041:汝、神にあらず
マヌガン『かつて……この地には、当時としては先進的な……まあ、原始的だが?
都市が造られた。 あそこにある、発電施設を中心とした、な」
巨人が振り向きもせず、ぬるりと指さすのは……チェルノブイリ原子力発電所。
あたし達の知る歴史と違い、今だその崩れた姿のまま。
あたし達の知る歴史の通り、嘗ての大惨事を物語っている。
マヌガン『その頃、私は当時の国家と契約を交わした。
向こうが実験体を寄越す代わりに、こちらは技術を授けると」
こいつは、そんな契約を……だが、当時の……東西冷戦において、星々の技術は。
少なくとも、表向きには存在……しなかったはずだ。
マヌガン『実験体の確保は簡単だったよ。 この街の住人を、適当に回収する許可を得た。
後は国が勝手にその後を創作する。 家族丸ごとだろうが、問題なくしてくれた。
こちらは、当たり障りのないゴミ技術を与えれば良いだけ…実に快適だったよ」
マヌガン『だがあの日、すべてが狂った……知っているか?
あの日……あの日だ! あの発電施設が暴走した日!」
巨人の指さす先には、壊れた発電所……知っている。 知識として。
1980年代、かの研究所は暴走の果てに……爆発した。
尋常ではない放射性物質を撒き散らし、関わった多くの人を死に追いやった。
実に長い時の間、人々を苦しめ惑わせた……最悪の事故。
マヌガン『その際何が起きたと思う?! 何が!
発電所の連中は言ってきた! 置いてあるカルトーンの……つまり私の!
研究所のシステムを使わせてくれと! 自分たちのミスだろうが! 知ったことか!」
研究所のシステム? ……話が、なにやら怪しくなってきたな。
マヌガン『放射線を遮蔽するシステムの事を、以前話していたからだろうな……
あの装置はそんなものではない! あったとしても、使わせて等やらんが……
あれは、原子力発電所を爆弾へと変えるシステムなのだからな」
………………は?
マヌガン『当時相談されたのだよ。 敵国の原子力発電所を、爆弾に変える装置は出来ないかと。
そうすれば、敵国に大ダメージを与える事が出来るからと、な」
……当時の状況なら、有り得ない相談じゃない。
可能なら、相手に恐ろしいダメージを与える事が出来る。
何しろ、設置さえ出来れば遠距離からの攻撃を行わなくとも電力インフラを完膚なきまでに破壊出来る。
加えて爆発の威力次第では、周辺を徹底的に破壊する事も。
こいつなら、恐らく……いや、間違いなく爆発力を核かそれ以上にするだろうと、容易に想像出来る。
つまり原子力発電所で、核を爆発させるという最悪の状況を作り出せることになる。
嘗てのかの国がそれを可能にする偉才……悪才をもった科学者を要していたなら。
悪魔の提案を、持ちかけても不思議ではない。
マヌガン『実に面白いと思った…話には興味がわいたよ。
だから秘密裏に造って、あそこに設置したのさ。
緊急時の防衛装置と偽ってな。 今となっては、もっと別な理由をでっち上げれば良かったと反省している」
ストラ「何故そんな……」
マヌガン「要求が喧しくて、そろそろ連中も鬱陶しくなってきたのでね。
後始末と証拠隠滅の為さ。 完成には少し時間がかかると誤魔化して。
……後は時を待つだけだった。
数年で街はさらに発展し、多くの人間に、命に溢れる。 その時に……」
だが彼らも想像だに出来なかっただろう。
あの男は、そのシステムをよりにもよって彼らの設置し時を待ち。
マヌガン『装置がすべてを、吹き飛ばす。
そうしたら周辺数百キロもの爆発の様子を、この研究所で観察する予定だった。
国は混乱。 関係者は死亡し、記録も研究所と共に爆破。
メインの研究所を別国に移設し、私は有用な実験結果を手に新天地へ……
……だがそれは叶わなかった。 愚か者共は予定より早く発電所を破壊した!
おかげで実験も出来ず、しかも汚染を広げ実験動物共は使い物にならなくされ……」
最も発展を遂げた時を狙い、滅ぼそうとしていたのだから。
悪魔の所業としか言いようがない。
マヌガン『研究結果まで狂った! 結果一時的にここを離れ、新しい研究所を』
ストラ「もういい」
時間稼ぎのつもりが、悪運で幸運だった。
こいつは。
ストラ「もう黙れ」
この世に生きていてはいけない奴だっていうのが、よく分かった。
アナウンス『まもなく、到達します』
耳に待ちかねのセリフ。 さっさと、終わらせよう。
これ以上奴をのさばらせるのは。
子供の、教育に悪い。
マヌガン『黙れ……だと? 貴様……この……神にむかっ……』
ストラ「……お前が神だと? 冗談は止せ」
いきなりの冗談に笑いが出る。
これまで生きた世界には、神も居た。
良いの悪いの、訳のわかんないの。
楽しいの腹立つの、清楚なのエロいの。
強いの弱いの、頑張ってたりそうじゃなかったり。
まあ、とにかく沢山居た。
それと……
?「僕はただ……僕の世界の命が」
ストラ「……」
?「ほんのすこしでも、元気になれればそれでよかったんだ」
ストラ「………………ないな。 うん、本当にない」
マヌガン『何?』
ストラ「いろんな神様と、照らし合わせても。
お前が神だと判断する要素が、ゼロって言ってるんだよ」
見た目だけじゃない。 その在り方も。
正直、ショボい。
何の威光も感じない。
恐怖を感じろとでも? 感じるわけもないから無いのと同じだ。
マヌガン『……貴様には、罰が必要だ。
地球を滅ぼす前に……決めた。 お前を、確実に葬ってやる。
私の邪魔を……誰よりもしてくれたからな」
ストラ「お前があたしの邪魔をするからだ」
マヌガン『黙れ!! 黙れ黙れ!! 貴様のした事は何よりも許せん!!
貴様が現れてから、すべてが崩れた……貴様のせいだ……
実験台などにするものか。 苦しめもしない。 その時間さえ私には害悪だ!
お前の存在を否定する……この世になどいてくれるな!!
この私の視界にも、意識にも!!
一切合切から、消し飛ばしてくれるわ!!!<ズリュゥゥウ!!>」
巨人の背中から赤い……あれは、触手?
虎龍『(ストラ、エレベーターからなんかキモいのがそっちにいった!)』
……なるほど、確か幾つかはエレベーターに送ったとか言っていたな。
中にまだいたのか。 それもこっちに集めたんだな。
虎龍『後、何かでっかい変なのもそっち行ってる』
ストラ「……ああ。 了解した」
虎龍『落とす?』
ストラ「いらないよ。 <ゴゥン…ゴゥン…>軌道エレベーターを、そのままよろしく」
響く低音を横に、通信を止める……なるほど。
こうきたか。




