020:3万年姫王解体
少しずつ、読んでくれる人が増えて驚いています。
ありがとうございます。
奴隷卿「それにさっき、救援が向かったにゃ」
戦争卿「ああ、居ないと思ったが……」
庭園をぐるりと見渡すが、居るのは戦争卿を含めた4名のみ。
鉄道卿「先ほど、DDDの光を見た。 まあ、あの2人なら仕方ない」
魔法卿「それにしても……レイラインが確立してないのに行くなんて……」
戦争卿「ああ、かなり無茶だ。 ……肉体はバラバラだろうな……ヴェル」
見上げ名前を呼ぶ戦争卿に答えるように、庭園に差し込む光が強くなる。
ヴェル『現在、銀河系とのラインを確立中。 完了まで後……』
鉄道卿「……あと少しか。 だが、あの2は」
空から聞こえた声に、戦争卿は始めて笑顔を消した。
視線の先には、表示された地球。
魔法卿「待てなかった……あの2人じゃ当然よね……」
その場にいる全員が、一切の迷い無く納得する。
魔法卿「侍従総括に、殺人卿。 2人とも、ストラを好きすぎるし」
奴隷卿「にゃにゃーん♪ みんな仲いいにゃ<ピピ……ピピ……>んにゃ?」
戦争卿「どうしたヴェル」
ヴェル『報告。
地球にて、ストラギアナンバー00、01の戦闘モード起動を確認。
戦闘反応を確認。 交戦状態に入りました」
奴隷卿「! ストラにゃ!!」
魔法卿「それに虎龍……無事だったんだ……!」
時は少し遡る。
私とストラは、ようやく研究所の中枢……管理区画へと到着していた。
研究室全体の管理を行う場所は、本来なら職員が何人も居るはず……だった。
ティール「ここもか……」
こちらも、通路同様にアーマーを着た犯罪者がそこら中にめり込み赤い花を咲かせている。
違うのは、さらに白衣を着ていた職員達も加わっていることだ。
彼らはアーマーを纏っていない……
あの怪物にかかれば、同じ運命を……いや、さらに悲惨だろう。
肉体を密閉するアーマーがない分、体がそこら中に飛び散るのだから。
ストラ「……カルトーン人は、肌が赤いのだな<パチンッ>髪は白か……」
コンソールの上で千切れた体を確認した後、指を鳴らしてすべての遺体を赤い液体へと変換した。
……生きているものだけじゃなく、死体も溶かすのか……
ストラ「ちゃんと対抗措置を執らなければ対象の生死を問わず、干渉出来る」
心の映像を見たのか、疑問に答えてくれた。
つまりは……生物に干渉する魔導ではない?
ストラ「もちろん無制限、防御無視ではない。
言ったとおり、対抗措置を取れればあたしは干渉出来ない」
死体が溶けたことで、モニターとコンソールが使えるようになった。
早速動かしてみる……機能は生きているようだ。
ティール「……このストラギアのようなもので、か」
左腕……アーマーの下に填まっている、金の腕輪。
先ほどのような防御力があれば……
逆に言えば、それが無ければどうしようもないと。
ティール「なるほど、な。 各部の映像を……<ヴン……>っ……
大きなモニターに、研究所の地図が表示される。
複数のモニターが研究所内の映像を……
潰された死体しか映っていない映像を映し出す。
……怪物の姿はない……あの一体だけだったのだろうか?
ただの一体で、これだけの殺戮を?
……だったら、もしこいつらが一体だけじゃなかったら?
……もし、あれ以上の存在が。
数百生み出されたら……
ストラ「……この禁止区域が、所長の城だな」
この管理区画から、さらに下のエリア……所長や限られた者が入れる場所。
すべての区画が、機密の文字と表示された四角に塗りつぶされていた。
ティール「……所長と副所長は、ここにいるのか?
