030:それは日常的な事
おかね「生き返らせなくても良いと……選んだのか」
家族を守る為に、望まない研究を続け。
家族を救う為に、蘇りを望み。
家族の為に、蘇りを諦める。
その心中はどれほどの葛藤があったのだろうか。
ラティズ「悩んださ。 今でも悩んでいる。 それでも生き帰って欲しいとも思った。
……はは、弱いな。 僕は……」
ストラ「……」
?「……ママ」
ストラ「………………あー……」
あー……
ラティズ「ちょうどここで……そしたら、いきなりフラスコソルジャーをけしかけられて」
ラティズ「所長?! これは一体!?」
マヌガン「うむ。 上手い具合に融合したな。
こうして、敵と融合させてしまうのも面白い」
ラティズ「体が……動か……!」
マヌガン「ん? ああ、動けるわけが無いだろ?
本来の体はもう溶けて、今のお前はフラスコソルジャーが再構成したものだ。
ふむ、服は見た目は似てるが似てるだけか」
ラティズ「どうして……蘇生を断ったからですか?!
所長のお手を煩わせたから……
しかし、だからといってここまで……!」
マヌガン「実はな。 ネクロマンシーの研究が良いところまで進んだのだよ」
マヌガン「私はこの星の文明を壊滅させる。
数十億の魂と、フラスコソルジャーの元を手に本国へ帰るのさ」
ラティズ「……何を、言って……」
マヌガン「いやぁ、この星での生活は長かった。 ようやく、努力が実ったよ。
カルトーンでの私の地位も、研究も。
これからの事を考えると、楽しみでならない」
おかね「この星を……?! 地球を、滅ぼすというのか?!」
ラティズ「ここまでとは思わなかったんだ!
自分がすがりついた存在が、ここまで非道なものだなんて……」
ラティズ「止めてください所長! そんな事許される……」
マヌガン「許してくれたのさ。 将軍がね。
どうせ恒星連合にも所属していない、原始的な星だ。
ファンダリア共々、この世から消えてもらう」
ラティズ「ファンダリア共々?! 一体何を……!」
マヌガン「知ってどうする? これから、命尽きるまでここに居るお前に。
? どう言う意味だって顔だな。
そのフラスコソルジャーは壁に融合して、もう固定されている。
ここに近づく者を、自動攻撃するプログラムを組んでな。
家族を守る守護者。 なかなかヒロイックじゃ無いか」
ラティズ「どうして……こん……」
マヌガン「容器に君の家族が入ったと聞いた時は、処分も考えたがね。
ピンときたんだ。 例えば今、ここの職員を殺して、魂の回収をしている。
回収した魂は、今はジトンに保存しているが容量がギリギリでね。
そこで君に、魂の保管容器を持ってきてもらったのだ。 そして……
肉体のある状態の容器に、数十億の魂を詰めるとどうなるか見たいのさ」
ラティズ「……だったら……生き返らせて……くれるのは」
マヌガン「するわけ無いだろう馬鹿馬鹿しい。
こっちは材料の魂を1つでも集めないといけないのに、減らしてどうする。
君の家族を生き返らせて、何の得も無いだろうに……金にも名誉にもならん。
生き返らせる研究なら、これからの戦争の中で好きなだけ出来るしな」
ラティズ「そんな……」
マヌガン「さて、では行こうかな……
ああ君には、家族として側に居る事を許そうじゃ無いか。
もうすぐしたら、地球中の魂が集積されて、ご家族に詰め込まれるだろう」
ラティズ「あ……ああ」
マヌガン「回収する時には……まあ、君は死んでいるかな。
思いつきで調節したフラスコソルジャーが、どれくらい持つかは解らんし。
なので、最後に言っておこう。
実験動物の提供、本当に感謝する」
ラティズ「その後、叫んでいたかも知れない。 よく……覚えていない。
気が付いた時には、所長……マヌガンは居なかった」
狐「っ………………」
ラティズ「……はは、馬鹿みたいだろ。
どっちにせよ、何の意味も無かったわけだ……一人で勝手に思い込んで、信じて。
その結果がこの有様だ……ただの一人芝居だ」
ストラ「………………」
ラティズ「…………先ほどから、ずっと触手を押さえ込んでいる君。
……すまない。 大変だったろう……ありがとう」
ストラ「………………」
ラティズ「最後に、愚痴を聞いてくれて……いや、言い訳かな。
意味は無いんだけど……もう、僕はこうして喋ることしか出来ないんだ。
涙も出ないんだ、泣いてると思うんだけど……
今こうして喋っているのが、本当に……」
おかね「もういい……もういいんじゃよ!! もういい……!
<ババッ……コォォ>……望みは、死ぬ事で。 良いのだな?!」
ラティズ「<……コクッ>あと……もう一つ。
後ろも、出来れば一気に……すべて一気に……欠片も」
おかね「……っ……解った。 あま坊! そこを退いてくれ!
その者に、引導を渡す!!」
ストラ「…………………………お仕舞い」
おかね「何?」
実際の所。
防いでいるから迷惑というのは無かったのだ。
ストラギアが、しっかりと防いでくれていたし何より。
このくらいの。 たかが高重力程度の攻撃で死んでいたら王国じゃ生きていけない。
もっと過酷な環境で作業することだってあるのだから。
ストラ「確認したいんだけどいいか?
1.事故で死んだ家族のためにマヌガンに協力を頼んだが、裏切られた。
2.研究を続けていたのは、断れば家族に被害が及ぶから。
3.蘇生を諦めたのは、人としての尊厳と家族への被害の可能性を考慮したため。
こんなもんでいいか?」
ラティズ「え……あ、ああ……そうだ」
問題はこっちだ。 正直、難しいところだ。
これ、納得して貰えるだろうか?
…………まあいいか。 どうせあたしには解らない。
あたしは『彼女ら』の事を全く知らないのだから。
おかね「あま坊。 何をしたいのかは解らん。
じゃが、もうその者達を救う術を、儂らは持っていない……
肉体を怪物と融合されたら、元に戻すなどもはや不可能だ。
まして反魂……蘇りなど……」
無いだろう。 地球でも、恐らく恒星連合にも。
反魂、死者蘇生、蘇り。
これらは、夢の領域の業だろう。
ストラ「……とまあ、あなたの伴侶にもいろいろ事情があったんですよ。
あまり、怒らないであげてほしい」
しかしあたしの王国ではそうではない。
日常的なテクニックだ。
ストラ「<パチンッ!>」
ラティズ「<バシャッ……ストッ>………………え?」
指を鳴らして、最後の仕上げ。
周囲の重力が喧しいのも含め、一度すべての肉塊を分解。
ラティズだけ再構成。 ……おお、倒れなかった。
結構バランス感覚が良い? それとも偶然?
ラティズ「……動く……手も、足も……」
服も再構成してある。 流石に『裸では困る』だろう。
?「ラティズ……」
ラティズ「…………………………嘘だ。
嘘に決まってる………………」
ストラ「だったら振り返れば良いだろう。 嘘なら何も居ないはずだ」
ラティズ「居る訳がない……だって<クルッ……>」
何しろ。
ラティズ「……あ…………ああ……あああ!!!」
裸では、格好が付かないから。
ラティズ「……テフィー!!」
テフィー「……ラティズ!!」
久しぶりに出会う、連れ合いとの抱擁には。




