11 村の守り
昼間に悪徳騎士の襲撃があったコルダ村。
その夜村人たちは、かがり火の中でせわしなく動いていた――。
夜もふけてきた頃、コルダ村では村人達がたいまつの明かりの中せわしなく作業をしていた。
丸太を運んで柵を強化したり村の周囲の土を盛ったりと、防備の強化に大忙しだ。
そんな中俺は村長とアマンダに、村を襲ってくる敵のボスの話を聞いていた。
「炎使い?」
「はい……この辺りの騎士の親玉は、炎の力を使うのです」
村長が暗い表情で言う。
「槍の形をした炎を作り出してそいつを投げてくるのさ。炎の投げ槍のジェレミーと呼ばれてるクソッたれ騎士だ」
アマンダも苦々しげな表情で付け加えた。
炎の投げ槍か。ゲームの時にもあったスキルだな。
攻撃魔法と槍を使っていると中級くらいで覚えるスキルだ。
ゲームだったら特に珍しくもないスキルだが、生身の人間から見たら恐ろしい脅威だろう。
「でもこの前攻めてきた奴らの中にはそいつはいなかったような……。どうしてそいつは出てこなかったんだ?」
「騎士や貴族は基本的にはあまり自分では戦わないのです」
「そんなに強いのにか?」
「はい。自分が危険にさらされたくないというのもあるでしょうけれど、彼らは基本的に力を使いたがりません。能力が知られると対策されてしまうからです」
村長の言葉を聞いて、俺は少しドキッとした。
なるほどな……。ならやっぱり俺が吸血鬼だというのは出来る限り秘密にしておいた方がよさそうだ。
ゲームの中には闇属性に対する特効武器やスキルもある。
表向きには別の設定を考えておこう。魔力で剣を作るスキルとかな。
「けどまあ、そのジェレミーとかいう奴は能力が分かっていて戦いやすそうだ。水で対策とかは出来ないのか?」
「あいにくだけど、井戸水くらいの量じゃ効かないね。川で戦ったり出来れば話は別だけど」
アマンダが肩をすくめる。
「なら普通に戦うしかないか……」
さてどうするか。
こういう時って村をどう守ればいいんだ?
当たり前だが、現実にいた時の俺に村を襲われた経験はないし、戦ったこともない。
まずはゲームと同じ戦略を試してみるしかないか。
この世界が現実になって勝手が変わった部分もあるだろうけど、魔法や異能のある世界での戦い方ならむしろゲームの方が有効かもしれないし。
AVOのレイドバトルの基本は、大勢で囲んで遠距離攻撃を撃ちまくること。
だがボスによってはその戦術が効かないことも多いので、特性にあわせて柔軟に戦う必要がある。
今回の相手は、強いのは敵のボス1人で手下にザコ騎士が数十人いる感じだろう。
とすると……そうだな、使い魔を出してくるタイプのボスと同じ戦略でいってみるか。
そのタイプのボスに重要なのは、とにかく本体を素早く叩くこと。
攻撃力の高い近接スキルを持ったキャラが切り込んで一気に本丸まで攻める。
そのためには他の者が周りの手下を抑えたりおびき出したりしてボスを孤立させることが重要になる。
よし。村人の犠牲は最低限にしたいし、その作戦で行こう。
「となると重要なのは、どうやってボスと手下を切り離すかだな……。アマンダ、村人だけで手下達を抑えられるか?」
「守りに徹すれば何とかね。あんたは?」
「俺は敵のボスのジェレミーの相手をする。そいつが出て来たらすぐに対応出来るように備えておく」
「分かったよ」
「ヤミーは村の中で控えて、いざという時は村人達を守ってくれ」
「かしこまりました」
「村長、後は村の柵を強化しておいてくれ。馬で突入されたら困るからな」
「は、はい。ただ木が少し足りないです。それに夜明けまでにどこまで出来るか……」
「出来る限りでいい。頼んだぞ」
そうは言ったが、村長の言う通り確かに少し心もとない。
どうしようか、と思いながら村人が丸太を差して土を盛っているのを見て、俺はある考えがひらめいた。
「そうだ。いい事を思いついたぞ」
「え?」
村長とアマンダに、俺は思いついたことを耳打ちした。
・
・
・
一夜明けて、コルダ村に朝日が差して来た。
まだ夜明け直後で薄暗いが、村人達は全員準備万端で構えている。
既に各自てきぱきと配置につき始めている。頼もしい村人達だ。
俺はポケットから小瓶を取り出すとヤミーに手渡した。
「レオナイド様、これは……?」
「これはアエロ草という草の塗り薬だ。やけどに効くそうだが、我々の日光の傷にも効く。塗っておけ」
「ほう、そんな物があるのですか。ありがたく頂戴します」
ヤミーに小瓶を渡しつつ、俺も自分の顔と手に薬を塗った。
これで俺も日光を心配せずに思う存分戦える。
「さて、とりあえず周りの様子を見ておくか」
俺は村の裏門の方の見張り台に登った。
「……おいおい、素行不良の割りには早起きじゃないか」
村の裏手の、昨日攻めて来たのと同じ場所に悪徳騎士達が陣取っていた。
昨日よりも人数が多く、心なしか重装備のように見える。
「やっぱりもう来てたかい……」
横を見ると、アマンダと村長も見張り台に登ってきていた。
「早朝から備えておいて正解だったな」
「ああ。敵さんもやる気のようだけどね」
ビュン、と風を切る音と共に1本の矢が見張り台の壁に突き刺さった。
ウォオオ、という叫び声と共に敵陣から一斉に矢が降り注いで来る。




