04 戦闘! 3人の侵入者(女1・男2)
吸血鬼貴族の城に侵入者がやって来たようです。
廃墟のたたずまいで人をよせつけないチェイテ城だが、その2階の廊下に3つの人影があった。
3人の侵入者は、気の強そうな赤い長髪の女と、細身の老け顔の男、それに太っちょのずんぐりした男だった。
「男のくせにビビってんじゃないよ! きびきび歩きな、ポール!」
「ま、待って下さいよアマンダ様。このお城、昼間だってのに暗くて不気味で……ヒャア! 何か動いたァ~~!」
「ね、ネズミかな? ネズミうまいかな?」
「ネズミなんか食うんじゃないよデイヴ! 本当に食い意地がきたないねお前は」
「でもお腹減りましたねェ……」
ポールが細い腹をさすりながらつぶやく。
「ここの所村にも大したクエスト依頼がなかったからね。どこも不景気さ。だから……必ずこの城でお宝を見つけて帰るんだよ!」
アマンダは腰に下げた2本の剣を揺らしながら檄を飛ばした。
「しかしアマンダ様、どうしてこの城に? チェイテ城って言えば大昔に恐ろしい吸血鬼貴族がいたそうですけど、廃墟になって何百年も経ってたらお宝なんて取り尽くされて何も残ってないんじゃないですかねェ。それに不気味ですよ。吸血鬼の城なんでしょう?」
ポールが相変わらずびくびくしながら訊く。
「だからだよ。みんな怖がってこの城には近づいてないはずだ。冒険者界隈でもここを探索したって話は聞いたことがないだろう?」
「ま、まあ確かに」
「だろう! そして何百年も経ってるから、恐れられてる割には吸血鬼やモンスターは残ってないはずさ。つまり穴場ってこと」
「ほぇ~。さすがアマンダ様、知恵者だぁ」
2人の会話を横で聞いていたデイヴが大げさにうなずく。
「しかもこの城主は吸血鬼の貴族だったっていうじゃあないか。貴族なんてどいつもこいつも汚い奴ばかりだ。きっとため込んでたに違いないさ。必ず……お宝を頂いていくよ!」
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同時刻、城の最上階――。
水晶玉に映った侵入者3人の様子を、俺は眺めていた。
執事のヤミ―が城の模型と水晶玉を交互に見て位置を確認する。
「ふむ、この様子ですとそろそろ3階に行きそうですね。4階からは上に行くルートが一本道になりますので階段で待ちましょう。レオナイド様」
「分かった。では行こうか」
廊下を歩きがてら、ヤミ―から城の構造を聞いた。
3階までは館のような箱型で、その上に塔が立っているような形なのだという。
俺とヤミ―はその塔の付け根の部分、4階の階段の前で来客を待つことにした。
それほど時間をおかず、足音と話し声が聞こえてきた。
「……ったく、金目のものが全然ないね。しけてやがる」
「まあまあアマンダ様。きっと最上階まで行けばありますよ」
「ふんがー」
アマンダ、ポール、デイブが会話しながら無造作に階段を登ってきた。
「……ん? 誰かいますよォ? ヒャア! きゅ、吸血鬼だ~~!!」
ポールがこちらに気付いて、尻餅をついた。
「誰だ!」
アマンダはいつの間にか抜いていた2本の剣をこちらに向けながら訊いてくる。
俺はプレッシャーをかけるように、ゆっくりと答えた。
「勝手に人の城に入っておいて誰だ、とはずいぶんな物言いだな。私はこの城の主だ」
「や、やっぱり本物の吸血鬼だァ。オラは食べても美味しくねえだすだ。許してくだせえ~!」
デイヴは床はにうずくまって頭を抱えながらガタガタ震えている。
「2人ともビビってんじゃないよ! こいつらが本当にここの主だってんなら、なんで城がこんなにボロボロなんだい」
「俺も詳しいことは分からないんだが、さっき目覚めたばかりでな。どうやら大分長い間眠っていたらしい」
「ぬかせ! どうせならもう少しマシなウソをつきな。おおかたここを根城にしてるコソ泥だろう。ご丁寧に吸血鬼風の服まで着ちゃってさ。そうやって時々城に入ってきた冒険者を驚かして追い払ってんじゃないのかい? だいいち今は昼間だ。本物の吸血鬼なら出てこれないはずだよ」
「た、確かに! さすがアマンダ様!」
ポールはショックから立ち直ったのか、ようやく起き上がった。
「さて……大人しくしてれば殺しゃしないよ。あたしらはお宝に用があるだけだ。そこをどきな」
「断る、と言ったら?」
「……だったら痛い目を見てもらうだけさ。こっちも生活があるんでね。ポール、デイヴ! やっちまいな!」
アマンダに言われて、2人はしぶしぶ武器を構えて向かってきた。ポールは槍、デイブは先端にトゲのついた棍棒だ。
「あの2人は私が片付けましょう」
そう言うとヤミ―は前に出た。
「ちょえ~~~!」
「フンガ~~~!」
声に気合いを入れて突進してくるポールとデイブ。
だがヤミ―は、散歩に行くかのような軽やかな足取りで難なく攻撃を避けると、2人に一発ずつパンチを入れた。
「ぐあっはぁ!」
「ゲフー!」
一発であっさり潰れる2人。
「くっ……! 頼りにならないねえ」
その様子を見ていたアマンダは、腰の2本の剣を抜いた。
「さ、後はどうぞ。レオナイド様」
「え?」
「露払いは済みました。後は主の務めをお願い致します」
ヤミ―は一歩下がると、うやうやしくお辞儀をした。
手下は手下同士で戦ったから、主は主同士で戦えってことか?
あるいは俺の力を見たいのかもしれない。
どちらにしてもやるしかなさそうだな。
「分かったよ。それじゃ、やるか」
ヤミ―の前を通り過ぎて、俺はアマンダの前に立った。
「あんた武器はどうしたんだい?」
「武器? ああ、武器ならもう持ってるよ」
「……女だからってナメんじゃないよ!」
アマンダは大きく足を踏み込むと、一気に距離を詰めてきた。
早い!
ブォン、と剣が空を切る。
「うおっとと」
隙を見て指を噛んで血の剣を出そうと思っていたが、そんな隙はなさそうだ。
このアマンダという女は他の2人と違って戦いの心得があるようだ。
だが俺の体もかなり素早く動けるようだ。
ゲームでプレイしていた時よりも格段に力を感じる。肉体的にも強くなっているようだ。
「っと、あぶなっ!」
力とスピードが上がったのはいいんだけど、いきなり上がりすぎててコントロールが難しい。エンジンパワーのある車を初めて運転した時みたいというか。
「くっ! ちょこまかと!」
だがアマンダも俺の動きについてきて、切れ目無い攻撃を繰り出してくる。
右手の長い剣と、左手の短剣のトリッキーな動きを避けるので精一杯だ。
さてどうするか、と考えていたその時だった。
俺は床に転がっていた大きめの石を思い切り踏んで、バランスを大きく崩した。
「あ」
間が悪く、その時はちょうどアマンダの剣を避けた直後で、体勢を崩した俺はアマンダが持っていた剣に、自分から刺さりにいってしまった。
「え!? ちょ、ちょっと!」
俺の腹に深々と剣が突き立ち、ブシャア!と血が勢いよく吹き出した。