<ビービー>……内部は見れない……局長だけが解除できるのか」
モニターにエラーの表示。
当然か、重要区画にそう簡単に手を出せるわけが……
アナウンス『封鎖区画のアクセスを解除します。
ようこそ、マヌガン所長」
………………は?
ストラ「……よし、内部の映像を……」
ティール「待て……今何をした?」
流石に無視できず、思わずストラに詰め寄ってしまう。
自分を見上げる少女は、少しも表情を変えない。
ストラ「うん? その所長のデーターを偽装して」
ティール「開く鍵は、所長のフルモデル生体データーだぞ?!」
もしこの鍵が指紋や虹彩などなら、再現可能かもしれない。
目の前の彼女なら、もしかしたらやってのけるかも知れないと思う。
しかしフルモデル生体データーは、不可能だ。
必要なのは、本人かどうか。 言葉にすれば単純だが、実行するなら逆……困難を極める。
すべてが必要なのだ。 指紋や虹彩は当然、内臓のすべての形や配置。
体内電気……脳波のパターンも含まれる。
些細な動作の癖なども含まれ……人体そのものが鍵となる。
今は見えないが……つまり彼女は、所長の肉体そのものを……
もしそれを再現したというのなら……
ティール「……人体の完全な模倣? 人体の……作成? そんな……」
目の前の少女は……怪物は。
恒星連邦でさえ研究段階の、完全な人体の作成を行えると?
神の領域を侵す。 作り出した人体の人権など。
数々の社会的な問題のみならず、単純な技術不足によって今だ不可能な領域。
今だ誰も到達し得ない……人体の創造を……
それを……
ストラ「王国の技術なら出来る」
彼女の国とやらは……
ストラ「あたしはあたしだけで出来る
……一体、こいつは……
?『いやだぁぁ!!』
ティール「?!」
突然の男の悲鳴……重要区画のモニター?
ストラ「……こいつが、所長だな」
画面に映っている白衣を着た初老の男。
白髪に赤い肌の典型的なカルトーン人だ。
相対し、叫ぶ男……恐らく、雇われた犯罪者だろう。
顔の部分だけヘルメットが外され……体を拘束しているあの赤い触手は?!
?『なんでだ?! なんで俺達を……!』
マヌガン『最初からその為に雇ったのだよ。
本来の役目を果たすだけだ。 何も問題は無いだろう?』
?『罪を免除するのは嘘……』
マヌガン『真実だとも。 現行の法律で、死者を裁く法は存在しない』
死を告げる神のように、ゆっくりと男に迫る。
醜く悍ましい笑みで、手を男の手に伸ばして……
?『<ぴとっ>ひっ……はっ……はぐ……あ……』
恐怖のあまり浅い呼吸になり、声も出せてない。
一体何が……何をする……
マヌガン『肉体にこそ罪はあり<ググ……>』
?『やめ……あ<ずりゅ……>』
何だ……男の額から何かが……
半透明の……塊?
ストラ「……なるほど」
隣にいるストラが、何かを知っている?
ティール「これは一体何が<ズバンッ>……え?」
不可解な……いや、これは……切断の音。
何かが切られた音? どこから?
ストラ「……<ズリュ……>」
ティール「なっ?!」
横を見た私が見たのは、ストラが……ばらける瞬間。
長い金の髪が、少女の体が輪切り……え?
ストラ「<ドチャッ>」
一瞬で、金髪の少女はバラバラに。 地面に崩れ落ちて赤い血を散らす。
自分のアーマーの足にも飛び散って……
怪物「うあぁぁ……う」
あまりの事に固まりかけた私は……
声に気が付く……あの怪物?! いつの間に……?!
マヌガン「君は……ああ、確か最近副所長と一緒に入ってきた……」
声は、怪物の背後から……この声は?!
マヌガン「こちらを見ている奴がいるから、部外者から取り合えず殺したが……
お前は一体誰だ? 何をしている? どうやって認証を突破した?」
ティール「マヌガン……所長」
現れたのは……画面の向こうにいたはずの、マヌガンだった。




