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031:日常の幕裏

体調不良で間が開いてしまいました。

再開します。

 ここは不思議な所だ。 見えないし、聞こえない。

 眠っているようで、起きている。 思考は出来るが、フワフワしている。

 いつからこうなのか、はっきりしない。 長いような、短いような。


 最後の記憶は……娘と一緒に、夫の研究所へお弁当を持っていった時。

 元気を無くしていく夫が心配で、娘もそれを気にしていて……


 そして……爆発があって……


 ……ここで終わっている。

 娘は……隣にいるような気がする。 生きているのか、死んでいるのか?

 ただ、気配がするだけで、触れる事も出来ないし……見えない。


 何より……夫はどこに居るのだろう?

 何となく感じるけれど、やはり解らない。

 寂しい……怖い……会いたい。 謝りたい。 

 夫と娘に、迷惑をかけてしまった。


 二人を抱きしめたい……会いたい。

 たゆたう中、流れない涙を流していると……


ストラ「失礼、ラティス副所長の奥方ですか?

 あたしは、ストラ・ツァラトゥストラと言います」


 突然、あまりにもはっきりしすぎた声が聞こえてきた。

 更に、眩しいほどの光が目に入ってきて……


テフィー「ここは……」

 気が付くと、どこかの施設の中にいた……見えるし、聞こえる。

 ふと下を見ると……

テフィー「っ……!」

 自分の体が、容器の中で横たわっている……自分の体が透けてる?

 いや、それよりも。


 隣に、同じように横たわっているのは娘で……じゃあ、つまり……


ストラ「ああ、生きてますよ。 治療はもう終わってますんで。

 ケガもきっちり治しましたんで、ご安心を」

 初めて気が付いた。 私の隣に、少女がいる。

 金髪のとても綺麗な子……肌の色が違うから、カルトーン人では無い?


 ……え? 治療は……終わって? じゃあ……

ストラ「生きてます。 まあ、今の奥方は魂だけ覚醒してる状態なんですが。

 娘さんは寝てます。 これを聞いて貰うには、若すぎるので」


 これ? ……何か聞こえる……夫の声だ。

ストラ「これを聞いて、判断してください」

 

 聞こえてくる夫の言葉……叫びは、愕然とするものだった。

 魂を弄ぶ彼の上司……危険だと聞いていたけどここまでとは。

 しかも、ここは地球という星で……その上司はここも滅ぼすという。


 何より……

 夫が、自分や娘のために苦しみ抜いたという事実。


 気が付けば、うずくまって泣いている自分がいた。

 体も無いのに、涙は出るなんて……


ストラ「……どうしますか?」

テフィー「どう……とは?」

 何をしろというのだろう。

 夫は、体をメチャクチャにされてしまった。 

 そんな状態の彼に、何を……

テフィー「治して欲しいと……元通りにして欲しいと言ったら」

 言いながら、馬鹿げていると心の中で叫ぶ。

出来るわけがない。

そんな治療方法、聞いた事も無い。

 カルトーンの医療に、肉体を1から治すなんてものはない。

 

 つまり出来るのは、夫の、命を……


ストラ「それでいいんですね? 了解しました」

 ……え?

ストラ「じゃあ、そっちも肉体に戻して……あ、服着せますんで。

 神経や平衡感覚の調整はしますけど、いきなり走ると危ないんでよろしく」


 そこからは、トントン拍子で。

 あっという間に魂が体に戻って。

 どこから出したのか。 服を一瞬で着せられて。

 

 扉が消えて、外の明かりが部屋に入ってきて……


テフィー「ラティズ……」

 そこにいる、彼の名を呼ぶ。

ラティズ「…………………………嘘だ。

 嘘に決まってる………………」

 私も同じ気持ちだ。

ストラ「だったら振り返れば良いだろう。 嘘なら何も居ないはずだ」

 嘘では無い。 確かに、私はここに居る。


 振り返って。 


ラティズ「居る訳がない……だって<クルッ……>」

 そこに。

ラティズ「……あ…………ああ……あああ!!!」


 私……私と娘はいる。



おかね「……あれは、副所長の奥方……か?」

狐「生きている? ……でも、死んだって……」

狐「うえぇ……何か知らんけどよかったぁぁ」

 確かに死んでいた。  それは、実際に確認している。


 ラティズを取り込んだ触手の攻撃を、あたしが阻んでいた時。

 すでに液状化した体を、後ろの部屋に伸ばして体を作っていた。

 

 大きな容器に二人の亡骸。


 ボブカットの、ラティズより小さい女性。

 同じ髪型の、もっと小さい女の子。


 確認してみると、確かに二人の魂がそこにあった。

 この容器の、魂を保存する機能は確かなようだった。

 体の状態を確認したが、少々損傷があった。


 なので話を聞いて、願いを叶えた。


 ……実験というわけじゃ無いが、結果として。

 地球上のいかなる技術においても不可能な事を、難なくこなすことが出来た。

 

 自分以外の家族が幸せになる手伝いだって出来る。

 ……ならば次は……


ストラ「……」

 抱き合って無事を確かめ合う二人に、少しホッとして……さて、次へ行こうか。

ストラ「おかね姉、みんな。 暫くこの人達を守ってくれないか?」

 呆けていたみんなに、頼み事があった。

 これ以上大人数で動くと、万が一の時助けきれない。

 それに……

狐「でも、脱出するって……ここは危ないし、外に出ないと」

 外か……今なら大丈夫……かな?

 ……研究所の中には、もう敵は居ない。

 ……奴は研究データーを消去している……逃げるつもりか。

 そろそろあっちが不味いな。


ストラ「研究所の中は、もう敵は居ない。

 だからちょっと、あの馬鹿野郎を叩きのめしてくるよ」


おかね「マヌガンか……自分一人で行くつもりか?!」

ストラ「そろそろ、彼女が危ない。 助けないと……もう一人も」

 ティールの様子は……そろそろ危険だ。

 彼女の姫……魔法を使う為の触媒にされている。

 そして今、マヌガンは二人の命に手をかけている状態。


 実に好都合だ。

 二人とも、近くに居るのでやりやすいじゃないか。


ラティズ「私達にも、何か出来ることは無いか?

 あの男は……許しては置けない。 放置してはいけない。

 ここで……止めなければ」

狐「同感です。 あれは、世に災いをもたらします。

 あまね君、なにかやらせてください。 何かありませんか?」

 

 一矢報いたい、彼女達の気持ちも分かるのだ……よし。


ストラ「副所長ご家族は、流石にダメだ。

 娘さんを守るのは、家族の仕事のはず」

ラティズ「……! 確かにそうだ……」

ストラ「だから……頼みがある」

ラティズ「頼み? ……ああ、何でも言ってくれ。

 出来る事なら、協力は惜しまない」


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