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032:イカれる狂人

 そして、時は現代へ。

 ルルー姫を救い、ティールと合流。

 後は近くまで来ていたおかね姉達が、マヌガンを結界で封じ込める。

おかね「何じゃ……奴が……」

 様子がおかしい……どうしたんだ?

ストラ「逃げたのか?」

おかね「馬鹿言うでない。 化け物共々、じっとして動かん。

 ……我ここにあらず、という感じかの。 じゃが……」

 

おかね「何か、嫌な感じじゃ。 油断するな」

ルルー「分かります……」

ストラ「姫様、なにかを感じますか?」

 かくいうあたしも、今気が付いた……なにか、しようとしている。

 この状況で一体何を……


アナウンス『マヌガン所長により、研究所全区画の自爆が提案。

 施設内に危険生物発生、全区画にて生存者無し。 

 危険生物……確認。 緊急度最高。 即時自爆の条件確認」


狐「じ、自爆?!」

おかね「馬鹿な?! 施設内に危険生物?!」

 そんなものはいない。 あたしが確認している。

 けど恐らくは……いるのだろう。

マヌガン「はぁあは。 ……そうとも、危険生物とはお前達の事」

 なるほど。 確かに奴にとってはあたし達はそうなのだろう。

 ……ああ、とくにあたしはそうだ。 普通にばけものしてる。


マヌガン「まさか、狐共も逃がしたとはな。

 だが構わん。 この忌まわしき過去の思い出とともに吹き飛ばしてくれる」

 

 珍妙な笑顔で腕の手甲を操作している……コンソールか。

 だが……

ティール「そこから逃げられないお前はどうする!

 その危険生物と心中でもするつもりか!!」

 そうだ。 奴はあの結界の中にいるが……まさかそれを当てにしているとも思えない。

 何らかの手段を持っているのか?

 自分だけ助かる、何かを。


マヌガン「この声は……!? 見えない……真逆、魂だけなのに声が……

 いや、そんなわけがない。 私の研究では、魂はこの小手を……」

ストラ「ストラギアの力で、魂を固定化してるんだよ。

 だから彼女は話も出来る。

 実体が無くても、床に立っていられる」


 ティールに装着したストラギアのデーターを見て分かった事がある。

 現実世界の人は、王国の人間に比べ魂の防御がほぼなかった。

 だから、ストラギアを装着した……

 生体制御を行った場合、万が一にも魂の損傷を避けるために。

 ……改めて思うけど、現実世界で使うと凄い機能だな。


ストラ「お前は、魂の研究の入り口を開けただけだ。 それだけは評価しよう。

 なのにお前は、その技術を悪用している」

マヌガン「黙れ!! この技術は私の物だ! 私が紐解いたのだ!

 この力でカルトーンの科学の最高位に立ち! 

 世界を御する!! 私が、世界を動かすのだ!」

ストラ「科学者が過ぎた野望を抱きすぎだ」


 もうそこまでいったら、科学者の領域ではない。

 魂を弄び権力を振り回すマッドサイエンティストなど、笑い話だ。

おかね「その野望のために、自分の部下のみならず地球まで道連れになどさせん!!

 言ったはず! 貴様の野望は、ここで尽きると!」

マヌガン「一度成功したならば! それは何度でも起こる!!

 だから邪魔者を排除する……所長権限で、即時自爆しろ!!」



 静寂が訪れる。 そう、何も起きていない。

ストラ「どうした? 何か問題でも起きたか?」

マヌガン「何故だ……命令する! 即時に自爆しろ!!」

アナウンス『副所長権限により、自爆の停止が行われました。

 並びに、施設内の危険生物は誤認。

 危険生物と誤認した対象に、非常警備者権限を付与」

マヌガン「何だと?! 自爆実行! 早くしろ!!」

 金切り声で命令するが、彼の望みは叶わない。


アナウンス『副所長権限において、自爆拒否されています。

 自爆は所長、副所長いずれかの拒否があった場合」

マヌガン「喧しい! 第一副所長がどこに居る! 

 まさか貴様が偽装して……」

 まあ、その手も考えたのだけど……

ラティズ『所長……あなたの、これ以上の蛮行は許さない』

 この施設の管理システムとは違う声。

 私も、そして奴も知っている声。

マヌガン「ラティズ……だと?」

 自分が踏みにじった男の声だ。


ラティズ『そうだ。 あなたにすべてを奪われた馬鹿な男だ』

マヌガン「貴様……敵に付くというのか?!」

ラティズ『今のあなたほど、的という存在に相応しい者はないだろう』

マヌガン「ちい……<ピピッ>何だ?! ……所内の権限が……!」

ラティズ『あなたの所長権限は、私が一時的に停止している。

 もう爆破などさせない。 あなたはもう何も出来ない!」


 彼に頼んだこと。

 所長に近しい権限を持つ副所長の命令で、この研究所を掌握する事だ。

 今のマヌガンがしたように、すべてを巻き込んだ自爆などを止められる。


ルルー「終わりです。 ……すべて」

ティール「……」

 奴の手によって、人生を狂わされた二人か……

 ……もうちょい、手を出していくか。


マヌガン「ふは……はぁはは……はあはっははは」

 不気味な笑いだ。 ゆっくり大きく……まるで泥沼にあぶくが吹き出るような。

 気が狂ったように聞こえる。 心が折れたように見える……だが……

マヌガン「はひはははははは!!! あーあああ………………はあ」

 やがて糸が切れたように、全身が崩れる……

マヌガン「……やって、くれたな。 肥やし風情が……よくも」

 顔だけ、ゆっくり持ち上がる。

 まっすぐ……あたしを見ている。

 底の知れない怒りや憎しみを、込められるだけ込めて。

おかね「っ……!」

狐「ひっ……」

 おかね姉達は怯えている。 それだけの殺意だ。

ストラ「……」

 ……まあ、あたしにはこれ位ならどうと言うことはない。

 受け止めてなお、怯えるには値しない。


ストラ「だったらどうする」

マヌガン「……殺してやる」

ストラ「おお、やってみろよ」

マヌガン「どこまでも……腹立たしい奴だ!!

 もう貴様が何者かなどどうでもいい……まだ何も問題は無いのだ!!

 だから貴様も、どいつもこいつもそいつも!!

 おまえもおまえもおまえもおまえもおまえもおまえも!!!

 地球のすべてを踏みにじり苦しめて……殺してくれる!!<ガシャッ>」

 キレ散らかしながら、死者の小手で……

ティール「何を……不味い!! 誰か奴を止め……」


 自分の頭を掴む。

 ああ……そうする訳か。


マヌガン「命令だ!! 私を……殺せ!!<ヒュバッ……グシャアッ!!>」


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