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038:例え嘘だと感じても

 もしこのまま、奴を倒した場合……あたしの王国が、他国に勝手に介入したことになる。

 あたし個人ならともかく、国として関わるなら厄介だ。

 まだ色々解っていない今、他の国を無闇に荒らすわけにはいかない。


 小さな研究所で暴れるのと、星1つ守るのは全くレベルが違う。

 まだ現実世界の、地球や宇宙の情報は少ない。

 1つの国に肩入れする事になる事態を、今だけは回避しておきたい。

 ……結局『今は』になるのだろうが。


ルルー「あくまで、自身の脅威を払う……そういう事ですね?」

ストラ「はい。 どの国の為でも無く……私達の安全の為に、奴と戦います」


 だから、あらかじめ国家の代表……ファンダリアの姫である、ルルー姫に許可を取る。

 私達王国も『たまたま』脅威にさらされていて、貴方達はそれに対処できない。

 だから、自分で『仕方なく』対処する。 それをしても良いと……仕方ないからと姫は許可を出す。

 あくまで、たまたま自分たちがここに居るから対処しただけなのだと。


 少なくとも今は『貴方達のどの国とも関係はないですよ』としたいのだ。


ルルー「……ですが」

 ん? 流石にいろいろ無理があったか?

 いくら自分たちでは対処出来ないとはいえ、余所の人間が好き勝手するのは流石に……


ルルー「……あんな化け物を、本当に相手にするのですか?」

 ……一瞬、あたしの言葉を信じてくれないのかとも思ったが……違う。

 彼女の表情から、感じ取れるのは1つだけ……恐怖だ。


ルルー「あんな巨大な……凄い力を持った化け物です。

 カルトーンでも、ファンダリアでも。

 正規軍をもってしても……どれほどの犠牲を払えば倒せるのか……」

 信じていないんじゃ無い。

ルルー「貴女は強い人です。 戦うという事は……

 あの化け物相手に……本当に、勝てるのですか? 大変なのでは、ないのですか?」


 心配してくれているのだ。 彼女は。

 かつて戦いに敗れ、すべてを失った者として。

 あたしが、この戦いでどれほどの物を失うか……もしくは、あたしが死ぬか。


ルルー「私には、貴女の王国の強さは……凄い、のは解ります。

 貴女自身の強さも。 でも……」


 知らない者からすれば、強大な相手に立ち向かう構図だ。


ルルー「心配です。 これまでとは、桁違いの相手なのですよ?

 ……国を、滅ぼせるほどの強さです……」


 まったくもって、失念していた。

 当然だ。 あんなのを相手に、戦ってくると言っているのだ。

 心配されて当たり前ではないか。


ルルー「……今でも鮮明に思い出せます。

 星が侵略されて。 街が……森が……海が焼けて……

 国のみんなが、兵士が死んでいって……

 お父様も、お母様も……ティールも、私の目の前で……砕けて……」

 まして彼女は経験しているのだ。 

 悪意を伴う強大な力で、自分の国を蹂躙され。 親しい人達を殺された。


 その苦しみは、嫌になるくらい分かる。

 嫌になるくらい、あたしは経験したから。


ルルー「もう、あんなもの……見たくありません」

 もう感じたくないと思うのは、至極当然のことだ。


 ……行動で示せば早いが、今じゃない。

 だから、言葉で彼女を安心させなければならない。


カレル「ルルー様、その心配は<サッ>陛下?」

ストラ「ご安心下さい。 私も死にたくありません。

 いざとなったら」


 正直、どんな言葉であっても安心させる自信はあたしにはない。

 絶対の勝利なんてありえなかった。

 確実な約束なんて出来なかった。

 約束で命は守られる何てことは、一度もなかった。


ルルー「なったら?」


 何度も約束を破った。

 何度も願いを裏切った。

 ましてあたしは何度も何度も……最後は負けている。

 だから何を言っても、何よりもあたしが。

 自分の言葉を、嘘くさく感じる事になる。


ストラ「仲間に頼ります。 私の力が及ばなくとも」

 それでもいい。 嘘くさくても。

 この場で通じそうな言葉で、安心してもらう。

 ルルー姫が、ティールに信用を置いたように。

 あたしの仲間に頼ると……カレルもいい意味で凄い奴だから。

ストラ「仲間が居れば、負けることはあり得ません。

 そうだろう?」


 仲間の1人……カレルは、無言のお辞儀で返答する。

 ……どうかな? 少しでも……安心して、くれるかな?


ストラ「無理無謀は致しません。 私達は、あの巨人を制することが出来ます。

 どうぞご心配なく。 私と、仲間達を信じていただきたい」

 一切の嘘のない言葉だ。 そこに後ろめたい要素などない。

 死ぬ気も負ける気も無いこの気持ちが。

 目の前の、恐怖に怯える姫の心に届けば……


ルルー「………………解りました」

 しばしの沈黙と、続く深い……決意を感じさせる息。

ルルー「私の……ルルーの名において。

 あなたの王国の力を振るい、あの巨人に対処することを許可します。

……ご武運を。 どうか、無理はしないで……」

 

 ほんのちょっぴりでも、安心してくれればそれで、少し前に進んでくれる。

 ほんのちょっぴりでいい。

 後は、こっちで回せば良いのだから。


 見せつけてやろうじゃないか。

 たかが巨人如きで、傷つくようなあたし達ではないという事を。

 たかが星を滅ぼす程度の、児戯に怯えるあたし達ではないという事を。

 王女様の怯えを、呆れに変えて安心させて、やろうじゃないか。

 徹底、徹底的に。


と、いう訳で。 現状国の代表たり得る彼女から許可を得て。


 後顧の憂い無く。


ストラ「感謝します。 ……と、言うわけだ」


 思いっきり。


?「聞こえてたー。 ええのん?」

ストラ「ああいいぞ……へし折れ」

?「了~解」


 暴れることが出来ると言う訳だ。 

 

 ルルー「今の通信は……」

 疑問に答えるのは、あたしでは無く。

アナウンス『緊急事態発生。 緊急事態発生。

 軌道エレベーター、接続部に異常発生」

 研究所のアラートだった。


ラティズ「接続部?! 何があった?!」

アナウンス『接続部分、全損確認。 リングとエレベーターとの接続が破断しました。

 オービタルリングからの、エレベーターへの全回線途絶。

 通常姿勢制御装置全壊。 緊急姿勢制御機能停止。 

オービタルリング、軌道エレベーターの牽引力ゼロ。 緊急制御開始します。

 姿勢制御……問題なく稼働中」


ラティズ「……え? えっと……え? どう言う……」

ティール「何があった?! 何が起きているんだ?!」

テティ「ラティズ……これって」

ラティズ「……ああ。 軌道エレベーターが、リングから切り離された。

 リングは今、姿勢制御を行っている……こっちは大丈夫だ」


ラティズ「……問題はエレベータの方だ。

 エレベーターは、リングに吊り下げられている状態だった。

 その支えがなくなった……つまり、このままだと」

おかね「吊り下げられていたものの、糸が切れたという……あ」

狐「……軌道エレベーターが、崩落します。

 そしたら、地球を一周するように落ちてきて……大災害です」


 その通り。 鞭が巻き付くように地球にエレベーターが倒れてくることになる。

 普通ならば、そうなる。


 しかし、ならない。 普通では無いから。

 あたしたちが、した事なのだから。


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