018:……の言葉
銃を構え……! 銃の周りにモニターが?
アナウンス『魔導経路制御。 既存術式強化、銃身耐久上昇。
……前方物理、事象干渉攻撃確認。 防御行動」
照準も……いいなこれは!!
照準は……よし!<ガィン! ……バオッ!!!>っおお?!」
驚いた。 まず触手が半透明の何かに弾かれた。
続いてブラスターの威力が見た目からして太く、凄い衝撃になっている。
さらに、衝撃で自分の体が後ろに飛ぶと思っていたら、手の平が少し押される感触があっただけ。
そして…………
怪物「<ズドッ……ボォン!!>ごぎぇ?!」
身の丈を少し超えた怪物が、ただの一撃で吹き飛び奥の壁に叩きつけられたのだ。
ティール「……信じられない」
銃を構えたまま呟く。 照準のモニターの向こうには、壁に埋まった怪物。
さきほどまで、自分がそうしていたのと、同じ有様になっている。
……以上の驚きが、今の一瞬で同時に来たのだ。
ストラ「お見事」
後ろで、乾いた音……拍手をしているストラ。 後ろを見る暇は無い。
ティール「……このストラギア? ……一体どうなっているんだ?」
問題ないようだ。 急ごしらえだったが。
ティールが装着した、ストラギアの出来映えに満足。
いきなりなのに、しっかりと使いこなした彼女には、拍手を送る。
かなり唐突に、訳の分からない装備を与えられ使用したのに、疑問を持たず……否。
最優先事項を間違えず、それを使い相手を倒すという行動を、粛々と行ったのだ。
彼女は騎士団……それも団長と言っていたが。
実に素晴らしい能力の持ち主だ。
今だ出会っていない姫や、王たちが認めたのも分かる。
ストラ「それ一つで……そうだな。 そのアーマーの全機能を使えると思えば」
ティール「これ一つで? ……信じられない」
ストラ「現実に出来ただろう?」
ティール「ああ……疑いようがない」
ストラギアには、複数の能力が標準で内蔵されている。
攻撃、防御、治療、情報管理、索敵……戦闘で扱う、大体の機能は備わっている。
そして人工知能が装着者の意識や周囲の情報を確認して、最適に能力を使用する。
先ほどの、
1.武器の強化、全身の防御向上。
2.相手からの攻撃を防御。
(特殊能力があったようだが、防御している)
3.武装にない照準の展開や、武装発射時の反動制御。
こんな感じで、装着者をサポートしてくれるとても便利な装備だ。
ただ彼女のそれは、殆どの機能は制限してある。
未知の機械をいきなりでは、例え彼女であっても使いこなせるとは思えない。
……最悪制御に失敗し、大きな被害を出してしまうかも知れない。
彼女を見る限り、正直杞憂だったかもしれないが。
ティール「光るモニター……照準か。 他に術式が空中に浮かび上がるのは初めて見た」
ストラ「そうなのか?」
……魔導を使う文明なら、魔方陣が空中に浮かんだりしないのだろうか?
ティール「物体の表面に映像を出したり、文様が出るのはあっても……
こんな風に、映像や模様が直接出るなんて、見たことが無い。
魔導が発生させた、炎などの物理現象は見えるが……」
会話の間も、ストラギアが出す照準から、1ミリも目を離さない。
本当優秀だな……
ストラ「詳しい説明は後で……まあ、そういう仕様だと、今は」
ティール「ああ……気絶したのか? ……」
怪物は壁にめり込んだまま、ピクリとも動かない。
ストラ「聞けば良い。 答えてくれる」
ティール「なるほど……どうだ?」
ストラギアは彼女とあたしの、ざっくりとした会話を理解して。
アナウンス『対象、生命反応健在。 意識レベル3。
戦闘能力、健在。 敵性反応……なし」
ティール「…………とどめを刺す<チャッ……>え?」
横を通りながら、銃を下ろさせる。
そのまま、怪物……の側へ。
ティール「危ないぞ!」
ストラ「それが? ……状況が変わるまで、銃は下ろしておいてくれ」
我ながら、ぶっきらぼうに返した。
……まあ、ちょっとしょうがないのだ。
ティール「……」
聞いてくれたようだ。 銃を下げたまま、怪物とあたしを見ている。
どういう事だ?
とどめを刺そうと思ったら、いきなり銃を下ろさせ近づいていく。
まだ相手は意識もある。 敵性反応……恐らく、戦う意志?
今は無くなっていても、感情は突然燃え上がるもの。
いつ、攻撃してくるか。 いや、もしかしたら自動で反撃も……
ティール「(いや、ストラなら大丈夫か)」
忘れかけていた。
少しの間、会話を行える存在だと分かってしまったからか。
彼女も……想像の埒外の存在だという事を。
怪物「ああ……あ」
ストラ「……」
呻く怪物の正面に立つストラ。
ここからは、表情が見えない。 だが……何故だろう。
……悲しんでいるような……
ストラ「……何か言うことはあるか?」
これまで聞いた事の無いような、静かな声だ。
優しささえ感じる……だが、何故怪物にそんな……と。
疑問に答えたのは、彼女でもストラギアでもなく。
怪物「……おかあ……さん……どこ? いたい……よ……いたい……」
ティール「?!」
怪物の発した、一言だった。
ストラ「………………お母さんは、隣でねているだろう?」
驚く私を置いて、ストラは話しかける。
そうだ……彼女はまるで、そう……
怪物「……どこ? みえないよ……お姉さん? 誰?」
……子供に、話しかけるような。
ストラ「見えないのは、君が夢を見ているからだよ。
私は夢の妖精。 君を悪い夢から助けん来たんだ」
子供をあやすように、劇のワンシーンを演じるように。
時々戯けながら、優しく言い聞かせる。
怪物の声は低く濁った声なのに、今の幼いような感じはまるで……
ストラ「悪い夢を見ているんだ。 目が覚めたら」
手を怪物の頭に当てて……
ストラ「……おはようと、言ってあげなさい。
さ、眠って。 悪い夢はお仕舞いだ」
怪物「うん……ありがとう。 妖精さん<パシャッ……>
地上の時と同じように。
赤い巨体は、赤みがかった半透明の液体になって、床へと流れた。




