025:生命錬成
何が起きた? 今のは何だ?!
切り刻まれたストラが、赤い霧状になって……再生した?
マヌガン「な……な……」
疑問が口に出たのは、マヌガンが先立った。
震える指をストラに向けようとしている。
顔には、もう先ほどの余裕など微塵もない。 あるのは……
マヌガン「何なのだ?! お前は何だ?! どうやって……」
ストラ「ふんふん……なるほど、これがあの子の、愛しのルルー姫か」
当のストラは、しゃがみ込んだまま足下の姫様を観察しているようだ。
……呟いている声が、この距離にしてはやけに聞こえるような?
ストラ「ストラギアで音声がお互いに通ってるんだよ。
……お、体は無傷か……しかし脊髄にこの線を……ふんふん。
ワナになるようなのは……これとこれ……ふん、猪口才だな」
マヌガン「聞けよ!! 原住民の分際で無視をするな!!<ギュバッ!>」
! またあのレーザー……姫様に当たる!!
ストラ「えーっと<パァン……!>」
観察を続けるストラに届く前に、レーザーが半透明の壁に弾かれる。
?! あれは、怪物の攻撃を防いだ透明な壁?!
ストラ「……そのレーザーは大方、手術用か?
指先にレーザーとか、普通馬鹿っぽくて危なくて付けないし……違ったらすまないな」
ストラはずっとこちらを見向きもせず、姫様のことを何やら確認してい……
ストラ「よしオッケ<ギシッ……バキィン!!>あらよっと」
……そして、ガラスの上部分を綺麗に引っぺがし………………え?
マヌガン「な……なぁぁ?! ななななな……?!」
ティール「す……ストラ?!」
突然の行動に、こんな奴と異口同音に驚愕してしまった。
マヌガン「ばっ、馬鹿な真似は止せ!!
姫が、ただ試験管の中に収まっているだけとでも思ったのか?
そんなわけが無いだろう!! 基本的に身体は傷を付けてはいない。
だが脳を始め、脊髄、内臓各器官に無数の機械を接続しているのだ!!」
?! ……では、このまま引き剥がせば……
マヌガン「死ぬんだよ!
外せるのはこの私だけだ! 出来ても、1年以上かかるがな!!」
ティール「ストラ……!」
ストラ「………………」
しゃがみ込んだまま、容器の上から姫様を観察して……何かを落とした?
……あれは、あの金色は……もしかして……
ストラ「……よし」
何かを確認したストラは立ち上がり、姫様に手を伸ばして……
ストラ「……<ゴボッ>……」
……姫様が……え? 溶けて……ストラ?
遠いここからでも、はっきり見えた。
姫様の姿が、一瞬で溶けて……上に浮かんで?
ストラ「よっと……<フワッ>……よし、過不足無し。
体だけなら追加はいらないな」
姫様だった液体が、ストラの両手の上で球体になって浮かび上がる。
何故か良く聞こえる声。 独り言を言っているようだが……
ストラ「ああ、安心してください。 ……ええ、直ぐ終わりますので」
誰と話している?
思考と感情が、私の無い頭の中で恐らく怒りか何かに追いつく前に……
ストラ「よっこらほい<トサッ>終了っと」
……もうこれは、魔法じゃ無い。 これは……手品だ。
瞬きをしていないはずなのに。
液体の塊は、一瞬で姿を変えて……
ティール「………………姫様が……いる……」
ストラの腕に、無傷のルルー姫が抱えられている。
マヌガン「………………………………は?
待て……待て待て待て……そんなわけが無い。
有り得ない……肉体を再構築した? いやそんな馬鹿な?!
人体を分解、再構築は不可能……まして……そ、そうだ!!
その肉体は、魂がない! 普通肉体を失えば、魂は剥がれるのだ!
つまりその姫は。
死んでいる!!!
なるほどそう言う事か!! 引導を渡してやったのだな?!
ああなるほどなるほど!!」
ストラは、怪物や犯罪者達をたちまち液状にして殺している。
……今回もそうなのか?
……なら、何故今回は姫様の体を再構築した?
殺すなら、そのまま液体にしたままでいい……
そもそも、人間を……人体を液状化して、再構築など……
??「勝手に殺さないでください」
?! ……この声は…………ストラの声真似? ……違う。
一瞬そんな事を考えたが、直ぐに否定した。
ストラ「ああ、姫様。 まだ動かない方が……」
ルルー「大丈夫です、ストラ様。 ……わ、ここは高くて怖いですね」
腕の中で起き上がり、ストラと会話する……ルルー姫の姿を見たからだ!
本当に? 本当に姫様なのか?
ティール「姫……様。 ……姫様!!」
叫んで気が付く。 今私に肉体がない事に。
声はストラギアで届いても、姿が……
ルルー「! ティール! そこに居るのですね? 大丈夫ですか?!」
……見えている? 私が?
声はストラギアで届いても、私は今姿が……
ストラ「姫様にもストラギア付けてるから、姿見えてるぞ」
ティール「!」
ルルー「……貴女の事、ストラから聞きました」
……聞こえる。 場所は遠いのに……まるで側に居るように。
懐かしい……ずっと、夢に見ていた。
あの日……ファンダリアが堕ちた時から。
ずっと……ずっと………………!
ルルー「長きにわたり、私や……ファンダリアの為に尽くしてくれたのですね」
半壊した肉体を捨てて、違法なサイボーグ手術を受けた時も。
偽装とは言え、犯罪者としてなじられ、貶められても。
未来も希望も見えない真っ暗な中を、たった一人進み続けてでも。
ルルー「貴女の忠義、心より……うう………………」
ティール「姫さまぁ!!」
出た声は、ゴボゴボと鼻水で奇妙な声になっていた。
泣いている。 泣かずに居られるものか!!
私は……私は…………この時の……
ルルー「…………ありがとう、ティール。 また、出会えましたね」
この時のために、生きてきたのだから……!!!




