037:自己防衛的武力行使
おかね「ええいもう訳分からんぞ!<ズゥン!>わっひゃあ! 説明よろしくなのじゃ!」
狐「はぁい! あれだけの大きい物を動かすのには、普通に押したりじゃ無理です!!
だから<ズゥン!>っ! 慣性制御……あのエレベーターがその場所に留まる力を制御……
動かしやすい状態を作って、重力を使ってあんな巨大な物体を動かそうとしてるんです! たぶん!」
おかね「たぶんって何じゃよ?!」
狐「慣性制御って、結構作品事にいい加減なんですよ!
本とか事に全然違う事もあるので!」
この子、そういえば子供の頃から本が好きだっけ。
さっきから妙に詳しいと思ったけど……面白いところで役に立つな。
本人は自信なさげだけど、結構あってる。
モニターの向こうでは、エレベーターの表面に思い切り平手をたたき込んでいる。
その度に、空まで届く建造物は目に見えて揺れていた。
そう、『目に見えて揺れている』のだ。
遠くから見ているにもかかわらず。
奴が行っているのは、2つ。
1.慣性制御による、大質量物体の干渉。
2.重力制御による、広範囲にわたる大質量物体への指向性重力変化。
いくら巨人の手の平が大きく強くても、叩けば壁に穴が開く程度にしかならない。
エレベーターの巨体が持つ慣性……その場所にあり続ける力が勝るからだ。
壁面が破壊されても、エレベーターそのものへの衝撃は少ない。
そこに慣性制御によって、膨大な慣性を無効化……動かしやすい状態を作る。
さらに指向性の重力を広範囲で発生させ、エレベーターにたたき込んでいるのだ。
すると現状の通りになる。
例えるなら、山のように巨大な手がエレベーターの巨体を叩きのめすような状態に……
巨人の力を、広範囲に伝える事が出来るようになるのだ。
ラティズ「リングに衝撃波が伝わっている……! このままでは、リングが損壊するぞ!」
衝撃はエレベーターのみならず、オービタルリングにまで届いているようだ。
……まずはそっちを止めるか。
準備は、もうできている。
ストラ「ルルー姫」
その前に、やって置くことがある。
ルルー「ストラ様?」
ストラ「現在の状況は、地球ならびにファンダリア両国の全能力を用いても、解決不能の事態……そう、判断できますか?」
ティール「何を言って……」
ティールはこちらの意図を掴みかねているようだが……
ストラ「そして私達……王国は、それに巻き込まれ、貴方達は私達を守れない。
……いかがですか?」
ルルー「………………はい。 地球もファンダリア、恐らくカルトーンも。
現在の状況を、恥ずかしながら解決することは不可能と判断出来ます」
最初きょとんとしていた姫様の顔が、ゆっくり変わる。
政治を行う者の顔。 為政者の顔に。
ほわほわしてるようで、中々出来る人のようだ。 好きだな、こういう娘は。
ルルー「おかねさん。 どうですか? 地球でこの状況を解決する手立ては?」
おかね「む? ……無理じゃ、な。
時間、人員……いずれも致命的に足りぬ。 そもそもあの巨人に勝てるかどうか……」
狐「仮に国際的な協力が出来たとしても、時間が足りませんね」
こういう時、真っ先に思いつくのは狭範囲を破壊するミサイル攻撃。
もしくは最後の手段として戦術核。
まあ……いろいろ難しいだろうし、科学力の差がありすぎて壊滅する可能性もあるか。
……そもそも、地球の方は現状を把握しているのか?
ルルー「ファンダリアは……言うまでもないですね。 副所長、どうでしょう?」
ラティズ「……この星やリング、エレベーターには多少の防衛用火器はある」
狐「それで、攻撃を行えば……」
ラティズ「それが……エレベーターとリングのシステム、両方の防衛機構からの……」
ああ、そりゃあそうか。 そんな危険なものを放って置くわけも無いな。
ラティズ「回線途絶の警告を出している……マヌガンの仕業だろうな」
狐「破壊された……と言う事ですか」
先手を打たれたか。
現状1番脅威になるのはそれだったのだろうし、まあそりゃそうか。
ストラ「ちなみに、威力は?」
ラティズ「スペースデプリを打ち落としたり、敵が攻めてきた時の時間稼ぎ程度のものだ。
本気で攻めてきた軍隊相手では、勝ち目は無い」
ルルー「そもそも、リングには軍は配置されていないのですか?」
地球は実際、カルトーンに占拠された状態だ。
なら、軍の一部を置いていても可笑しくない……はずなのに。
先ほどから、ぐの字も出てこないのは確かに妙だ。
ラティズ「ここもリングも、最低限の職員しかいない。
地球は、マヌガンの希望で実験施設という扱いなんだ。
……まだこの星は、恒星間航行技術はもっていないからね」
おかね「宙に上がれぬ我らは、驚異にすらならぬという訳か」
まあ、おかげで軍隊と怪物の混成なんていう事態にはならなかったのだけど。
奴にとっても軍は実験の邪魔なのだろう。
だから軍からでは無く、警備に犯罪者を雇い続けていた。
外部からの干渉を無くし、自分の裁量で、好き勝手をするために。
ラティズ「太陽系の外……オールトの雲? に駐留軍が居る。
状況は……ここからじゃ解らないし、通信は避けたい」
軍はマヌガンの味方になるだろうし、虎の尾は踏めないか。
ルルー「エレベーターのシールドの復帰は?
後、攻撃手段ですが……貨物船を遠隔操作で衝突させるとか……」
ラティズ「どうやら、シールド発生器は物理的に破壊されたようだ。 もう復旧は出来ない。
貨物船は脱出に使っているが、数隻なら使えるかもしれない。
けど、出来たとしても正確に墜落させられるか解らないし、もしエレベーターに衝突したら元も子もない」
つまり、この地球上で。
あの巨人の行動を止める事は『誰にも出来ない』と言う事になる。
ストラ「つまり、万策尽き対処不能……と言う事で宜しいか?」
ルルー「その通りです」
地球の破滅を防ぐ手立ては、もはやない。
たった1つの勢力以外は。
ストラ「結構。 では、提案致します。
これより、我が王国は『安全確保の為』に、この緊急事態への対処が必要と判断。
現状脅威への自主的な武力行使を行いたいと思います。 いかがでしょうか」




