014:かいぶつとの契約
見破られた?! 心のイメージを読むと言ったが……けど、そんな。
ストラ「あたしの見たイメージからすると、良心の呵責に悩んだからか?
昔の思い出かな、あれは。 地球より高度なのに、随分と……」
……想像しなかったか? と問われれば……そうだ、想像した。
昔を……幸せだったあの頃を。
昔の……あの日。 あの人との……あの人に、忠誠を誓ったあの時。
姫様との……
ストラ「大体事情は察している、という前提で言おう。
カルトーンはあたしと関わりは無い」
ジーン「……お前は、恒星連合の外の……」
ストラ「恒星連合? ……なるほど、複数の星々の……連合みたいなものか」
記憶のイメージを見たのか、大体察している……便利なものだ。
ストラ「そうでもない。 必要な時以外は使わない。
想像してみろ。 無意識に出てくるイメージ……例えば、腹痛でトイレに……」
ジーン「すまん。 それ以上は勘弁してくれ」
ストラ「理解してくれて助かる。 まあ、お前の敵ではない。
恒星連合も知らないし。 お前の目的を、邪魔もしない」
……嘘を……
ストラ「必要が無い。 ……むしろ、これを幸運と思わないか?」
ジーン「幸運だと?」
ストラ「お前の目的を達成するには、いろいろと足りない。
一人では。 自分自信も、そう思っている」
心のイメージで……見破られている。
……その通りだ。 目的の為、ここまでは来れた。
しかしそこで止まっている。 情報を得られないのだ。 しかも、情報を得る方法もない。
周りは一切敵だらけ。
ここは完全に隔絶され、外部との連絡も取れなくなっている。
目的を果たすまで、一体どれほど時間と……犠牲者を見逃し続けなければならないのか。
あの人に出会うまで、どこまで穢れ続けなければならないのか。
ストラ「貴女には、覚悟がある。 どんなに時を重ねても、汚れても。
達成しようという、強い意志がある。 ならば」
ストラ「化け物に魂を売る覚悟だって、あるのではないか?」
……考えてはいた。 カルトーンと事を構える戦力。
瞬く間に連中を殺しうる力、そしてこちらの話を聞いてくれる。
彼女が、もし戦力になれば……
ストラ「いいよ。 協力しよう」
ジーン「……何を考えている」
あたしから出て来るイメージを見て、目的も大体理解しているのだろう。
当然だが、彼女は自分に協力して何のメリットがあるというのだ?
ストラ「目的の為にカルトーンの基地を利用したい。
後、誘拐されたという日本から誘拐した……他にも居そうだな。
そっちの救出。 後は……まあ追々」
救出? 一体何の……
ストラ「これでも悪事を見て見ぬ振りは、しない程度の良心はあるんだ。
ある意味、安心したんじゃないか? 目の前の怪物に」
自分には、人助けをする良心があると?
私と、同じだと?
ジーン「………………私の目的を」
ストラ「邪魔しない。 もしくは達成後になにかするかと?
……安心しろ。 これでも伴侶が居るものでね。
囚われの姫を横取りするほど、飢えてなどいないんだよ」
……仮に。
彼女の申し出を断って。 その後は?
この状況を、連中に連絡できるか? そもそも……
ストラ「………………」
この化け物を、敵に回せるのか?
……それなら………………賭けるべきなのだ。
この怪物……ストラと協力すれば可能かも知れない。
忠誠を誓った主。
ファンダリア公国の公女殿下を、お救いすることが。
ジーン「俺………………私は。 ティール。 ティール、ナヴレスカ。
……ファンダリア公国、近衛騎士団隊長だった」
ストラ「良い名前だ。 国の名前も良い。
騎士に姫……虎龍やアラユルが喜びそうだ」
ストラ「へぇ、ここが」
ジーン……ティールに案内されて、プリチャピの街を進んでいる。
1900年代に放棄されたとはいえ、ここは完全に森に覆われたりはしていない。
嘗ては最先端の街としてつくられた建物、道路は未だに文明の痕跡を残している。
ティール「本当にお前は、周りから見えていないんだな?」
ストラ「ああ。 現に、監視にも引っかかっていないだろう?」
あたしは、力を使い建物に仕掛けられた監視網に見つからないようにしている。
姿も見えていないはずだ。
ティール「いったいどんな魔導を」
ストラ「この世は魔導だけが力じゃ無いんだよ、少女よ。 世界は広いのだ」
ティール「……一体お前は」
ストラ「いずれ、教えてやるよ」
ストラ「所で、さっきの話だけど」
ティール「この場所の事だな」
ストラ「そうだ。 ……ここはプリチャピ……つまり、あそこに見えるのは」
視線の先には、巨大な構造体がある。
古ぼけボロボロになった、工場のような建物……嘗ての大災害の爆心地。
ティール「チェルノブイリ原子力発電所。 そうだ」
2020年代の戦争の後、戦地の一つであるこの場所は暫く後回しにされていた。
急展開が起こったのは、2040年後半。
放射性物質を無効化、ならびに取り除く技術が発表された事に始まる。
その技術は、世界各地の汚染地帯……ここにも振るわれることになった。
当時世界中が、新技術に驚嘆する中。
2050年代初頭に除去を終了。
同時に行われていたチェルノブイリ原発の解体も完了する。
以降は、原子力に関する対策を研究する機関が置かれ、現在に至る。
これが、あたしの知るこの地の情報、世間の一般認識。
だが実際は違う。
話を纏めると……
・浄化は行われておらず、街も原発もすべて放置状態。
原発は魔導で制御されているらしく、こちらも手付かずらしい
・カルトーンは、地下に施設を作った。
・結界を張り街を隠蔽し、地球が知るプリチャピを偽装している。
と、こんな感じだ。
ティール「私の知る限りだが……」
と、前振りを付けて説明してくれたのはファンダリアらしいと言う事。
ティール「地球とファンダリア公国は、2000年代には既に地球と交流があった。
そして2030年代から、技術供与を始めるようになったのだ」
20世紀の頃から、宇宙人の噂は世界中に存在したが……
その頃の真偽は知らないが、21世紀からは間違いなく宇宙人はいたのだ。
研究者が知れば、さぞ驚くだろう。
ティール「関係が親密になったのは、王妃様が地球で大変助けられたからと聞いた」
ストラ「助けられた? 何か、事件でも?」
ティール「詳しいことは機密だった。 だが、王妃も陛下もそれを大変感謝していたようだ」
一体何があったのか?
技術供与までするほどなのだから、よっぽどなのだろう。
ティール「お前の……は違うのか?」
ストラ「? 何の事だ」
ティール「この星で使われている、フラクトロン……
あれも、ファンダリアの技術提供だ」




