草原の宿 五話 トイレの主
―― side you ――
「装備解除」
マイがオレのパンツに手を付けて、軽く言った。
『ゴトンッ』パンツがトイレの床に刺さる。
やっぱり刺さってやがる。なんだこれ。
「うぅ、アタシのお気に入り。」
マイが何か呟いてる。
いや、今はマイに構ってる時間がない。早く済まさなければ!!!
オレは段差の上に・・・
あぁ、そうだった。これはマイの・・・いや、今はそんな事もどうでもいい。
横から……あれ? ない……
アレがない。
アレは他人に自慢できるほど立派なモノではない。だけどオレの相棒なんだ。楽しい時も、辛い時も、悲しい時も、悶々した時も。
だけど今は相棒が見当たらない。
オレはウイとマイの方をみる。
目を逸らすマイ。
「ユウは女の子なんだし、ここではしにくいんじゃない?」
ウイよ。なんでそんな事を爽やかに言えるんだ?
「えっと、これは、どういう……」
「多分、女性用の入り口は裏側だよ。」
いや、そうじゃない。聞きたい事はそれじゃない。あぁでもお腹が疑問を許さない。
オレは急ぐ。でも走れない。でも急ぐ。
今漏らす訳にはいかないのだ。もう目の前なのだから。あと少し、あと少しなんだ。
確かに裏側にもトイレがあった。こっちはドアが付いている。まぁ、大きい方もするんだし、ドアくらい付いてるよな。
『バタンッ』オレは勢いよくドアを開ける。
なるほど、確かに女性用・もしくは大きい用のトイレがあった。
だけど……ドアがない。区切りの壁はあるがドアはない。しかも、しゃがんだら会話できる程度の高さしかない区切りの壁
区切りの壁は3つ、すなわち4人用。いや、4人用のトイレとか意味が分からないけど。4人同時進行できるということ。すなわちマルチタスク。
オレは怯む、いや日本人なら怯むだろう。恥ずべきことじゃない。
オレは躊躇した。いや日本人なら躊躇するだろう。恥ずべきことじゃない。
そしてオレは覚悟を決めた、この間たったの3秒。されど3秒。
オレは建物のドアを閉め、意を決して1番奥の壁際に赴く。
そして、中を見る。
区切りの中には、穴があった。オレは穴を覗き込む。
それは深淵を思わせる漆黒の世界。闇側の異世界への扉。そう彷彿させるほどの穴だった。
そして不思議なことに、あるべき臭いが殆どないのだ。
オレは扉を跨ぎ、ピンクの下着を下ろす。
オレは絶句する。
そうだ、そうだった。あの時、オレは気づいていた。知ってたんだ。でも、忘れていた。
頭を強く打って?そうだ、頭を強く打つと直前の記憶がなくなるとか聞いたな。
いや、考えるのはあとだ。今は、一刻もはやく!!
そして意を決してしゃがむ。
―― side my ――
「ぎゃーーーー」
ユウがトイレに入ってすぐ、トイレの中から悲鳴が聞こえた。
「「なに?!」」
ドアを開けて中をみると、尻餅をついているユウがいた。
しかも、あられもない姿で……
うぉぉぉ!アタシのお気に入りをそんな無碍にするとは!許せない!
「なか……なか……」
何このトイレ……区切りの壁の高さとか、ちょっとありえないんですが……ていうか、前面のドアがないんですが。
井戸端会議じゃなくて、トイレ首脳会議とかできそう。
これは設計者に文句の一つ言わないといけないよね。
「何があったんだ?」
何時も冷静なウイ兄が、ちょっと焦ってる。
「穴、穴の中に何かがいる……さわって…き…た」
すごい焦ってるユウ。
ウイ兄がユウに近寄る。
そして、徐にユウの足を開くウイ兄。
「穴の中に何がいるんだい?」
ユウの足の間を覗き込むウイ兄。顔が近い、近すぎるよ!そして手を……
「ち、違う!便所の穴の中!!」
「あぁ、こっちか、ごめんごめん。ボクもびっくりしててね。」
立ち上がって、トイレの穴を覗き込むウイ兄。
アタシも隣の穴を覗き込む。
真っ暗な穴だね。汲み取り式って奴だね。でも臭いがない。
「何か動いた」
「え?何?」
アタシも目を凝らす。
あ、何か光ってる物が見えた。光ってるっていうか、テカテカしてる。
「あれは……なんだろう?」
「何かの魔物かな?」
「でも、魔物は居ないって……」
「とりあえず、出ようか。マイはユウの下着を着させてあげて。」
「仕方ないなぁ……」
腰を抜かしているっぽいユウに、元お気に入りを穿かせてあげる。
もってきた銀のビキニも一緒に穿かせてあげる。ちゃんとピンクが見えない様に。はみ出ない様に。
「じゃぁ行こうか。」
「手を洗いたいな。井戸行こうよ。」
「ユウも洗ってあげないとね。」
「ぅう」
そう、ユウの使ってたトイレの周りには、水溜りが出来ていた。




