06 吸血鬼、村に行く
城に忍び込んで来た冒険者を逆にやっつけた主人公(吸血鬼貴族)は、彼らの村に行くことにしました。
薄暗い城の廊下で冒険者のアマンダ、ポール、デイヴを俺が見張っていると、階段の上から執事のヤミ―が降りてきた。
「お待たせしました、レオナイド様」
「何か見つかったか?」
「多少の金貨はございました。他はめぼしい物は特に。何しろ300年も経っていたようですので」
「そうだよなぁ」
捕らえた3人の話によると、どうやら俺がプレイしていたゲームの時代から300年ほど経っているらしい。
逆に、よくこの城は残っていたもんだ。
そこはやっぱり吸血鬼が恐れられて、誰も近づかなかったんだろうな。
「さてと。後は日光をどうするかだな……」
窓から漏れる日光に手をかざすと、シュウ、と軽く音がした。
熱い鍋に触れて軽くやけどしてしまった時くらいの痛さだ。
心の準備をしていればびっくりするほどではないが、やはり少し痛い。
「多分やけどダメージもあるよな……」
まあこれくらいは仕方ないか。
直射日光に当たらなければ大丈夫なので、大きめの帽子とかで何とかしよう。
「ヤミ―。帽子はあるか? 出来れば大きいものを」
「はい。こちらに」
そう言うと、貴族が狩りに行く時に着そうなマントとつば広帽子を2着差し出してきた。
「パーフェクトだ、ヤミー」
「ありがたきお言葉」
「しかしよく300年前の服が残っていたな」
「服は我らと一緒に復活したようです」
「そうか、ありがたいな。まあ確かに服も復活してくれないと裸でよみがえることになるからな」
手袋もあったので、両手にはめておく。
「さて、服装は整ったな……おい、お前たち」
「は、はいっ!」
廊下に座っていた3人の声をかけると、かしこまった返事が返ってきた。
「村までの道と、周辺の地理を教えてくれ」
「道ですが、ええと……」
ポールが床に石を並べたりしながら説明してくれる。
それを聞いて大体の状況が分かってきた。
まずこの城だが周囲を高い山に囲まれた盆地の中の、北の辺境にあるそうだ。
ちなみにこの盆地、非常に広い面積があるためマゼルグ平原と呼ばれているという。
マゼルグ平原はヴァルキア公国という国が治めていることになっているが、君公の地位が弱く各地で貴族が勢力を伸ばして勝手に治めている状況なんだとか。日本で言えば戦国時代みたいな感じだろうか。
そんな状況だから、領主の貴族によっては配下の村にひどい重税を課すこともあるらしく、3人の故郷のコルダ村も貧しさにあえいでいるのだという。
どこも世知辛い世の中だねぇ……。
ゲームだった時はもっと国の数が少なかったと思うけど、世界が現実として動き出してから複雑な世の中になったのかもしれない。
「うむ、状況は大体わかった。では……コルダ村へ行くぞ!」
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道中は特にこれと言って変わったことはなかった。
だが、ゲームだった時よりも草や木がはるかにリアルで種類も多く、やはりここが現実なのだと再認識させられる。
何よりもにおいを感じられるのが新鮮な感覚だった。
風のにおい、少し泥臭い小川、草の茂みから漂ってくる獣の匂い。
現実世界で田舎の道を歩いていた時のことを少し思い出した。
「さ、着きました。あれがコルダ村でさぁ」
ポールの声で意識が引き戻された。
そんなことを考えている内にもう村に着いたようだ。
村には木造の家が十数軒ほど見える。小さな村だ。
「アマンダおねーちゃーん!」
こちらの一団を見て、小さな女の子が1人駆け寄ってきた。
「エイミー!」
ずっと黙っていたアマンダが明るい表情で少女を抱きかかえた。
「良い子にしてたか?」
「うん!」
エイミーは小柄でやせていて、服はおせじにも綺麗とは言えなかった。
村の様子からも分かるが、やはり暮らし向きは厳しいようだ。
アマンダとエイミーが話していると、そこら中から子供達が出て来て俺たちを囲んだ。
ポールとデイブも子供達と親しげに話したり、頭をなでたりしている。
城に忍び込んで来たからコソ泥かとも思ったけど、3人はやっぱり悪い奴らではなさそうだな。
村の大人はいないのだろうか。
奥の方も見に行こうと思って足を踏み出した時、建物の壁にをぶつけて一瞬帽子が落ちた。
「つっ!」
すぐに拾って帽子を直すが、首筋に一瞬太陽光が当たってしまった。
軽いやけどのようになってしまい、俺は手で押さえて隠す。
「おじちゃんどうしたの?」
子供の1人が、寄ってきて心配そうに見つめる。
「いや何でもないんだよ。ちょっとやけどしてしまってね」
「いたいの?」
「まあ少しね」
それを聞くとその子は、さっと近くの家の中に消えていった。
すぐにまた出て来たが、手に小さな壺を持っている。
「はいこれ! ぬって!」
「これは……?」
「そいつはニベロエ草の軟膏でさぁ。やけどやかぶれに効くんです」
いつの間にか横に来ていたポールが教えてくれた。
まあ、物は試しだ。
言われるままに、薬を首に塗ってみると
「おお……痛みがなくなった」
「よかった!」
薬を持ってきてくれた子供は自慢げに微笑んだ。
「ありがとねェ……ところで、大人は誰かいないかい? 村長は?」
ポールが子供にたずねる。
「うん、みんな小川の向こうに行ったよ。なんか、ならずものがまた来そうだからって」
「何だって?」
その時、カンカンカン!と鐘を叩くけたたましい音、怒鳴り声が村の反対側から聞こえてきた。
「奴らだー! 奴らが来たぞー!」




