040:姫王出座
ラティズ「軌道エレベーター一本の大質量を制御する……完璧な制御?
そんなもの、既存科学では絶対に……」
カレル「不可能ではありません。 目の前で起きた事がすべて」
そう、この現実世界でも。
あたし達の力は、問題なく行使できる。 出来ている。
ラティズ「<ビビッ>……巨人に、高エネルギー反応。 遠距離攻撃?!
こっちに照準している! 威力は……届くぞ!」
向こうも盛り上がっているようだ……丁度良い。 こちらも出向くとしよう。
カレル「姫様。 これが王国」
万能ではないが、出来る事は多い。
カレル「これが我ら」
絶対ではないが、勝ち目は大きい。
ストラ「そして、これからあたしが……貴女の想念を払う。
……みんな、ちょっと行ってくる<ヴン>」
これがあたしの……俺の生まれ育った世界を。
終わらせない力だ。
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マヌガン「エレベーターが切り離されただと?
離脱は私の権限でしか出来ないはずだ……そもそも、装置も破壊した」
巨人と一体化したマヌガンは、視界の中に無数のモニターを展開している。
当然オービタルリングや軌道エレベーターの情報も、リアルタイムに表示されていた。
先ほどからエレベーターに衝撃を与え続けた結果、エレベーターはまもなく破損。
その際に、制御ギリギリまで無理をさせていたリングも崩壊するはずだった。
ここから直接エレベーターやリングを攻撃する手段もあったが……そんな真似はしない。
面白くないからだ。
数万年を経て育った人類文明というオモチャがあるのだ。
楽しむだけ楽しまなければならない。
軌道エレベーターの倒壊に、為す術無くはじけ飛ぶ国。
オービタルリングの落下で、己の最後にのたうつ命ども。
すべてを観察し記録し、心ゆくまで楽しむ。
これはこの世で自分だけに許される、至高のエンターティメントだ。
しかも実益も兼ねている。
そこら中に溢れる魂は、すべて回収して今後使い潰す。
一切の無駄がない。 正に完璧……だったのに。
マヌガン「……余計な真似を……」
興がそがれた……非常に。 非常に不愉快だった。
楽しみを奪われた。 誰かは知らないが……
マヌガン「ラティズか? ……だれでもいい。
何も出来ぬとほおって捨て置いたが……」
別の策は用意してある……だが、それはリングが崩壊した時用だ。
それだけではリングは崩壊しないし、何よりつまらない。
今は使い所では無い。
……ならば。
アナウンス『長距離攻撃兵器群、回路起動。
ターゲット、地下研究所。 対象周囲数十キロの壊滅を予測します」
ジトンの長距離兵器を起動する。 威力は十分。
地下の研究所もろとも、全員を葬る。
アナウンス『警告。 攻撃時の衝撃で周囲の隠蔽結界の損壊が確実。
これにより、周辺の人類文明の致命的な被害が確実です』
マヌガン「ならば範囲を広げろ。 壊滅しなくとも良い……人の多いところだ。
軍事基地でも住宅街でも、イベント祭事なんでもいい。
人の多い所を適当にロックして当てろ。 多く殺すんだ」
まだ本格的な運用をしていない兵装だ。
これから、効率よく地球人を殺さなければならない。
ついでに、やっておこう。
マヌガン「ああ……そういえば、狐共も逃がしてくれたんだったな。
貴重な資料をよくもやってくれたものだ」
妖狐の里の獣は、研究対象として重要だった。
王女の力を導き出した技術のみだけで無く、彼女らの能力も面白い。
数も揃えていたし、うまく生かし続けて実験と研究をおこなうはずだったのに。
マヌガン「里は始末を付けていたが、今なら……ああいいや。 面倒だ。
ならば、私以外に見つからぬよう全て焼き潰して……<ピピ>何?」
破壊的な一撃を放とうとしたその時。 自分と研究所の間の空間に何かが現れる。
マヌガン「転移? ……貴様は」
ジトンのセンサーは、それを確実に捉えていた。
物理現象を無視して、中空に立つ人影を。
白金色の髪を靡かせた少女……ストラ・ツァラトゥストラの姿を捉えていた。
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研究所との射線にあたしが入ることで、攻撃が中止された。
……最も、やめたわけじゃないのだろうが。
ストラ「<ゴォ……>……」
巨人と、改めて対峙する。
全体的に白い装甲の、まあそこそこ巨大な奴だ。
ネクロマンシーとやらの魔法で、よくもまあここまで作った物だ。
……全方位の通信。 奴か……セキュリティを確認……接続。
研究所にもカレルに頼んで…
マヌガン『何をしに来た』
響く声……画像は出てこない。 まあ。中身などとっくに巨人に解けているのだろうが。
ストラ「止めに来た」
マヌガン『……貴様は、何故私の邪魔をする。
地球人をこれから殺さなければならないのだ。 どいてくれないか』
ストラ「大量虐殺する馬鹿みたら流石に止めるわ、何言ってるんだお前」
心底理解出来ない口調も含め、こっちこそ同じ気持ちになる。
こいつは、自分が地球を滅ぼすことに何の疑問もない……
命を奪うことを、当然だと感じている。
今もあたしが出てきて攻撃を止めていなければ、恐らく結界の外にも攻撃を……
ストラ「おまえこそ、どうして地球を滅ぼそうとする」
マヌガン『知れたこと。 魂を回収するためだ。
今後の計画のために」
ストラ「ならなんで科学者のお前が、手ずからやってるんだ。
効率の悪い事を。 命を回収したいなら、もっと手があるだろうが」
もし命を効率よく刈り取りたいのならば、もっと効率よく行えるだろう。
それこそ専門の存在が居る。 軍隊だ。
圧倒的な軍備と科学力を用いれば、地球などひとたまりも無い。
衛星軌道から爆撃するなりすれば、数日を待たず人類は滅ぶ。
望みの魂は畑に生える野菜のごとく、そこら中に溢れることだろう。
その魂の回収さえも、軍隊が行えばよい。
……それを、奴が想像すらしないわけがない。
まして奴は科学者……研究者だ。
己の探求にすべてを費やし、それ以外の雑事など徹底的にそぎ落としゴミ箱へたたき込む人種だ。
なら、敢えてこんな無駄を自ら行う理由は……
マヌガン『……趣味と実益……それに、復讐だよ』
何らかの妄念をもって、行動しているからだ。
ストラ「前半は論外だが……復讐? 人類に? 地球に?」
マヌガン『どちらにも』
ストラ「研究は、この星の人間の犠牲の上に成り立ったのだろう?
そして、命を刈り取り利用しようとしているのだろう?
モルモットへの感謝こそすれ、復讐する道理がない」
マヌガン『そんなもの、与えられて当然のこと。
地球人は、償わなければならない。 この私に」




