017:ストラギア
……こいつは何者だろうか?
情報を総合する。
・見た目は大きな狼か、犬のよう
・頭は丸く、人間と言うよりロボットのような球体
目が真っ白で、余計にそう見える
・全身真っ赤。 返り血だけではなく元から
・体に数本の触手が生えている。 あれが攻撃方法か
あたしの能力で確認できるのは、こんな感じだ。
さらにこいつは……強い。 少なくとも、あたし以外は誰も対抗できない。
……もしかして、これがカルトーンがファンダリアを侵略してでも欲しかった何か?
ティール「どうした?」
少し立ち止まったあたしに気付くティール。
……調査を続行、建物内検索続行……ふむ。
大体把握した。
差し当たりの危険度は、廊下を徘徊しているそいつかな。
情報を共有しよう。
ストラ「敵を発見した」
ティール「! どこだ?!」
ストラ「この下の階……一時、マイナス20……二時…右奥へ移動している」
こちらには、今も気が付いていないようだ。
ティール「なるほど……そんな奴、知らないぞ」
手早く分かっている情報を共有する。
相手の事を知っていると言うのは、大きなアドバンテージだ。
未知の敵は、何より恐ろしい。
逆に情報があれば、対策も考えられるし、何より安心感が違う。
ティール「……それにしても、そんな詳細な索敵が出来るなんて聞いていないぞ……」
何故教えてくれなかったのか。 当然の疑問だろう。
もちろん、聞かれなかったからなどと意地悪をしたのではない。
先ほどから試し続けていたのだ。
王国の技術。
あたし自身の能力を。
使えない能力があるのか?
使えたとして、もしくは条件付きはあるのか?
ここへ来てから3人を殺し、彼女に出会うまで試した結果は……問題ない。
ならば次は、更に確認をする。
持てる全能力を。
扱いうる、全技術を。
だからこうやって……作る事が出来た。
ストラ「ティール、これを」
手渡したのは、黄金の腕輪。
フラクトロンに似ている……しかし、別物。
ティール「これは……これは一体?」
驚くのも分かる。 どう言うものか、は分からなくても。
それ自体が、彼女の見たことの無いものだからだ。
具体的には……
ティール「腕輪の周りに、何か……金属の霧? 映像じゃ……ない?」
腕輪の外周には、キラキラした銀色の何かが、星のリングのように浮かんでいる。
映像ではなく、実体。
だから彼女は指でそっと触ると、霧は上手い具合に避けて……元に戻る。
ティール「こんな物質、見たことが無いぞ。 ストラ、これは……」
ストラ「ストラギア。 フラクトロンと……まあ、似たようなものだ」
ストラギア? 聞いた事は……ない。
彼女の名を冠しているのだから、彼女縁のものだろう。
手渡された腕輪……ストラギアを、よく見てみる。
……細かい金属の霧? のような何かが腕輪の周りを廻っている。
魔導技術によって作られたアクセサリーに似ているようで……
……明らかに別物だと、見ただけで理解出来た。
ストラ「例の怪物相手に、その武装じゃ心許ない。
……周囲の構造物を拝借して、錬成した」
……今なんと言った? 錬成? 錬金術?
ティール「……錬金」
ファンダリアやカルトーンの魔導技術。
その中には、金属を初めとする物質を変化させる技術……錬金術が存在する。
現代では近代化され、素材から建材。 家屋や船まで錬成が活躍している……
これも、同じだと?
ストラ「失礼を言うが、今の貴女では怪物には勝てない。
身を守るにも、戦うにしても」
………………先ほどの死体が頭をよぎる。
怪物……恐らく触手によって、壁に叩きつけられたのだろう。
今の装備と、この義体で戦闘した場合……
ティール「……これなら、勝てると?」
魔導なら、防御を上げるとかの機能があるのだろうか?
ストラ「余裕。 貴女ほどなら、難なく倒せる……が」
攻撃を倍加させる効果も? もしくは、もっと別な何かが?
……などと考察していると。
ティール「?」
ストラは会話を止め、口元に手を当ててなにやら考え出した。
何が問題なのか、皆目見当がつかない。
……違う、見当がついた。
ストラ「気が付いたか」
彼女の視線は、壁の向こう。 ……見えているのだろう。
私は見えているわけではないが、感じたのだ。
視線を。 射貫くような、腹に冷たい夜風が吹いたような。
……見ている。 奴が。
ティール「……これはどうやって装備すれば」
ストラ「腕に装着」
ティール「アーマーを脱……」
ストラ「そのまま付けろ。 腕に直接填めるよう……動いた……こちらに来る」
ティール「サイズが……」
ストラ「やってみろ。 <……ボンッ!>天井を突き破った! この階に……奥からこっちに!!
嘘かダメならあたしが変わる! 真っ正面だ来るぞ!!
填めたらブラスターで攻撃だ。 他は気にするな! 撃て!」
これ以上の思考は死を意味する。 時間はもうない。
疑問を無視して、彼女の言うとおりに。
……左だ。 そのまま、腕に…………おお?!
ティール「通り抜けた……腕に直接装着……<ジャキッ>」
驚きながら、ブラスターを構える。 すると……
アナウンス『ストラギア、R157669……』
頭に声が聞こえる。 長い数字をすらすらと述べた後。
アナウンス『緊急用につき、機能制限があります。
戦闘行動確認。 積層防御壁『ミルフィー』起動」
視界に大量のモニターが出現した。 アーマーの中なのに、はっきり明るく見える。
目を閉じても……ARか。 しかし、何かが違うような。
……モニターに文字や絵が流れている。 何かは……起動……物理系? 事象干渉……
アナウンス『所持武器解析。 ストラギアの最低戦闘力を著しく下回っています。
接近対象に対処できません。威力増加を行いますか?』
ティール「……頼む」
アナウンス『了解。 ブースト開始。 機能制限により、レベル1のブーストになります』
制限? 威力が低いのか?
ストラ「問題ない」
ティール「………………」
疑う必要性はない。 違って……いない気がする。 いける気がする。
正面通路。 奥の方へ銃口をしっかり構える。
目標は……
怪物「イァァァァァ………………!」
通路の正面。 横道から現れた怪物。
……事前情報がなかったら、悲鳴が出ていたな。
狼の胴体、丸い頭。 毛皮を纏った男のように見える。
白いだけの目……口はどこだ? 全身が正面に現れ……
怪物「アァァ……ア<ビュバァ!!>」
る前に触手がこちらに!! 避け……いや、撃つ!!
迷いを捨てて、私は魔導の光に囲まれたブラスターの引き金を……引いた。




