アタイはモルッタ、ルルーコ商会のモルッタだよ。あんた等の話はブードンから聞いてるよ。」
俺達は驚きを隠せない。ウイもびっくりしてる。そう、このドワーフは女性だったんだ。しかも、ブードン達と見分けが付かない・・・。
でも、声質はちゃんと女性、しかもカワイイ系。
それに、髭を三つ編みにしてる!女性に髭がある事自体驚きだけど、おしゃれは忘れないんだね。
エルフのフェリーフさんが、他種族は見分けが難しいって言ってたけど、確かに不可能かもしれない。女性でここまで似てるとは・・・。
そして俺を見るモルッタ。
「あぁ、だいたいわかったょ・・・代えの服と、下着になりそうなのを用意するよ。」
何か納得されてしまった。しかし、俺の第一印象がコレか・・・。
「ありがとうございます。」
俺の代わりに感謝の言葉を言うウイ。
「いいって事さね。どうせ、後でお代は纏めて頂くしね。体が拭けそうな物持ってくるから、井戸で先に洗ってな。」
そう言い残して、モルッタは井戸の隣にある建物に入っていった。
建物の中から「サイズあるかなぁ」って聞こえてきた。
「とりあえず、井戸は使っていいみたいね。」
なぜか、落ち着かないマイ。
「そうだね。いこっか。」
-- side my --
アタシはちょっとビビッていた。
トイレの化物?違う。
ドワーフの女性?違う。
ユウ?なわけない。
ウイ兄の一言だ。
『マイが洗浄魔法とか使えるんじゃない?』
と、言われることだ。
何故か?
それは前回、ユウが縮んだから。
もう1回使ってまた縮んだら、目も当てられない。ありえないほど鈍感なユウも気が付いてしまう可能性が高い。
だから洗濯魔法は使いたくない。
でも、言われたらやるしかない。そう、挑戦は受けるしかないのよ。
『使えるんじゃない?』と言われて、『出来ません』なんて、言える訳が無い。
勿論、本当にできないなら、出来ないと言うしかないけど、出来てしまったしなぁ。
どうにかして回避する方法はないかなぁ。
なんて、思ってたら、井戸の前にきてた。
ユウを下ろすウイ兄。
次は井戸から水をくみ上げてる。
「ユウ、服を脱いで」
ロープを引っ張りながら、そう告げる。
「ぅん」
『キコキコ』と回る滑車。
服を脱ぐユウ。
学ラン。セーラー服。え?キャミソールまで?しかもアタシの・・・
服を脱いだユウは、上下銀色のビキニ姿になってしまった。上も着てたのね・・・
ていうか、上なんて要らないほどペッタンコなんだけど。ウケルwww
『キコキコキコ』と回る滑車。
上がってきた井戸の桶にはカエルが1匹乗っていた。でもまた井戸に逃げるカエル。
それを見ていたユウがちょっと涙目のようだった。
「マイお願い」
何をお願いされたのか理解してしまった。なので、すぐに実行する。
「装備解除」
『ドサッ』『ドサッ』っとありえない音で地面にささるビキニ。
流石にユウも逃げないな。
アタシのお気に入りも脱ぎ捨てる。もっと丁寧に扱いなさいよね。
「ここにしゃがんで」
ちょっと離れた排水管っぽい場所にユウを呼んで、桶から別の器に水を汲んでユウに掛けてやる。
「洗うのは自分で洗って。」
『コクッ』っと頷くユウ。
また、器に水を汲んでユウに掛けてやる。何度か、それを繰り返してる。
「そっちの服は『洗浄魔法』で洗濯できるよね?」
なるほど、このタイミングで洗濯魔法か。
という事は、ウイ兄は洗濯魔法の副作用に気づいていると・・・
口止めが必要かな?いや、それは後でいいか。
えーと、詠唱はなんだっけ。
確か、気持ちだか、気分が大事って言ってたな。
「ビ★ズ ボ★ルド ファ★ファファファ★」えぃっっと
てな感じで服に魔法を掛ける。
ふふふ、またもや成功。このままクリーニング屋になっても良いんじゃない?
「へぇ、便利な魔法を使えるんだねぇ。」
いつの間にかモルッタが後ろにいた。




