草原の宿 三話 猿耳族
「猿耳族のお客さんなんて、初めてじゃないかしら。」
エルフのフェリーフさんが、話しかけてきた。
「猿耳族?」
「あら、アナタ達、猿耳族でしょ?」
「え?」
「あら、ごめんなさい。獣人種は見分けが難しいから違ったかも。」
猿耳族なんて聞いたことないけど?
俺達は猿耳族って言うのに似てるのか?
「少し前にあなた達に似た猿耳族の知り合いがいてね。てっきり勘違いしちゃったわ。」
「その人は今は?ちょっと会ってみたいかも。」
「死んじゃったわ。」
「そうでしたか、ごめんなさい・・・」
「謝る必要はないわ。知人という事以外、あまり関係なかったもの。」
関係ないと言う割りには、なんだか顔が寂しそう。
「猿耳族って珍しいんですか?」
「この辺では見ないわね。でも王国とか帝国には多いんじゃないかな?」
も、もしかして・・・猿耳族って普通の人間のことじゃ・・・人間の祖先って猿だっていうし。同じクラスのアイツも猿っぽい顔してたよな。
むしろ『エルフこそが普通の人間』って言われても否定できないよな・・・
いや、「普通の人間」って考え方自体が無いのかも・・・
ということは、俺達は猿耳族なのか!?語尾に『ウッキー』とか付けたほうがいいのかな?
「王国と帝国ですか・・・」
「やっぱり、あっちから来たんじゃないの?」
「行った事はないですね。」
「やっぱり猿耳族じゃないのね。ごめんね。」
「もしかして、フェリーフさんと、アーズさんって恋人なんですか?」
横で聞いてたマイが割り込んできた。
「ふふふ、いきなりね、でも、ありがとう。そう言って貰えて嬉しいけど、そういう関係じゃないわ。」
む?うれしいのか?片思いとか?
「そうね、アーズ坊やは敵の孫・・・ってとこかしら。」
「敵の孫?ですか・・・」
「そう、敵の孫」
フェリーフさんはちょっと笑ってる。
「アーズ坊やに含む所はないわよ。あったらこんな場所に居ないしね。」
そして、ちょっと寂しげに笑う。
「でも、ワタシの仲間・・・エルフ族はそうは思って無いかも・・・」
目に涙が滲む。
「ちがうちがう、元エルフ族か」
フェリーフさんが呟く。
「湿っぽい話はいやよね。話し相手になってくれて、ありがとう。またよろしくね。」
フェリーフさんは、何処かにいってしまった。
敵の孫か・・・アーズのお爺ちゃんか、お婆ちゃんが敵ってことか?
まぁ、係わり合いにならない方が良いな。
-- side my --
フェリーフさんがどこかに行ったあと迎えがきた。
「じゃあ、先に部屋に案内するよ。宿代は出世払いということで、3人部屋で良いよね。こっちだよ。」
何処かで見た青年が馴れ馴れしく話しかけてきたと思ったら。アーズだった。
ぱっと見じゃ分からなかったんだよね。
と言っても、化粧をしたとか、女装をしたとかじゃない。バンダナを取っただけ。
でも!!
ちょっとは見えていたんだよ。気付きたくなかっただけ。
それは、髪の色。
アタシの憧れのミルクの中で苺を潰したような、白っぽいピンク。なんで男がそんなピンク頭なのよ!
って思ったけど、アタシも今は男でピンク頭だった・・・。
あと気になったのは、耳。
ちょっと尖ってる。
フェリーフさんの耳は長いけど、アーズの耳は尖ってるだけ。
まぁエルフのことなんて、分からないし。どうでもいいか。
「アーズさんもエルフだったんですね。」
横にいたユウが聞かなくても良いことを・・・
「半分だけね。」
「半分?」
「母がエルフで、父が猿耳族なんだ。」
さっきフェリーフさんが言ってた人か。
「ご両親は?」
あぁ、ユウその質問は・・・。
「100年以上前に死んだよ。」
「100年!?あ、ごめんなさい」
ユウの奴、そのくらい気が付きなさいよ。さっきフェリーフさんが死んだって言ってたじゃない・・・。
それにしても、100年前とか?フェリーフさんは少し前って言ってたような・・・
「フフ、100年以上も前の事だしね。父親の方は顔も覚えてないよ。母親の方は、忘れたくても忘れられないけどね。」
忘れたくても忘れられないってどう言うことかな?。自分と似てるとか、凄く怖くてトラウマになってるとか・・・。
「片親がエルフだと、寿命が長いみたいでね。あんまり老けないんだ。それに年齢を数えるのを止めたから・・・もしかしたら、200年以上前かもしれない。あぁ200年はないかな。アハハハ」
「もしかして、フェリーフさんもかなり長寿なんですか?」
アーズの顔が強張る。
「シッ!!それは極秘事項だ。聞くことも話すこともだめだ。以後その会話はしないように。」
真剣すぎるアーズの顔は本当に怖かった。話を変えねば・・・。
「じゃぁお父さんが猿耳族だから、アタシ達を助けてくれたんですか?」
「まぁそれもあるけどね。あの状況でほったらかす訳にもいかないだろ?」
外国で日本人と会ったら、日本人というだけで親戚のように親しみが湧くとか聞いたな、それかな・・・
「さぁ、この部屋だ。」
『ガチャ』っとドアを開ける。
そこは・・・ベッドが3つ。クローゼットが3つ、木箱が3つある部屋だった。
「服はそこに掛けてもいいし。箱の中に入れてもいい。自由に使ってくれ。」
窓は木製の窓。ガラス窓じゃない。開けて見たら2階だった。いつのまに2階に来てたのやら。
「ちなみに、1泊1人銅貨2枚だ。食事は別料金になってるが銅貨1枚だ。必要なら先に言っといてくれ。あと酒は黄銅貨1枚だ。水が銭貨1枚。まぁそんなとこだな。」
銅貨って高いのか安いのか分からないな・・・10円ってことは無いだろうし。
「では、今から食事できます?勿論お金はありませんが。」
ちゃっかりしてるウイ。頼もしいわね。
「ハイハイ。分かってるって。全部ちゃんと付けておくよ。じゃぁ食事はさっきのホールでしてくれ。人手がないから、ルームサービスはできないからな。」
そういえば、フェリーフさん以外の従業員見てないな・・・。
「あ、トイレってドコですか?」
「便所は1階の外にでた裏手だ。あんまり苛めてくれるなよ。」
「何をです?」
「それは行ってからのお楽しみだ。」
「「「???」」」




